1月15日

あゆ「おはよう、祐一君」

祐一「ああ、おはよう・・・」

あゆ「秋子さん、ジャムおかわり」

秋子「はいはい」

祐一「ふぁ〜、名雪のやつはやっぱりまだ寝てるのか」

秋子「今日は部活も休みみたいだから好きなだけ寝かせてあげましょう」

祐一「そうですね」

秋子「お腹が空いたら、昼過ぎには起きてきますよ」

祐一「しかし、よくあれだけ寝ていられるな」

あゆ「秋子さん、ジャムおかわり」

秋子「はいはい」

祐一「あれ?そう言えば、真琴のやつは?」

秋子「あの子、今日は食欲が無いって言って、外に出かけていったみたいよ」

祐一「そうですか・・・・」

秋子「心配ですか?」

祐一「どうせ食欲がないのは、肉まんの食い過ぎですよ」

あゆ「秋子さん、お醤油もらっていいかな」

秋子「はいはい」

祐一「今日は面接だから、あいつの場合は少しぐらい元気のないほうが・・・」

あゆ「秋子さん、このジャムすごくおいしいよ」

祐一「・・・・・って、何やってんだあゆ!」

あゆ「おかわり」

祐一「そうじゃなくて、なんでここにいるんだ!」

あゆ「・・・・朝ご飯食べてるから」

祐一「自分の家で食えっ!」

あゆ「うぐぅ・・・」

秋子「祐一さん、それぐらいにしてあげてください」

あゆ「そうだよ」

祐一「自分で言うなぁっ!」

秋子「祐一さん、それぐらいにしてあげてください」

祐一「秋子さんも、庇わないで下さい」

秋子「でもね、わたしが誘拐したのよ」

あゆ「うん」

祐一「・・・・誘拐?」

いまいち事情が・・・・って、誘拐っ!?

祐一「秋子さん!ゆ、誘拐って・・・・」

秋子「外にゴミを出しに行ったときにね・・・」

秋子さんが、その事情をとつとつと話し始める。

っていうか、秋子さん、冷静すぎ。

秋子「そのときに、偶然あゆちゃんを見かけちゃったのよ」

あゆ「うん。通りかかったんだよ」

祐一「それで?」

秋子「一緒に誘拐でもどうですか?って」

祐一「・・・それで?」

秋子「それだけよ」

それだけで済むのだろうか。っていうか、立派に犯罪だし・・・。

祐一「秋子さん・・・・」

秋子「はい?」

祐一「・・・道端で会ったというだけで、誘拐しないでください」

っていうか、なんで俺のセリフは本編のテキスト通りなんだ!

秋子「スリリングな日常のほうが、楽しいですから」

俺は絶対普通の生活がいいと思う。

・・・・・なんというか、相変わらずの秋子さんだった。

・・・いや、相変わらずでは困るんだが。

あゆ「祐一君、秋子さんって料理なら何でも得意なんだね」

っていうか、お前誘拐されてんだぞ?

祐一「お前も、少しは遠慮しろ」

たぶん、人質なんだし。

祐一「大体、いつからこの家の朝食はジャムになったんだ・・・・」

・・・・っておい、ジャム!?朝食が、ジャム!?

あゆ「おいしいね」

っていうか、それ例の緑色ジャム!

しかも良く見るとあゆの口の中が時々膨らんでいる。

あゆ「料理上手な人って、羨ましいよね」

いや、普通に話を元に戻すな!

祐一「お前は出来るのか?料理」

あゆ「ボクも料理ぐらい余裕で出来るよ」

祐一「やけに自信たっぷりだな」

あゆ「ボクにだって特技のひとつぐらいあるもん」

祐一「食い逃げか?」

あゆ「うぐぅ、埋蔵金探しだもん!」

言うと思った・・・・・。

あゆ「今まで、二億ぐらいそれで稼いだんだよ」

祐一「何いいぃぃぃ!」

とんでもない話だ。

★  ★  ★  ★  ★

夕飯後。

部屋に戻ろうとして、廊下に出ると、玄関に人影があった。

祐一「ん?」

それは真琴だった。急いで靴を履いている。

夕食の間も俺と目を合わさず、慌しく食べ終わると、ひとり食卓を後にしていた。

今日は面接があったはずだから、その結果を聞かれるのが嫌で逃げているのだろう。

祐一「おい、真琴」

真琴「わっ」

祐一「待て、わってなんだ」

慌てて出て行こうとする真琴の首根っこを捕まえる。

真琴「あぅ、肉まんーっ」

祐一「面接はどうしたっ」

真琴「行ったよ」

祐一「行ってどうしたっ」

真琴「面接したよ」

祐一「して、どうした」

真琴「落ちたよ」

祐一「落ちたって・・・結果報告まだだろ?」

真琴「だって、もう帰っていいよ、って、面接の途中で」

祐一「なにしたんだ、おまえ」

真琴「なにもしてないよ」

祐一「うそつけ」

真琴「ただ・・・・暇だったから腕からキャノン砲を・・」

祐一「・・・・・・・・」

いや、落ちて当然だろう。

真琴「・・・撃った方が、良かった?」

祐一「良いわけあるかっ!」

★  ★  ★  ★  ★

秋子「なに見てるの?」

祐一「アルバイト情報ですよ」

秋子「誰がアルバイト始めるの?」

真琴「祐一」

祐一「おまえだろっ!」

真琴「あぅ・・・」

秋子「え?真琴がアルバイトするの?」

祐一「ええ。ただ遊んでるだけじゃ申し訳無いからって」

真琴「そんなこと一言も言ってないんだけど・・・」

秋子「じゃ、私の知り合いにでも紹介してもらいましょうか?」

祐一「そりゃ、ちょうど良かったです。どんなお仕事ですか?」

秋子「・・・・・・・・」

祐一「秋子さん?」

秋子「・・・企業秘密です」

祐一「・・・・え」

秋子「祐一さん・・・」

祐一「は、はい」

秋子「長生きしたいですよね・・・・・?」

祐一「・・・・は、はいっ」

秋子「じゃあ聞かないで下さいね」

にっこり。

祐一(真琴、俺のせいじゃないぞ・・・・俺は悪くない・・・)