祐一「悪いけど、今日もまた先に行っててくれないか?」
名雪「うん。わかったよ」
全く事情も訊かずに、頷いて走りだす。
祐一「おはよぅっ、おふたりさん」
俺は後ろから迫って、ふたりの肩を同時に叩く。
佐祐理「あ、祐一さん。おはようございます」
佐祐理さんは不機嫌なときなど無いのだろうか。いつだって笑顔だ。
舞「・・・・・・・・」
で、相変わらずこっちは能面。
機嫌が良いのか、悪いのかさえも分からない。
俺が裸で歩いてたって、こんな顔をしてそうである。
佐祐理「今日はたくさん、お弁当を作ってきたんですよ」
ぼぉーっとしていたら、佐祐理さんが俺の顔を見て話していた。
佐祐理「今日は、ほうれん草とフルーツパフェ胡麻和え弁当です」
祐一「・・・・・・・・え?佐祐理さん、いまなんて・・・・・・」
舞「祐一・・・・・・・・・・」
気づくと、舞が俺の服の裾をつかんでいた。
舞「今日の佐祐理は、機嫌が凄く悪いから気をつけて・・・・・・・・・・」
祐一「嘘ぉっ!?だって、あんなに笑顔で・・・・・・」
気づくと、佐祐理さんの額のほうに、微かに青筋が走っていた。
佐祐理「祐一さんもたくさん食べてくださいね」
祐一「は・・・・・・・はいっ」
なんか、半分脅しだった。っていうか、なんであんなに機嫌悪いのっ!?
昼休みになると、俺は嬉々として踊り場に姿をあらわしていた。
祐一「舞、これをやろう」
舞「・・・・・・?」
隠し持っていた棒状に畳んであった物を、舞に手渡す。
箸を止めた舞が、俺の顔とそれを交互に見比べる。
祐一「開いて見ろ」
舞がそれをするすると解いてゆく。
舞「・・・・・・・・・」
そして黄色の旗となったそれの、横断中の子供が描かれた部分をジッと凝視する。
舞「・・・・・・・・?」
横から佐祐理さんも一緒になって食べかけのけろぴーの尻尾を口からはみださせたまま、止まっていた。
・・・・・・って、ちょっと待てっ!けろぴーって何だっ!
祐一「さ、佐祐理さん・・・・」
佐祐理「はい?」
祐一「い、いや・・・・・な、なんでもない・・・・・・・」
き、聞けねえ・・・・こればっかりは聞けねえって!
放課後〜
祐一「お、名雪。いいところにいたな」
名雪「どうしたの?」
祐一「何かさ、女の子を女の子らしく見せる方法って無いか?」
名雪「・・・・言ってる事が良く分からないよ」
祐一「言葉の通りだよ」
祐一「ゴリラっぽい女の子でも、可愛く見せる方法だよ」
名雪「その子、ゴリラっぽいの?」
祐一「いや・・・ゴリラっぽくは無いけど」
名雪「それなら、可愛いの?」
祐一「・・・・・・・・」
祐一「む・・・・・・・・」
祐一「むむ・・・・・・・」
名雪「・・・・・?」
祐一「目潰しッ!」
名雪「わっ」
さっ。
名雪は、驚きながらも俺の寸止め目潰しを避け・・・・
ぐさっ!
祐一「ぐををををっ!」
名雪のカウンター目潰し攻撃が決まってしまった。しかも、寸止めじゃないし。
名雪「大丈夫?」
祐一「大丈夫なわけあるかっ!」
名雪「でも、祐一がそんな照れ隠しするなんて思わなかった」
いや、なんでそこだけ台詞が本編通りなんだ・・・・・・・
名雪「たとえば、あれに出て見るとか・・・・・」
祐一「どれ?」
掲示板に寄って行き、名雪の指差す1枚の張り紙を見る。
「平成11年度学園サバイバルゲーム(本物志向)」と、題字にあった。
・・・・・・・・本物志向?
名雪「生徒会主催のサバイバル大会。学園の恒例行事なの」
祐一「・・・・・名雪、本物志向って何だ?」
名雪「そのままの意味だよ」
祐一「・・・・・・さすがに、人は死なないだろ?」
名雪「えっと・・・最近はあまり出てないね・・・・・」
な、何ィッ!?
ちょっと前までいたのかっ!?死傷者がっ!
祐一(すごく先行き不安・・・っていうか、こんなことしても舞が女の子らしくなるわけねえじゃんよぉ・・・・・)
本末転倒ということに気がついた1日だった。
1月18日 完
あとがき:眠っ!ダメです。眠いです。夏休みがこんなに眠いとは・・・・。ZZZ・・・・・