1月17日

秋子「おはようございます、祐一さん」

秋子さんが、まるで俺が時間に起きてくるのを知っていたかのように微笑む。

祐一「おはようございます。いつも早いですね」

秋子「祐一さんも早いですよ」

自分の椅子に座る俺の目の前で、秋子さんが温かそうなジャムをきゅうすで注ぐ。

・・・・・って、ジャム!?しかもきゅうすに!?

あゆ「秋子さん、ボクにもっ」

秋子「はいはい」

祐一「名雪、起こさなくても良いですよね」

秋子「起こしても、きっと起きないと思いますよ」

あゆ「うぐぅ、このジャム熱い・・・」

熱いジャムってどんなジャムだ・・・・・。

秋子「そういえば、猫舌だったわね。ちょっと待ってね、今お水入れるから」

祐一「真琴のやつは?」

秋子「・・・・・企業秘密です」

祐一「は?」

秋子「祐一さん、真琴の後を追いたいですか?」

にっこり。

祐一「・・・・・うぐぅ、遠慮します」

あゆ「うぐぅ、真似しないで・・・・」

そして、黙々と食事が進む。

祐一「ごちそうさま」

あゆ「ボクもごちそうさまでした」

祐一「それじゃあ、俺は部屋に戻ってますから」

がたんっ、と席を立つ。

そして、そのまま食卓を出・・・・・・

しゃきんっ!

あゆ「うぐぅ、祐一君・・・・いぢわる」

しかし、俺の首にはナイフがあてがわれていた。

あゆ「無視しないでよ、祐一君〜」

祐一「わ、悪かった。無視したのは謝るからそのナイフをどけろっ!」

あゆ「うぐぅ、心がこもってないよぅ〜」

祐一「・・・・・すいませんでした」

あゆ「あと3回」

埋蔵金探してたほうがまだ可愛かった・・・・・・・・。

★  ★  ★  ★  ★

あゆ「だったら、映画を見ようよ」

祐一「ビデオでも借りてくるのか?」

あゆ「違うよ、盗んで来るんだよ」

祐一「借りて来いっ!」

★  ★  ★  ★  ★

名雪「祐一、お昼だよー」

1階から、名雪の声が聞こえる。

 

祐一「・・・・・・あれ?」

目の前にはラーメンでは無く、巨大な魚だかなんだか分からない生き物が。

名雪「どうしたの、祐一?サンショウウオ嫌い?」

何でサンショウウオが出てんだっ!

祐一「しかもよく見るとオオサンショウウオじゃないかっ!」

たしか特別天然記念物に指定されてなかったかっ?

っていうか、食えるのかっ!

名雪「しっぽ、しっぽ」

名雪は、珍しそうにオオサンショウウオの尻尾と戯れている。

祐一「っていうか、戯れるなっ!」

★  ★  ★  ★  ★

あゆ「・・・・・あ、祐一君っ!」

ベンチに座っていたあゆが、俺の姿を見つけて立ちあがる。

人目を気にした様子も無く、体を大きく伸ばして手を振っている。

祐一「もう少ししおらしく待てないか?」

あゆ「だって嬉しいもん」

祐一「そんなに映画が嬉しいか?」

あゆ「映画も嬉しいけど、やっぱり待ってた人が来てくれることが一番嬉しいよ」

あゆ「それだけで、今まで待ってて本当に良かったって思えるもん」

祐一「なんかおおげさだな」

あゆ「ううん、そんなことないよっ」

あゆ「だって、獲物が来てくれたんだもんっ」

祐一「・・・・・獲物ってなんだ?」

あゆ「秘密だよっ」

祐一「・・・・・・・・」

ぴょこっとベンチから立ちあがって俺の手を引っ張る。

あゆ「行こ、祐一君。日が暮れる前にね」

祐一「・・・そうだな」

祐一「・・・・そういや、今やってる映画ってなんだか知ってるか?」

あゆ「ううん。全然」

祐一「なんの映画かも知らないのに誘ったのか?」

あゆ「うん」

祐一「・・・まぁいいけど」

あゆ「ボク、あんまり映画見ないから」

祐一「俺だってほとんど見ないな」

あゆ「昔は、良く両親に連れられて見たんだけど・・・・」

祐一「昔って、どれぐらい前だ?」

あゆ「小学生ぐらいの時、かな」

俺と会っていた頃だな。

祐一「よし、そろそろ入るか」

あゆ「うん」

と、元気良く歩き始めた俺が、突然凍りついたように足を止める。

・・・・・まあ、本当はあゆが足を止めるのだが。

あゆ「うぐぅ、祐一君、銅像ごっこ・・・・・?」

いや、それ俺のセリフ・・・・。

俺の視線の先には、映画の告知用の看板が掲げられていた。

あゆ「あ、これだね。今日上映の映画って」

その看板には、「秋子さんのみちのくジャムの秘宝の旅」と描かれている。

祐一「なんで秋子さんが・・・・・・・?」

あゆ「すごいねっ。秋子さんてなんでも出来るんだねっ」

程度の問題だと思う・・

1月17日 完

評:真琴が消えちゃいました。・・・・うぐぅ。