真琴編 1月10日

祐一「・・・・・・」

祐一「お前な、これ食ったら、ちゃんと帰れよ」

少女「・・・・・・・・・」

少女は相変わらず黙ったままで熱心にご飯をかける生卵をかき混ぜていた。

何かのショックで、言葉を忘れてしまったのではないか。

そんな危惧にも思い至るが、実際夕べはきゃーきゃー喚いていたことを思い出す。

祐一「親御さん心配してるぞ」

少女「・・・・・・」

祐一「返事はどうした」

少女「・・・・・・・・・」

少女「仕方ないから」少女はそうぽつりと返した。

祐一「仕方ない?」

少女「うん、仕方ないの」

名雪「あのね、この子ね、人造人間らしいの」

名雪が数少ない少女のフォローに回った。

・・・・・・・・って、おい!人造人間って何だっ!?

祐一「そりゃなんだ、人造人間って」

少女「ちょっと格好良いでしょ」

そういう問題だろうか。いやすでに人間じゃないことになる。

祐一「あほかっ」

かきっ!

祐一「・・・・・・・・・」

殴ったほうの手が痛い。しかも今の「カキッ!」って金属音は・・・・・。

祐一「お前、狐じゃなかったのか?」

たしか本編ではそうだったはずだが・・・・。

★ ★ ★ ★ ★

俺と少女と名雪の三人で、輪を描くようにして座る。

人造人間の少女と名雪は黙って、俺が話を切り出すのを待っていた。

祐一「で、まずは・・・・人造人間だと言うことだが、それは本当か?正直に答えろ」

少女「ほんとうだもん」

祐一「お前、正直に答えろって言っただろ?」

少女「ほんとうだから、ほんとーだって言ったのよ!」

祐一「本当か?だったら証拠見せてみろよ」

少女「わかった」

・・・・・え?マジ?

ガシャン!ウィーーン・・・・・ジャキン!

いきなり少女の左腕のひじが直角に折れ、そのなかからいかにもロボットが使いそうなキャノン砲が突き出していた。

少女「えーっと、祐一ロックオン、っと」

祐一「待てっ!どうして俺の名前を知ってるっ!」

それ以前にどうして俺を狙ってるんだっ!?

少女「発射!」

祐一「ぐわぉっ!」

バシュンッ!!

ビームを俺は紙一重でかわした。

少女「ちっ、外したか・・・」

祐一「俺を殺す気かっ!」

名雪「祐一が悪い」

祐一「俺が悪いのかっ!?」

とりあえずこの少女が人ではないということは分かった。

★  ★  ★  ★  ★

名雪「なんて呼べばいいのかなぁ?」

名雪「名前ぐらいは思い出せない?」

祐一「殺村凶子で決まりだな」

少女「見てなさいよぅ、ぜったい可愛い名前、思い出してやるからっ」

そして夜。

少女「あのね、名前、思い出したの」

祐一「もっと殴れば・・・・・」言いかけてやめた。

あの金属のかたまりを殴るのはどうもリスクが大きすぎる。

秋子「それで、名前は?」

少女「うん。凶子。殺村凶子。よろしくね」

やっとテキストに真琴の名前が出るか・・・・・っておい!

祐一「殺村凶子!?」

凶子「うん。可愛いでしょ。」

さっきあれほど嫌がってたじゃないか!?

っていうか、テキストがすでに凶子!真琴じゃないのか!

祐一「・・・・・・・」

聞かなかった事にしよう。

凶子「悔しいでしょ、祐一」

凶子が、したり顔で勝ち誇っていた。

祐一「なにがだ?」

凶子「可愛い名前で」

祐一「どこがだっ!!」

凶子「「浩平」、なんて名前じゃなくて良かったぁ」

祐一「俺も凶子じゃなくて良かった・・・・ってちょっと待てっ!」

浩平って、違うゲームだろっ!

1月10日 完