秋子「祐一さん」
自分の部屋へ戻ろうと階段を登りかけたとき、台所から秋子さんに呼び止められた。
秋子「名雪、知りませんか?」
祐一「名雪なら、部屋で寝ていると思いますよ」
秋子「そう・・・困ったわね・・」
頬に手を当てたポーズが、秋子さんらしかった。
ちなみに、ぜんぜん困ったようには見えない。
祐一「どうしたんですか?」
秋子「ちょっと、用事を頼みたかったんだけど・・・」
祐一「それなら、代わりに俺が頼まれますよ」
俺としては、客として気を使われるよりも、気軽に用事を任せてもらえるほうが家族として認められているようで嬉しかった。
秋子「それなら、祐一さんにお願いしようかしら」
その辺りの事は、秋子さんも分かっているようだった。
秋子「今から晩ご飯の買い物に行こうと思うのだけど、祐一さんも一緒に来てもらえる?」
祐一「それは構わないですけど。別に秋子さんまで来なくても、俺一人で行ってきますよ」
秋子「ひとりは大変だと思いますよ」
祐一「そうですか?」
秋子「ちょっと生温いですよ?」
祐一「・・・・何を買うんですか?」
生温いって何だ!?
秋子「けろぴーよ」
確かに、それは重いかも・・・ってちょっと待てっ!
祐一「あ、秋子さん、けろぴーって何ですかっ!?」
秋子「晩ご飯よ」
祐一「えええええっ!?」
秋子「まだ残っていると思ったんだけど、今見たら全部無くなっていたから」
秋子「ついでですから、まとめて買っておこうと思って」
祐一「・・・分かりました、手伝います・・・・・」
断る術は、全く無かった。
★ ★ ★ ★ ★
結局、3羽のけろぴーを買って、2羽を俺が両手に持つことになった。
かなり嫌な状況である。
秋子「本当に、祐一さんがいて助かるわ」
商店街の雑踏の中を、けろぴーをぶら下げながら歩いていると・・・・・。
雑踏のその向こう側に、見知った顔が合った。
正確に言うと、見知った不発弾を背負った女の子がいた。
あゆ「あ、祐一君っ!」
パタパタと羽を揺らしながら、腐れ縁の食い逃げ少女が走ってくる。
あゆ「やっぱり会えたねっ」
無邪気に笑顔を覗かせながら・・・・
ベチッ!
思いっきり、顔面から突っ込む。
チュドオオオオオオオオオンッ!
あたり一面、焼け野原だった。
ちなみに、両手に持っているけろぴーは、こんがり焼きあがっていた。
・・・・・・けろぴーの丸焼き。
・・・はっ!何を言っているんだ俺はっ!
あゆ「うぐぅ・・・また爆発したぁ・・・」
祐一「転べば間違いなく爆発するだろっ!」
あゆ「うぐぅ・・・」
っていうか、その前に不発弾を持ってくるのをなんとかしろっ!
秋子「祐一さんのお友達ですか?」
祐一「ぜんぜん知らない女の子・・・」言いかけて、ふと気づいた。
あゆが吹き矢(毒針入り)で俺の首筋を狙っていることを。
祐一「7年前に木から落ちて今現在は植物状態になっていて精神だけがここにいる女の子です」
あゆ「そこまで言えとは言ってないよっ」
ふっ!
ぐさっ!
祐一「ぐわぁっ!」
★ ★ ★ ★ ★
秋子「月宮あゆちゃん・・・?」
なおもあゆの顔を見ていた秋子さんが、真剣な表情で名前を呼ぶ。
あゆ「・・・はい?」
秋子「ごめんなさい、やっぱり私の気のせいですね」
あゆ「・・・?」
あゆがもう一度首を傾げる。
俺も同じ心境だった。
秋子「そんなはずないですものね・・・・」
秋子さんはひとりで納得したようだった。
祐一「どうかしたんですか、秋子さん?」
秋子「いえ、今日の朝刊に、銀行強盗の記事が載っていて、目撃証言による犯人像があまりにもこの子に似ていたものだから・・・」
祐一「・・・・・」
祐一「・・・・あゆ」
ふっ!ぐさっ!
祐一「ぐわっ!」
あゆ「何も言わないほうが身のためだよっ♪」
祐一「ぐお・・・・」
ちなみに、毒は麻痺毒だった。
あゆ編 1月10日 完
評:いきなり飛びましたがどうでしょうか。最近やる気無いからまたKanon熱を再燃焼させなければ!