あゆ編 1月27日

あゆと一緒に途中までの道を行く。

祐一「いつも思うんだけど、そのリュックの中って何が入ってるんだ?」

あゆ「普通だよ」

祐一「普通じゃわかんないって」

あゆ「不発弾とか不発弾とか不発弾とか・・・・

祐一「どこが普通やねんっ!」

 

祐一「でも、一度あゆの行っている学校見てみたいな」

あゆ「・・・ボクの学校?」

祐一「あゆがそれこそ大好きだっていう学校、一度で良いから見てみたい」

あゆ「それなら、ボク案内するよ」

祐一「お。いいのか?」

あゆ「うん。じゃあ、今日の夕方に」

 

ぽっかりと開いた場所だった。

大きな切り株を中心に、その周りだけ地面が顔を覗かせていた。

さながら、好奇心旺盛な子供達の遊び場になりそうな、そんな空間だった。

あゆ「・・・・・」

あゆは、その場所・・・特に、大きな切り株だけをただじっと見つめていた・・・

大人が3人手をつないでも、1週出来ないような、そんな切り株だった。

そして、そんな風景が真っ赤に染まっている。

祐一「・・・・・・・」

赤い風景・・・

何かが、記憶の片隅で動いた・・・・

思い出の奥底・・・

忘れていた風景・・・・

あゆ「・・・嘘・・・だよ・・・」

あゆが、震えるような声で、呟く。

あゆ「・・・どうして・・・」

あゆ「・・ボク・・・どうして・・・」

あゆは、明らかに何かに怯えていた。

あゆ「・・・ここ・・・知ってる」

嗚咽にも似た、あゆの声・・・

あゆ「・・・ボク・・・ここで・・・」

あゆ「・・・学校・・・」

あゆ「・・・嘘・・・だよ・・・」

あゆ「・・・そんなの・・・嘘・・・だよ・・」

あゆ「・・・だって・・・だって・・・」

涙混じりの、あゆの悲壮な声だった・・・。

あゆ「・・・ボク・・・ここにいるよ・・・」

あゆ「・・・だったら・・・どうして・・・」

祐一「あゆ・・・・」

一体、何が起こっているのかさえ、俺には分からなくて・・・

あゆに声をかけることすら出来なかった。

あゆ「・・・ボク・・・ここにいたらいけないの・・・?」

あゆ「・・・いたら・・・いけない人間なの・・・?」

あゆ「・・・嘘・・」

あゆ「・・・・嘘・・・だよ」

あゆ「・・・嘘だよっ・・・」

あゆ「そんなの嘘だよっ!」

祐一「おい、あゆっ!」

あゆが、糸の切れた人形のように、その場に崩れ落ちる。

あゆ「・・・そうだ・・・」

ぽつり・・・と。あゆのかすれた声が響く・・・

あゆ「・・・鞄・・・・」

何かを思い出したように、あゆが背負っていた鞄を下ろす・・・・

あゆ「・・・今日も・・・学校あったもん・・・・」

あゆ「だから・・・だから・・・」

鞄のホックをはずして、中身を開ける。

あゆ「・・・え・・・」

あゆ「・・・どう・・・して・・・」

しかし、鞄の中身は切干大根だった・・・・

祐一「・・・って、なんでやねんっ!」

あゆ「・・・探さないと・・・・」

祐一「おいっ!あゆっ!」

鞄を置いたまま、あゆが飛ぶ。

祐一「・・・って、飛べたんかっ!?」

 

祐一「あゆっ!何やってんだっ!」

あゆ「・・・・探し物・・・だよ・・」

今やっと俺の存在に気づいたかのように、あゆが顔を上げる・・・・・・

泣き笑いのような表情だった。

危うい均衡で保たれた表情。

ほんの少しのきっかけで、泣き崩れてしまいそうな・・・・。

祐一「探し物って、ここに埋まっているのか?」

あゆ「・・・うん」

祐一「だったら、明日、夜が明けてから探せば良いだろ?」

あゆ「・・・ダメ、だよ・・・」

祐一「・・・・」

あゆ「・・・だって」

俺のほうを向いて、悲しげに笑う。

あゆ「・・・爆発するかもしれないよ

祐一「何それっ!?」

爆発っ!?なんでそんなもの埋まってんだっ!

 

あゆ「もう、会えないと思うんだ・・・・」

コートを手にした俺の背中に、淡々としたあゆの言葉が投げかけられる。

あゆ「せっかく、再会できたのに・・・・」

あゆ「・・・本当に、ごめんね・・・・」

祐一「おいっ!何を言って・・・・」

振り返った先・・・

祐一「・・・見えない」

煙幕を張られていた。

 

あゆ編 1月27日 完

あとがき:あゆ編佳境です・・・でも、展開が辛いからギャグにするのすげぇ難しいです・・・