「朝〜、朝だよ〜」
・・・・・。
「朝ご飯食べて学校行くよ〜」
祐一「・・・眠い」
名雪に借りた目覚し時計で時間を確認する。
俺は、毎朝そうしているように、カーテンを左右に開け放った。
眩しい光。
白い景色。
あゆ。
祐一「・・・・・・・・」
祐一「って、何であゆがここにいるんだっ!」
あゆ「うぐぅ、強盗だよ〜」
祐一「強盗だったら、真夜中に来いっ!」
★ ★ ★ ★ ★
どん、どん・・・・
何度も名雪の部屋をノックする。
多少うるさいぐらいでは、名雪は起きない。
それは、この数週間で身に付いた知識だった。
しばらくドアを叩きつづけていると、やがて中から眠そうな声が聞こえる。
そして、カチャッ・・・とドアが開いて、中から寝ぼけ眼の名雪が顔を出した。
名雪「・・・うにゅ」
祐一「朝の挨拶は、うにゅじゃないだろ」
名雪「・・・おはよ・・・祐一・・」
祐一「ほら、起きたんだったら、とっとと着替えろ」
名雪「・・・・くー」
ぼかっ。
名雪「・・・痛い」
祐一「いいから、着替えて来い」
名雪「まだ、このままでいいよ・・」
祐一「全然良くないだろ」
名雪「わたし、このゴールドクロスお気に入りだから・・・」
祐一「全然関係無いと・・・・って、ゴールドクロス!?」
もしや某聖○士星矢のクロスか・・・・?
名雪「猫さんのクロス」
祐一「完璧バッタもんだろっ!」
そんなクロス見たことも無い。
★ ★ ★ ★ ★
ご飯を食べて、いつもの通学路を名雪と二人で歩く。
穏やかで、日差しが眩しくて・・・そして、寒い朝だった。
名雪「・・・・・・あ」
名雪が小さく声を上げる。
祐一「・・・まさか、また猫か?」
また俺は猫の命を死守しなければならないのだろうか。
名雪「不発弾」
祐一「・・・ふはつだん?」
名雪「うん。不発弾」
名雪の視線の先・・・・・・。
人影に混じって、旧日本軍の不発弾が見えた。
どこかで見たことのある不発弾だった。
というか、不発弾なんてそうそう見るものでもない。
っていうか、ヤバイだろっ!
祐一「おーいっ、あゆ」
俺の声が届いたのか、不発弾を抱えた少女が、こっちに振り向く。
あゆ「・・・・あっ」
表情を綻ばせて、ぱたぱたと駆け寄ってくる。
あゆ「あっ・・・・」
こけっ!
バタンッ!
チュドオオオオオオオオオオオオオオンッ!
あゆ「おはよっ。祐一君、名雪さん」
祐一「テキスト通りに話すなっ!」
★ ★ ★ ★ ★
祐一「名雪、って良い名前だよな」
あゆ「あ、ボクもそう思うよ」
名雪「・・・そうかな?」
意外、という感じで顔を上げる。
祐一「なんというか、イメージ通りの名前だ」
名雪「わたしが?」
祐一「いかにも、「名雪」って感じだからな、お前は」
名雪「・・・・・実は、偽名なんだよ」
祐一「・・・・・・は?」
名雪「偽名」
祐一「・・・・・・・・・・」
あゆ「実は、ボクも・・・・・・・」
祐一「何ぃっ!!??」
意外な事実だった。っていうか、壊しすぎ。
★ ★ ★ ★ ★
朝のHRは、いつものように滞り無く・・・・・は終わらなかった。
担任「出題範囲は今配ったとおりなので、各自勉強しておくように」
手元にある藁半紙には5科目分の出題範囲がびっしりと書かれていた。
突然の試験通達だった。
対象は全校生徒。実施日は1月25日。
来週の月曜日だ。
しかも、どうやら1日で5科目全て実施するらしい。
5科目とはもちろん、うぐぅ語、たい焼き早食い、イチゴサンデー早食い、アイスクリーム早食い、牛丼早食いのことだ。
・・・・って、なんだこれはっ!英語とかじゃないのかっ!?
しかもこれって、Kanonのヒロイン関係の食い物じゃないか・・・・。
そして、うぐぅ語・・・・・。
祐一「・・・・・・・・」
やっぱ、国へ帰る。
★ ★ ★ ★ ★
名雪「テスト、嫌だね・・・・」
確かに嫌だが、別の意味で嫌だ。
名雪「定期テストじゃないから、少しは気分が楽だけど・・・・」
祐一「でも、試験には変わり無いからな・・・・」
っていうか、あれを試験と呼べるのだろうか?
名雪「・・・そうだ、香里、勉強教えて」
名雪が、拝むように手を合わせる。
香里「人に教わるよりは、自分で勉強したほうが、絶対に効率が良いわよ」
名雪「分からないとこだけだから」
香里「そうね・・・・あたしで良ければ、力になるけど」
名雪「恩に着るよ、香里」
香里「それは、おおげさだって」
表情を綻ばせながら、香里が教室を出て行く。
祐一「なぁ、名雪・・」
祐一「香里って、もしかして勉強できるのか?」
名雪「ずっと、学年で1番だよ」
祐一「・・・・は?」
名雪「1年のときから、ずっと1番」
祐一「・・・・・」
名雪「うぐぅ語も完璧に話せるんだよ」
名雪「将来うぐぅ語の通訳になれるね」
祐一「・・・・・・・」
香里の意外過ぎる一面を知ってしまった・・。
★ ★ ★ ★ ★
試験勉強のことで悩んでいると、微かにドアをノックする音が聞こえたような気がした。
こん、こん・・・・
今度は間違い無い。
名雪「・・・祐一、起きてる?」
遠慮がちに、名雪の声がドアごしに聞こえる。
祐一「起きてるぞ」
名雪「・・・開けるよ?」
祐一「ああ」
ドガァッ!
祐一「うおっ!?」
見ると、ドアが粉々に粉砕され、名雪が立っていた。
名雪「こんばんは」
祐一「どうしたんだ、こんな時間に・・・・って、何ドアをこわしてるんだっ!」
名雪「うぐぅ」
祐一「あゆの真似してもダメだ」
名雪「・・・祐一は細かい」
祐一「舞の真似もダメだ」
名雪「あははーっ」
祐一「佐祐理さんもダメ」
名雪「そういう事言う人、嫌いです」
祐一「それもダメ」
名雪「・・・・テスト勉強、はかどってる?」
祐一「話を急に元に戻すなっ!」
祐一「・・・・自慢じゃないが、さっぱりだ」
名雪「わたしも、さっぱり・・・・・」
はぁ・・・・、と二人揃ってため息を吐く。
名雪「・・・・祐一」
祐一「ん?」
名雪「ひとりよりふたりだと思うんだよ」
祐一「何が?」
名雪「・・・二人三脚、だよ」
祐一「当たり前だっ!」
★ ★ ★ ★ ★
名雪「・・・・わたし、眠い」
祐一「まだ、勉強をはじめてもいないぞ」
名雪「・・・うん」
名雪「・・・でも、眠い」目を擦りながら、机を挟んで俺の向かい側に座る。
名雪「もし、途中で寝ちゃったら、起こしてね」
祐一「そのときは、顔に落書きしてやる」
名雪「わ。寝てる間に地雷とか仕掛けちゃ嫌だよ・・・・」
祐一「誰がそんなことするかっ!」
1月21日 完
評:この日はテストがるのでその辺で引っ張ってみました。ところでうぐぅ語って分かりますかね(爆)