1月13日

秋子「祐一さん、ジャムつけないんですか?」

一通りの準備を終えた秋子さんが、自分のトーストを皿に乗せてキッチンから出てくる。

祐一「俺、甘いの苦手なんですよ」

名雪「・・・・・・おいしいのに」

名雪は不満そうだったが、すぐに自分のトーストにかじりつく。

名雪「このガリッとしたジャムの食感が美味しいのに・・・」

おいっ!「ガリッ」ってなんだ!そんな食感聞いたこと無いぞ!

秋子「・・・・・・・・」

ふと見ると、秋子さんが何かを考えこむような仕草を見せていた。

秋子「・・・・甘くないのもありますよ?」

名雪「ごちそうさまでしたっ」

バタンッ、と名雪が席を立つ。

祐一「ど、どうしたんだ?まだ半分以上残ってるぞ」

名雪の皿には、イチゴジャムの塗られたトーストがまだ原型を留めていた。

名雪「・・・・わ、わたし、お腹一杯だから」

明らかに動揺している。

祐一「どうしたんだ?名雪が残すなんて・・・」

秋子「祐一さん、こんなジャムなんてどうかしら?」

台所の棚から、大きな透明の瓶を抱えて秋子さんが戻ってくる。

名雪「わたし、今日はこれでごちそうさまっ」

そのままバタバタと玄関に出て行く。

名雪「先に表で待ってるから」

祐一「・・・どうしたんだ・・・本当に?」

秋子「どうしたんですか?」

祐一「・・・さぁ」

秋子「・・・・・・・・チッ

祐一「えっ!?」

秋子「あら、どうかしましたか、祐一さん?」

祐一「い、いえっ、なんでもないですっ」

いま、確かに秋子さんの目が邪悪に光った気がしたが・・・・?

秋子「祐一さん」

どんっ、とさっきの瓶をテーブルの上に置く。

秋子「このジャム、試していただけませんか?」

鮮やかな緑色をしたジャムだった。

瓶の中では何かが妖しく蠢いていて、みたところなんの変哲も無いジャムである。

・・・・・っておい!何冷静に状況説明してんだっ、俺は!

祐一(っていうか、ジャムか?)

緑色のジャムなんて初めて見た。

祐一(なんで動いてるんだ・・・?)

祐一「甘くないのなら、構いませんけど・・・」

って、構わないのかっ!?俺はっ!

秋子「たくさんありますから、遠慮なく全部食べてくださいね」

さすがに全部は無理、というか、食べたくない気がしたので、ひとすくいほどトーストに塗ってみる。

緑色の物体が妖しく蠢いていたが、気にせず食べてみる。

もぐもぐ・・・・・・

ボォォォォォォン!

祐一「・・・・・・・・」

口の中で、何かが爆発した。

祐一「・・・・・・・・」

秋子「どうですか?」

祐一「・・・これ、なんですか?」

秋子「ジャムですけど」

ジャムかっ!?

祐一「・・・何のジャムですか?」

っていうか、ジャムって認めてる!?

秋子「・・・・・・知りたいですか?」

秋子さんの眼が妖しく光った。

祐一「・・・・やめときます」

秋子「・・・・・・・祐一さん、命拾いしましたね・・・・」

祐一(本編の秋子さんとはベクトルが180度違うぞ・・・・。)

★  ★  ★  ★  ★

名雪「あ、祐一。早かったね」

祐一「逃げただろ・・・・」

名雪「えっと・・・・何のことかな?」

とぼけているが、どうやらあのジャムのことを知っていたようだ。

通学路にて。

祐一「あのジャム、凄く美味かったな」

名雪「えっ! うそ?」

祐一「・・・・やっぱりか」

名雪「あ・・・・・・」

名雪が、しまったという風に口元に手を当てる。

祐一「あれ、なんなんだ?」

あえて「ジャム」とは言わない。

名雪「わたしも知らないんだよ・・・・」

名雪「怖くて訊けなかった・・・・・・」

名雪も同じらしい。

名雪「でも、お母さんの一番のお気に入りらしいよ」

どうやら、秋子さんは美味しそうに食べるらしい。

祐一(どんどんベクトルが回転していくな・・・)

口がまだヒリヒリしていた。

★  ★  ★  ★  ★

名雪「祐一ーっ、祐一ーっ」

椅子にもたれて授業をひとつクリアした余韻を味わってると、名雪が慌てたように駆け寄ってくる。

祐一「どうしたんだ?」

名雪「今日、私が日直」

祐一「だから?」

名雪「手伝って、お願い」

祐一「どうして俺がお前の日直につき合わないといけないんだ」

名雪「もうひとりの日直さんがインフルエンザでお休みなんだよ」

(少し端折ります)

名雪「というわけで、はい、黒板消し」

祐一「入り口のドアにセットすればいいのか?」

名雪「うん、しっかりお願いね」

祐一「・・・・・・・・・」

名雪「次の授業の先生は注意力が散漫してるからきっと成功するよ」

祐一「・・・・・・お、おう」

違う!何かが違うぞっ!

★  ★  ★  ★  ★

あゆ「祐一君っ!」

ズドオオオオオオォォォォン!

祐一「ぐあっ!」

安心しているところを不意打ちを食らって、そのまま前に倒れこむ。

というか、あゆの強烈なタックル(背中のブーストフル回転)を食らったので骨が折れていそうだった。

あゆ「わっ!」

ずしゃっ!

祐一「・・・・・・・・・・・」

あゆ「・・・・・・・・・・・」

あゆ「・・・・・・えっと」

あゆ「・・・祐一君、生きてる?」

祐一「・・・・・・かなりヤバイ・・・」

というか、虫の息だった。

 

祐一「今日も埋蔵金探すのか?」

あゆ「うん。糸井重里より先に見つけるのがボクの夢だから」

なぜ糸井重里?

1月13日 完

評:みなさんが期待?していた「謎のジャム」登場です。これぐらいしか出来なかったですけど、僕としては秋子さんが十分に壊れたのでこれで良いです(爆)。あと、思いついたのですが、全部のキャラのシナリオを書く予定でいます。名雪シナリオを書いた後は栞を書きたいと思っています。