舞編 1月25日

無風。

澄み切った景色に太陽の日差しが降り注ぐ。

きんと張った空気が寝起きのまだ眠ったような肌には心地よい。

恥ずかしいほどに清々しい形容がしっくりくる朝だった。

そして前方には、恥ずかしいほどに俺が待ち望んでいた光景。

祐一「おはようっ、おふたりさんっ」

とんっ、とその見知った背中を二つ同時に叩く。

佐祐理「あ、祐一さん。おはようございますーっ」

先に振り返った佐祐理さんがにこやかに挨拶。続いて・・・

舞「・・・・・・・」

重々しく振り返った舞が・・・・

舞「・・・・・・・」

舞「・・・・・・・」

舞「・・・・・・・」

舞「・・・おはヨーグルト

待てっ!何だ今のはっ!?

祐一「もっとサッパリ言えんのかっ、おまえはっ!」

って、俺も挨拶だって認めてるしっ!

佐祐理「あははーっ、照れてるんですよ、舞は」

佐祐理「ねぇ?」

舞「・・・・・・・」

祐一「照れてる?舞が?」

舞「・・・照れてなんか無い」

佐祐理「あれ?そだっけ?」

佐祐理「何度も振り返りながら、歩いてたのに?」

祐一(あっ、ダメだそれ以上は、佐祐理さんっ!舞のツッコミは加減が効かないんだぞっ!)

しかし、もう遅い。舞が音速でチョップを繰り出していた

ヒュッ!

しかし、チョップは空を切った。

佐祐理さんが音速を超える速度でチョップをかわしていた

って、ちょっと待てっ!なんで佐祐理さんがそんな技能を持ってるんだっ!

佐祐理「あははーっ、舞のチョップは見切りましたよーっ」

舞「・・・佐祐理、出来るな」

目の前で、漫画のような光景が繰り広げられていた。

祐一「っていうか、嘘だろっ!」

 

1時間目が終わって伸びをしてると、目の前に名雪がいた。

名雪「はい」

祐一「ん?なんだ、これ?」

紙袋を手に、俺へ差し出していた。

名雪「ほら、言ってたでしょ?」

祐一「なにを」

名雪「誰にもばれずに地下鉄で有毒ガスを撒く方法

祐一「言うかっ!

それ以上はマジでヤバイっ!

名雪「あ、ごめん、違ったね。女の子を可愛く見せる方法」

祐一「あ、そうだったな・・・・」

今更どうでも良かった。

俺が舞にしてあげられることは、もっと別な形であると気づいたからだ。

というか、今になって考えてみると、そんなことに奔走していた俺は馬鹿にしか思えない。

名雪「これね、学祭の出し物で使ってたものなの。それ、貰ってきちゃった」

祐一「そっか、はいはい」

名雪「・・・なんだか、全然嬉しそうに見えないんだけど・・・・」

祐一「嬉しいよ。ヤッホーゥッ!」

名雪「・・・・・・」

名雪「ま、いいか。はい」

名雪「苦労して探したんだから、活用してよね」

紙袋を俺の机の上に置くと、名雪は自分の席に戻っていった。

祐一「なんだろ・・・・・・」

一応、俺はその紙袋の中身を確かめてみる。

祐一「・・・・・・・」

メイド服が出てきた。

祐一(何考えてんだ、あいつは・・・・・)

が、袋からまた何か出てきた。

祐一「・・・・・・・・・」

○NEの制服が出てきた。

祐一「嘘っ!?」

っていうか、↑のやつ、伏字になってないし・・・

声「あーっ!」

思わず声のしたほうを向くと、俺の席の3つ向こうの席から女の子が突っ込んできた。

女の子「それ、あたしの制服よっ!」

祐一「うわっ!・・・って、お前確か○NEのキャラの・・・」

女の子「それ以上言うなっ!」

結局、制服は奪われてしまった。

 

昼休みになるといつものように、パンを買いこんで屋上に続く踊り場へと向かう。

だがそこにはいつもと違う光景が待っていた。

舞「・・・・・・・・」

祐一「よぉ」

舞「・・・・・・・・」

いつものビニールシートの上には舞が一人、ちょこんと座っているだけだった。

祐一「あれ?佐祐理さんは?」

舞「・・・早退」

祐一「え?具合でも悪くなったのか?」

舞「・・・肺ガン気味だったみたい

祐一「あ、そうだったのか」

祐一「大事に至らないといいけどな」

・・・・って待てっ!肺ガン!?

舞「・・・冗談」

祐一「言って良い冗談と悪い冗談があるだろっ!」

 

舞編 1月25日 完

あとがき:ふっ・・・久しぶりに調子が良いぜ今宵はっ!(注:炭物は裏Kanonをたいてい夜中に書いてます)