・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
女の子「・・・・・・・・・・・」
女の子が座っていた。
女の子「・・・・・・・・・・・」
人の行き交う場所で、一人ぼっちで座っていた。
女の子「・・・・・・・・・・・」
寂しそうに瞳を伏せて、誰かを待ちつづけていた。
祐一「よぉ、あゆあゆ」
女の子「・・・・・・あ」
少女がゆっくりと顔を上げる。
祐一「悪い。待ったか?」
あゆ「・・・あゆあゆじゃないもん」
木のベンチにちょこんと腰掛けたあゆが、非難の視線を向ける。
祐一「だって、まだちゃんと名前聞いてなかったからな」
あゆ「・・・・あゆ」
祐一「名字は?」
あゆ「・・・・新城」
祐一「いや、違うだろ。」
あゆ「・・・・柏木」
祐一「いや、だからそれ違うゲーム」
あゆ「・・・・七瀬」
祐一「それ、微妙に違うゲーム」
スタッフが一緒・・・・・・
あゆ「・・・・剛田、骨川、源、野比・・・・・・」
祐一「待てっ!それ以上行くと某有名漫画の版権に関わるっ!」
あゆ「・・・・月宮」
祐一「月宮あゆか・・・・なんだ普通の名前だな」
あゆ「・・・・・・」
祐一「俺は相沢祐一だ。よろしくな」
あゆ「・・・うん」
祐一「じゃあ、早速行くか」
あゆ「・・・・・・」
祐一「どうした、あゆあゆ?」
あゆ「・・・もきゅ〜」
祐一「変な返事だな?まぁいいけど・・・・って、良いわけあるかっ!それは違うネタだっ!」
★ ★ ★ ★ ★
祐一「座ってたらいつまでたっても商店街に行けないぞ」
あゆ「・・・・・・」
あゆは、何か言いたそうに俺の顔を覗き込んでいる。
あゆ「・・・・・・」
祐一「もしかして、いきなり告白か?」
あゆ「・・・そんなこと、しないもん」
祐一「まあ、冗談だけど」
あゆ「・・・あのね」
あゆ「・・・お前を、殺す」
祐一「・・・・・・待てっ!だからそれは違うアニメだろっ!某ガンダムWだろぅっ!」
ちびあゆってこんな性格だったか?
あゆ「・・・・・・」
無言で、たい焼きを頬張る。
祐一「どうだ?」
あゆ「・・・・・・今日のほうがおいしい」
祐一「当たり前だ」
あゆ「やっぱり昨日のは毒が入ってたからかな」
祐一「何いいいぃぃぃっ!?」
あゆ「しかもテトロドトキシン」
祐一「のおおおおっ!」
★ ★ ★ ★ ★
たい焼きを食べ終わって、俺とあゆはオレンジの街並みを歩いていた。
あゆ「・・・祐一君」
ぽつり、と俺の名前を呼ぶ。
それこそ、街の喧騒にかき消されそうな声だった。
あゆ「・・・ひとつだけ・・・訊いていい?」
祐一「ひとつと言わず、いくらでも構わないぞ」
あゆ「・・・うん。でも、今日はひとつだけ・・・・・・」
息を整えるように、少し間が開く。
あゆ「・・・祐一君、お母さんのこと、好き?」
祐一「好きだよ」
あゆ「ボクも、好きだよ・・・・・」
祐一「・・・それが、どうしたんだ?」
あゆ「・・・それだけ・・・」
祐一「・・・そっか」
また、しばらく無言で歩く。
あゆ「あのね・・・」
あゆ「・・・お母さんが、いなくなっちゃったんだ」
祐一「・・・・・・」
まるで世間話でもするように、歩きながらぽつり、と呟く。
あゆ「・・・ボク一人置いて、いなくなっちゃったんだ」
祐一「・・・・・」
あゆ「・・・それだけ・・・」
と、突然、あゆが大声で、
「もーいーかーいっ!?」
「まーだだよーっ!」
どこからともなく女の人の声が聞こえた。しかも大声で。
祐一「・・・・・・」
あゆ「お母さんが、いなくなっちゃったんだ・・・・・・」
祐一「探して来いっ!」
っていうか、範囲広すぎっ!
★ ★ ★ ★ ★
祐一「・・・じゃあ、ここでお別れだな」
商店街の入り口で、後ろを歩いていたあゆの方に振り返る。
あゆ「・・・・・・」
祐一「あゆ・・・・・」
あゆ「・・・・・」
祐一「明日も、一緒に遊ぼうな」
あゆ「ほんと・・・?」
祐一「あゆさえ良ければ、な」
あゆ「・・・ボク・・・・」
あゆ「祐一君といると・・・楽しいから・・・」
あゆ「楽しかったときのこと・・・思い出せるから・・・」
祐一「だったら、指切りだ」
あゆ「うん」
赤く染まる小さな指を絡める。
そして、離れる・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・。
気がつくと、指から大量の血が出ていた。
っておいっ!「赤く染まる」って、ほんとに赤くてどうするんだっ!
あゆ編 1月12日(前編)完
評:いまテストおわって仮死状態です。普通に死ねます。でも根性です。ど根性です。たとえ平均睡眠時間が名雪の1/4でも頑張ります。