あゆ編 1月11日

放課後の商店街を一人で歩きながらどこにあるかも分からないCD屋を探す。

歩道には、寄せ集められた雪の山が赤く色づいていた。

祐一「しまったな・・・店の名前ぐらい聞いておけばよかったな・・・」

何の手がかりも無いまま、時間だけが過ぎていく。

ちなみに、俺が場所を覚えている店は喫茶店と米屋ぐらいだ。

祐一(昔は、もっと色々な店を知っていたんだろうな・・・)

もしかすると、CD屋にも行った事があったのかも知れない。

祐一(思い出せない・・・)

今ほど、子供の頃の記憶が戻って欲しいと願ったことは無かった。

声「祐一君っ!」

祐一「ぐあっ!」

突然、背中に何か重いものがおぶさってくる。」

あゆ「やっぱり祐一君だぁっ!」

首だけ振り返ると、あゆが遠くから走ってくるのが見えた。

・・・・・えっ?・・・・・・じゃあ、俺の上に乗っかってるのは・・・・?

あゆ「重さ100Kgのたい焼きだよっ」

祐一「早くどけろっ!」

っていうか、なぜあゆがそんなもの投げられるんだっ!

★  ★  ★  ★  ★

祐一「・・・・・だけど、俺たち良く会うな」

あゆ「うん、祐一君を24時間尾行してるからねっ」

祐一「すぐやめろっ!」

それじゃストーカーだっ!

祐一「で、一体何を落としたんだ」

あゆ「うん。ボクが落としたのは・・・・・」

あゆ「・・・・・・あれ?」

あゆが困ったように首を傾げる。

あゆ「・・・思い出せない・・」

あゆ「どうしたんだろ・・・何を落としたのか思い出せないよ・・・」

戸惑ったような表情で、不安げに羽がぱたぱたと揺れていた。

あゆ「大切な物なのに・・・・大切な物だったはずなのに・・・」

あゆ「早く見つけないとダメなのに・・・」

あゆ「思い出せないよ・・・」

泣き笑いの表情で、自分自身に戸惑っているようだった。

あゆ「どうして・・・」

祐一「ただのど忘れじゃないか?」

あゆ「ボク・・・探してみる」

祐一「探すったって、何を探すのかも分からないんだろ?」

あゆ「でも、見たら思い出すもん!」

祐一「確かに、その可能性はあるだろうな」

あゆ「だから、ボク、探してみるよ」

祐一「分かった、俺も探すの手伝ってやる」

あゆ「え?本当にいいの?」

祐一「どうせ俺もCD屋を探してうろつくつもりだから、そのついでだ」

あゆ「うんっ、ありがとう祐一君」

祐一「それで問題はどうやって探すかだが・・・」

あゆ「じんかいせんじゅつ、なんてどうかな?」

祐一「それは、人が大勢いるときに使う戦法だ」

あゆ「じゃあ、人がいればいいんだねっ」

祐一「ああ、そうだけど・・・」

そう言った途端、あゆは近くの電話機に走っていった。

あゆ「もしもし自衛隊?」

祐一「やめろーーーーっ!」

っていうか、なんで自衛隊の電話番号知ってんだっ!

あゆ編 1月11日  完

評:旅行疲れがまだ取れない炭物です。というわけでこんなシロモノになってしまいました。