あゆと一緒に途中までの道を行く。
祐一「いつも思うんだけど、そのリュックの中って何が入ってるんだ?」
あゆ「普通だよ」
祐一「普通じゃわかんないって」
あゆ「不発弾とか不発弾とか不発弾とか・・・・」
祐一「どこが普通やねんっ!」
祐一「でも、一度あゆの行っている学校見てみたいな」
あゆ「・・・ボクの学校?」
祐一「あゆがそれこそ大好きだっていう学校、一度で良いから見てみたい」
あゆ「それなら、ボク案内するよ」
祐一「お。いいのか?」
あゆ「うん。じゃあ、今日の夕方に」
ぽっかりと開いた場所だった。
大きな切り株を中心に、その周りだけ地面が顔を覗かせていた。
さながら、好奇心旺盛な子供達の遊び場になりそうな、そんな空間だった。
あゆ「・・・・・」
あゆは、その場所・・・特に、大きな切り株だけをただじっと見つめていた・・・
大人が3人手をつないでも、1週出来ないような、そんな切り株だった。
そして、そんな風景が真っ赤に染まっている。
祐一「・・・・・・・」
赤い風景・・・
何かが、記憶の片隅で動いた・・・・
思い出の奥底・・・
忘れていた風景・・・・
あゆ「・・・嘘・・・だよ・・・」
あゆが、震えるような声で、呟く。
あゆ「・・・どうして・・・」
あゆ「・・ボク・・・どうして・・・」
あゆは、明らかに何かに怯えていた。
あゆ「・・・ここ・・・知ってる」
嗚咽にも似た、あゆの声・・・
あゆ「・・・ボク・・・ここで・・・」
あゆ「・・・学校・・・」
あゆ「・・・嘘・・・だよ・・・」
あゆ「・・・そんなの・・・嘘・・・だよ・・」
あゆ「・・・だって・・・だって・・・」
涙混じりの、あゆの悲壮な声だった・・・。
あゆ「・・・ボク・・・ここにいるよ・・・」
あゆ「・・・だったら・・・どうして・・・」
祐一「あゆ・・・・」
一体、何が起こっているのかさえ、俺には分からなくて・・・
あゆに声をかけることすら出来なかった。
あゆ「・・・ボク・・・ここにいたらいけないの・・・?」
あゆ「・・・いたら・・・いけない人間なの・・・?」
あゆ「・・・嘘・・」
あゆ「・・・・嘘・・・だよ」
あゆ「・・・嘘だよっ・・・」
あゆ「そんなの嘘だよっ!」
祐一「おい、あゆっ!」
あゆが、糸の切れた人形のように、その場に崩れ落ちる。
あゆ「・・・そうだ・・・」
ぽつり・・・と。あゆのかすれた声が響く・・・
あゆ「・・・鞄・・・・」
何かを思い出したように、あゆが背負っていた鞄を下ろす・・・・
あゆ「・・・今日も・・・学校あったもん・・・・」
あゆ「だから・・・だから・・・」
鞄のホックをはずして、中身を開ける。
あゆ「・・・え・・・」
あゆ「・・・どう・・・して・・・」
しかし、鞄の中身は切干大根だった・・・・
祐一「・・・って、なんでやねんっ!」
あゆ「・・・探さないと・・・・」
祐一「おいっ!あゆっ!」
鞄を置いたまま、あゆが飛ぶ。
祐一「・・・って、飛べたんかっ!?」
祐一「あゆっ!何やってんだっ!」
あゆ「・・・・探し物・・・だよ・・」
今やっと俺の存在に気づいたかのように、あゆが顔を上げる・・・・・・
泣き笑いのような表情だった。
危うい均衡で保たれた表情。
ほんの少しのきっかけで、泣き崩れてしまいそうな・・・・。
祐一「探し物って、ここに埋まっているのか?」
あゆ「・・・うん」
祐一「だったら、明日、夜が明けてから探せば良いだろ?」
あゆ「・・・ダメ、だよ・・・」
祐一「・・・・」
あゆ「・・・だって」
俺のほうを向いて、悲しげに笑う。
あゆ「・・・爆発するかもしれないよ」
祐一「何それっ!?」
爆発っ!?なんでそんなもの埋まってんだっ!
あゆ「もう、会えないと思うんだ・・・・」
コートを手にした俺の背中に、淡々としたあゆの言葉が投げかけられる。
あゆ「せっかく、再会できたのに・・・・」
あゆ「・・・本当に、ごめんね・・・・」
祐一「おいっ!何を言って・・・・」
振り返った先・・・
祐一「・・・見えない」
煙幕を張られていた。
あゆ編 1月27日 完
あとがき:あゆ編佳境です・・・でも、展開が辛いからギャグにするのすげぇ難しいです・・・