祐一「名雪ーーっ、起きろーっ」
ドアを叩きながら、名雪の名前を連呼する。
少し間を置いてみるが、返事は無い。
祐一「名雪ーっ!今日から学校だぞーっ!」
さっきよりも激しくドアを叩く。
名雪「にゅ・・・・」
今度は、中から微かに反応があった。
祐一「名雪、起きたのか?」
名雪「起きたよう・・」
中から確かに返事があった。
しかし、名雪の場合はこれで安心できない。
名雪にとっては、寝ながら返事なんて朝飯前だ。
祐一「本当に起きているんだったら、今から言う質問に答えろ」
名雪「・・・うにゅ」
祐一「25+7は?」
名雪「・・・さんじゅう・・・・に・・」
祐一「今日は何月何日だ?」
名雪「1がつ・・・18にち・・・」
祐一「スリーサイズは?」
名雪「変幻自在・・・・」
何いぃっ!
名雪「・・・・って、わっ!」
ばたんっ、と何かが落ちるような音がする。
名雪「祐一、なんてこと訊くんだよっ」
祐一「その前に、変幻自在ってなんだ・・・?」
★ ★ ★ ★ ★
秋子「おはようございます、祐一さん」
と、いつものように秋子さんが朝食の準備をしながら微笑んでいた。
すでにテーブルの上には、サラダやジャムの瓶(緑色)、そして殻を剥いたゆで卵などが、綺麗に並べられている。
名雪の話では、掃除や洗濯もほとんど秋子さんが朝のうちに片付けてしまっているらしい。
秋子「今日もいいお天気ですよ」
こんがりと焼けたトーストを、俺の前に置く。
しかし、秋子さんは一体何時に起きてくるんだろうか・・・。
名雪と違って、秋子さんが眠たそうにしているところなんて、俺は一度も見たこと無い。
それは、真夜中に起きてきたときも一緒だった。
名雪「おはようございます・・・・」
頭を押さえながら、名雪が食卓に顔を出す。
秋子「どうしたの?額が赤くなってるわよ?」
名雪「ベッドから落ちた・・・」
祐一「まったく、ドジだな」
何食わぬ顔で、トーストをかじる。
名雪「祐一のせいだよ・・・・」
名雪「いきなり変なこと聞くから・・・」
秋子「変なこと?」
名雪「ううん、なんでもない」
秋子「そう」
にこっと笑って、キッチンの奥に消える。
祐一「変幻自在ってなんだ・・・」
名雪「もう少しで言いかけたよ・・・・」
いや、何をだ。
祐一「明日から、起こすときはこの手でいくか」
名雪「やだよ」
名雪「明日から、けろぴーをドアの前に立てておくから」
祐一「は?」
名雪「祐一は、けろぴーに食べられちゃうんだよ」
祐一「待てっ!食べられるって何だっ!」
名雪「けろぴーは、好き嫌いがないから」
祐一「そう言う問題じゃないだろっ!」
★ ★ ★ ★ ★
祐一「そう言えば、秋子さんってずっと家にいるのか?」
ふと気になっていた疑問を、隣でとことこと歩いている名雪に訪ねてみる。
名雪「そんなことないよ。ちゃんと仕事に行ってるよ」
祐一「いつ?」
名雪「私たちが学校に行っている間だと思うよ」
祐一「そうだよなぁ・・・・・・・」
さすがに、専業主婦ということは無いだろう。
祐一「それで、秋子さんってどんな仕事してるんだ?」
名雪「どんな仕事してるんだろうね」
俺の問いに、名雪が首を傾げる。
祐一「・・・・もしかして、知らないのか?」
名雪「うん。わたしは知らないよ」
祐一「マジか・・・・?」
名雪「うん」
名雪「でも、時々おかあさんの部屋から「最高ですかーっ?」っていう声が聞こえたよ」
祐一「・・・・・・・」
っていうか、電波系?
★ ★ ★ ★ ★
名雪「あ」
昇降口の前で、名雪が足を止める。
名雪「今年もやっぱりあるんだ」
名雪は、廊下の壁に貼られているポスターを見ていた。
祐一「なんのポスターだ?」
荒れ果てた荒原。
大地に転がっているロボットの手足、そしてキャノン砲を装備したMSが闊歩しているというかなり現実離れしたポスターだった。
・・・・っていうか、現実にあったらかなり嫌だ。
名雪「あさっての、学校行事の告知だよ」
祐一「なんの行事なんだ?」
名雪「校内部活動別モビルスーツサバイバルバトルだよ」
祐一「・・・・名雪が天然じゃないボケを」
名雪「ボケてないよ」
ポスターを指差す。
名雪「ほら、書いてあるよ」
「平成11年度部活動対抗MSサバイバルバトル」
祐一「こんなのが学校行事だったのか・・・・」
名雪「毎年恒例らしいよ。私は参加しなかったけど」
祐一「どうしてだ?」
名雪「だって、どう考えても場違いだもん」
・・・・・いや、1月7日のテキストを見る限りではそんなことは無い。
祐一「参加しなくても良いのか?」
名雪「自由参加だよ」
祐一「それを聞いて安心した」
本当に殺し合いに参加させられたらどうしようかと思った。
名雪「でも、不思議と死傷者が今まで一人も出てないんだよね・・・・・」
何故!?
1月18日 完
評:寝不足でへべれけ〜な炭物です。名雪メインシナリオで動いてきましたがもうすぐ佳境ですな。本編ではあれだけ感動したシーンになっていくのですが、裏カノンではどれだけ壊そうかと今悩んでいる最中でございます。