あゆ「おはよう、祐一君」
祐一「ああ、おはよう・・・」
あゆ「秋子さん、ジャムおかわり」
秋子「はいはい」
祐一「ふぁ〜、名雪のやつはやっぱりまだ寝てるのか」
秋子「今日は部活も休みみたいだから好きなだけ寝かせてあげましょう」
祐一「そうですね」
秋子「お腹が空いたら、昼過ぎには起きてきますよ」
祐一「しかし、よくあれだけ寝ていられるな」
あゆ「秋子さん、ジャムおかわり」
秋子「はいはい」
祐一「あれ?そう言えば、真琴のやつは?」
秋子「あの子、今日は食欲が無いって言って、外に出かけていったみたいよ」
祐一「そうですか・・・・」
秋子「心配ですか?」
祐一「どうせ食欲がないのは、肉まんの食い過ぎですよ」
あゆ「秋子さん、お醤油もらっていいかな」
秋子「はいはい」
祐一「今日は面接だから、あいつの場合は少しぐらい元気のないほうが・・・」
あゆ「秋子さん、このジャムすごくおいしいよ」
祐一「・・・・・って、何やってんだあゆ!」
あゆ「おかわり」
祐一「そうじゃなくて、なんでここにいるんだ!」
あゆ「・・・・朝ご飯食べてるから」
祐一「自分の家で食えっ!」
あゆ「うぐぅ・・・」
秋子「祐一さん、それぐらいにしてあげてください」
あゆ「そうだよ」
祐一「自分で言うなぁっ!」
秋子「祐一さん、それぐらいにしてあげてください」
祐一「秋子さんも、庇わないで下さい」
秋子「でもね、わたしが誘拐したのよ」
あゆ「うん」
祐一「・・・・誘拐?」
いまいち事情が・・・・って、誘拐っ!?
祐一「秋子さん!ゆ、誘拐って・・・・」
秋子「外にゴミを出しに行ったときにね・・・」
秋子さんが、その事情をとつとつと話し始める。
っていうか、秋子さん、冷静すぎ。
秋子「そのときに、偶然あゆちゃんを見かけちゃったのよ」
あゆ「うん。通りかかったんだよ」
祐一「それで?」
秋子「一緒に誘拐でもどうですか?って」
祐一「・・・それで?」
秋子「それだけよ」
それだけで済むのだろうか。っていうか、立派に犯罪だし・・・。
祐一「秋子さん・・・・」
秋子「はい?」
祐一「・・・道端で会ったというだけで、誘拐しないでください」
っていうか、なんで俺のセリフは本編のテキスト通りなんだ!
秋子「スリリングな日常のほうが、楽しいですから」
俺は絶対普通の生活がいいと思う。
・・・・・なんというか、相変わらずの秋子さんだった。
・・・いや、相変わらずでは困るんだが。
あゆ「祐一君、秋子さんって料理なら何でも得意なんだね」
っていうか、お前誘拐されてんだぞ?
祐一「お前も、少しは遠慮しろ」
たぶん、人質なんだし。
祐一「大体、いつからこの家の朝食はジャムになったんだ・・・・」
・・・・っておい、ジャム!?朝食が、ジャム!?
あゆ「おいしいね」
っていうか、それ例の緑色ジャム!
しかも良く見るとあゆの口の中が時々膨らんでいる。
あゆ「料理上手な人って、羨ましいよね」
いや、普通に話を元に戻すな!
祐一「お前は出来るのか?料理」
あゆ「ボクも料理ぐらい余裕で出来るよ」
祐一「やけに自信たっぷりだな」
あゆ「ボクにだって特技のひとつぐらいあるもん」
祐一「食い逃げか?」
あゆ「うぐぅ、埋蔵金探しだもん!」
言うと思った・・・・・。
あゆ「今まで、二億ぐらいそれで稼いだんだよ」
祐一「何いいぃぃぃ!」
とんでもない話だ。
★ ★ ★ ★ ★
夕飯後。
部屋に戻ろうとして、廊下に出ると、玄関に人影があった。
祐一「ん?」
それは真琴だった。急いで靴を履いている。
夕食の間も俺と目を合わさず、慌しく食べ終わると、ひとり食卓を後にしていた。
今日は面接があったはずだから、その結果を聞かれるのが嫌で逃げているのだろう。
祐一「おい、真琴」
真琴「わっ」
祐一「待て、わってなんだ」
慌てて出て行こうとする真琴の首根っこを捕まえる。
真琴「あぅ、肉まんーっ」
祐一「面接はどうしたっ」
真琴「行ったよ」
祐一「行ってどうしたっ」
真琴「面接したよ」
祐一「して、どうした」
真琴「落ちたよ」
祐一「落ちたって・・・結果報告まだだろ?」
真琴「だって、もう帰っていいよ、って、面接の途中で」
祐一「なにしたんだ、おまえ」
真琴「なにもしてないよ」
祐一「うそつけ」
真琴「ただ・・・・暇だったから腕からキャノン砲を・・」
祐一「・・・・・・・・」
いや、落ちて当然だろう。
真琴「・・・撃った方が、良かった?」
祐一「良いわけあるかっ!」
★ ★ ★ ★ ★
秋子「なに見てるの?」
祐一「アルバイト情報ですよ」
秋子「誰がアルバイト始めるの?」
真琴「祐一」
祐一「おまえだろっ!」
真琴「あぅ・・・」
秋子「え?真琴がアルバイトするの?」
祐一「ええ。ただ遊んでるだけじゃ申し訳無いからって」
真琴「そんなこと一言も言ってないんだけど・・・」
秋子「じゃ、私の知り合いにでも紹介してもらいましょうか?」
祐一「そりゃ、ちょうど良かったです。どんなお仕事ですか?」
秋子「・・・・・・・・」
祐一「秋子さん?」
秋子「・・・企業秘密です」
祐一「・・・・え」
秋子「祐一さん・・・」
祐一「は、はい」
秋子「長生きしたいですよね・・・・・?」
祐一「・・・・は、はいっ」
秋子「じゃあ聞かないで下さいね」
にっこり。
祐一(真琴、俺のせいじゃないぞ・・・・俺は悪くない・・・)