祐一「よぅっ」
最上階の踊り場まで上がってくる。
佐祐理「こんにちはーっ」
佐祐理さんに迎えられ、俺はその場に腰を落ち着ける。
舞「・・・・・・・」
俺はもぐもぐとパンをほおばりながら、あることを思い出した。
祐一「そういやさ、佐祐理さん、舞としりとりやったことある?」
佐祐理「ええ。良くやってますよ」
祐一「なんだ、そうだったのか」
佐祐理「舞は、しりとり大好きなんだよね」
佐祐理さんの問いかけに舞はこくりと頷いた。
佐祐理「でも、弱いんだよねーっ」
祐一「そうそう」
祐一「こいつってさ、絶対動物の名前の後に、さん付けするから、すぐに自爆するんだよな」
佐祐理「あははーっ、舞らしいです」
祐一「・・・・・・」
しかし良く考えてみれば、舞と佐祐理さんって、二人で居る時は何をしてすごしているのだろうか。
まさか、実際しりとりばかりして時間を潰しているわけでもあるまい。
祐一「ふたりで、家で遊ぶこととか有るの?」
佐祐理「ええ、佐祐理の家では良く遊びますね」
祐一「・・・・・・・」
佐祐理さんの家で、ふたりが遊ぶ・・・
舞が、普通の学生が興じるような遊戯なんかに興味を示すとは思えないけどな・・・・
祐一「・・・何をして遊ぶの?」
佐祐理「株です」
舞「・・・・株」
佐祐理「舞は今株主総会に出られるほど株を持ってるんだよねーっ」
舞「・・・面倒くさい」
かなり知的な遊びだった。
・・・・遊びか?
びゅっ・・・びゅっ・・・
俺は木刀を振りながらも、それに集中できないでいた。
夕べの舞の言動が引っかかっていたのだ。
舞は、あの時、空振りをして見せてから、そして、一切攻撃をやめて見せた。
そして最後に・・・
「・・・何を見ていたの」
か・・・・。
舞は何を言いたかったのだろう。
そうか。
あれは、前日の俺の置かれた状況をトレースしていたんだな。
一撃目をわざと空振りして見せたのもそのためだった。
あの時、舞は相手が手負いと知ると、俺に正解を見せるための戦いに変えていたのだ。
祐一「ん・・・・・・」
と、その時視界の隅で、何かが陽を受けて鈍く光った。
俺はとりあえず、前方に飛んだ。
どすっ。
重い音がして、俺の先ほどまで居た場所に不発弾が落ちていた。
舞「・・・・よけられた」
祐一「つーか、不発弾投げちゃ意味無いだろ。爆発するし」
爆発しなくて良かった。
声「あーっ、舞ーっ、こんなところに居たんだぁっ」
祐一「ぐあっ・・・」
そこへ場にそぐわない、能天気な声。
佐祐理さんだった。
佐祐理「あれ?二人で同好会でも作るんですか?」
互いの獲物を携え合ってる俺と舞を見比べながら、佐祐理さんがそう続けた。
祐一「あ・・・・いや、これは」
舞「・・・・・・」
佐祐理「これだったんだ、最近二人でこそこそしてたの」
佐祐理「楽しそう。佐祐理も仲間に入れて欲しいなぁ」
祐一「よし、入れてやろう」
ぽかっ。
舞「・・・勝手に決めない」
舞「・・・遊びじゃない」
舞が佐祐理さんに目を向けてそう言った。
祐一「そう、遊びじゃないんだ、佐祐理さん」
佐祐理「佐祐理も遊ぶつもりは無いですよ。真剣にやります」
祐一「だってさ、舞」
俺は口篭もるだけで、舞に振るしかなかった。
佐祐理さんの申し出を断ることなど、俺には出来そうも無い。
舞「・・・佐祐理には向いてない」
佐祐理「そんなことないよ。こう見えても佐祐理、ニュータイプだし」
祐一「嘘っ!?」
『見える!』とか言ったらヤだなぁ・・・・
祐一「早くこんな戦い終わらせて、3人で遊ぼうな」
祐一「舞はどこか行きたいところあるか?」
舞「・・・・恐山」
祐一「却下」
ホンマモンでたらヤだし・・・
舞編 1月27日 完
あとがき:ぐぅ・・・なんて舞が知的な・・・でも恐山・・・書いてる本人分からないですぅ(ヲイ)