秋子「祐一さん、ジャムつけないんですか?」
一通りの準備を終えた秋子さんが、自分のトーストを皿に乗せてキッチンから出てくる。
祐一「俺、甘いの苦手なんですよ」
名雪「・・・・・・おいしいのに」
名雪は不満そうだったが、すぐに自分のトーストにかじりつく。
名雪「このガリッとしたジャムの食感が美味しいのに・・・」
おいっ!「ガリッ」ってなんだ!そんな食感聞いたこと無いぞ!
秋子「・・・・・・・・」
ふと見ると、秋子さんが何かを考えこむような仕草を見せていた。
秋子「・・・・甘くないのもありますよ?」
名雪「ごちそうさまでしたっ」
バタンッ、と名雪が席を立つ。
祐一「ど、どうしたんだ?まだ半分以上残ってるぞ」
名雪の皿には、イチゴジャムの塗られたトーストがまだ原型を留めていた。
名雪「・・・・わ、わたし、お腹一杯だから」
明らかに動揺している。
祐一「どうしたんだ?名雪が残すなんて・・・」
秋子「祐一さん、こんなジャムなんてどうかしら?」
台所の棚から、大きな透明の瓶を抱えて秋子さんが戻ってくる。
名雪「わたし、今日はこれでごちそうさまっ」
そのままバタバタと玄関に出て行く。
名雪「先に表で待ってるから」
祐一「・・・どうしたんだ・・・本当に?」
秋子「どうしたんですか?」
祐一「・・・さぁ」
秋子「・・・・・・・・チッ」
祐一「えっ!?」
秋子「あら、どうかしましたか、祐一さん?」
祐一「い、いえっ、なんでもないですっ」
いま、確かに秋子さんの目が邪悪に光った気がしたが・・・・?
秋子「祐一さん」
どんっ、とさっきの瓶をテーブルの上に置く。
秋子「このジャム、試していただけませんか?」
鮮やかな緑色をしたジャムだった。
瓶の中では何かが妖しく蠢いていて、みたところなんの変哲も無いジャムである。
・・・・・っておい!何冷静に状況説明してんだっ、俺は!
祐一(っていうか、ジャムか?)
緑色のジャムなんて初めて見た。
祐一(なんで動いてるんだ・・・?)
祐一「甘くないのなら、構いませんけど・・・」
って、構わないのかっ!?俺はっ!
秋子「たくさんありますから、遠慮なく全部食べてくださいね」
さすがに全部は無理、というか、食べたくない気がしたので、ひとすくいほどトーストに塗ってみる。
緑色の物体が妖しく蠢いていたが、気にせず食べてみる。
もぐもぐ・・・・・・
ボォォォォォォン!
祐一「・・・・・・・・」
口の中で、何かが爆発した。
祐一「・・・・・・・・」
秋子「どうですか?」
祐一「・・・これ、なんですか?」
秋子「ジャムですけど」
ジャムかっ!?
祐一「・・・何のジャムですか?」
っていうか、ジャムって認めてる!?
秋子「・・・・・・知りたいですか?」
秋子さんの眼が妖しく光った。
祐一「・・・・やめときます」
秋子「・・・・・・・祐一さん、命拾いしましたね・・・・」
祐一(本編の秋子さんとはベクトルが180度違うぞ・・・・。)
★ ★ ★ ★ ★
名雪「あ、祐一。早かったね」
祐一「逃げただろ・・・・」
名雪「えっと・・・・何のことかな?」
とぼけているが、どうやらあのジャムのことを知っていたようだ。
通学路にて。
祐一「あのジャム、凄く美味かったな」
名雪「えっ! うそ?」
祐一「・・・・やっぱりか」
名雪「あ・・・・・・」
名雪が、しまったという風に口元に手を当てる。
祐一「あれ、なんなんだ?」
あえて「ジャム」とは言わない。
名雪「わたしも知らないんだよ・・・・」
名雪「怖くて訊けなかった・・・・・・」
名雪も同じらしい。
名雪「でも、お母さんの一番のお気に入りらしいよ」
どうやら、秋子さんは美味しそうに食べるらしい。
祐一(どんどんベクトルが回転していくな・・・)
口がまだヒリヒリしていた。
★ ★ ★ ★ ★
名雪「祐一ーっ、祐一ーっ」
椅子にもたれて授業をひとつクリアした余韻を味わってると、名雪が慌てたように駆け寄ってくる。
祐一「どうしたんだ?」
名雪「今日、私が日直」
祐一「だから?」
名雪「手伝って、お願い」
祐一「どうして俺がお前の日直につき合わないといけないんだ」
名雪「もうひとりの日直さんがインフルエンザでお休みなんだよ」
(少し端折ります)
名雪「というわけで、はい、黒板消し」
祐一「入り口のドアにセットすればいいのか?」
名雪「うん、しっかりお願いね」
祐一「・・・・・・・・・」
名雪「次の授業の先生は注意力が散漫してるからきっと成功するよ」
祐一「・・・・・・お、おう」
違う!何かが違うぞっ!
★ ★ ★ ★ ★
あゆ「祐一君っ!」
ズドオオオオオオォォォォン!
祐一「ぐあっ!」
安心しているところを不意打ちを食らって、そのまま前に倒れこむ。
というか、あゆの強烈なタックル(背中のブーストフル回転)を食らったので骨が折れていそうだった。
あゆ「わっ!」
ずしゃっ!
祐一「・・・・・・・・・・・」
あゆ「・・・・・・・・・・・」
あゆ「・・・・・・えっと」
あゆ「・・・祐一君、生きてる?」
祐一「・・・・・・かなりヤバイ・・・」
というか、虫の息だった。
祐一「今日も埋蔵金探すのか?」
あゆ「うん。糸井重里より先に見つけるのがボクの夢だから」
なぜ糸井重里?
1月13日 完
評:みなさんが期待?していた「謎のジャム」登場です。これぐらいしか出来なかったですけど、僕としては秋子さんが十分に壊れたのでこれで良いです(爆)。あと、思いついたのですが、全部のキャラのシナリオを書く予定でいます。名雪シナリオを書いた後は栞を書きたいと思っています。