とんとん・・・
ノックの音でようやく目がさめる。
名雪「まだ寝てるの?」
名雪「・・・だらしない」
寝返りを打って、ドアのほうに視界を入れると、名雪が顔を覗かせていた。
祐一「ああ・・・・」
祐一「・・・今何時だ?」
名雪「もうお昼。もうすぐお昼ご飯できるよ」
祐一「そっか・・」
声「・・・お昼ご飯なに」
寝ぼけたような声が、俺の胸の辺りから聞こえてきた」
忘れてた・・・真琴がいたのだ。
名雪「あれ?今、祐一が喋ったの?」
祐一「ああ、そうだぞ、お昼ご飯なに?」
名雪「たらこスパゲッティ」
名雪はどんな耳をしているのか、真琴のくぐもった声を俺のものだと信じている。
布団の中にすっぽり真琴の姿が埋まっているのが幸いした。
祐一「おう、そりゃ楽しみだ。すぐ行くからな」
声「あぅ・・・」
名雪「あぅ?」
祐一「そう、あぅ、だ」
祐一「まったく、あぅだ。とても、あぅだ。名雪は最近あぅか?」
名雪「使い方、間違ってない?」
祐一「いいから早くいけっ。目の前で着替え始めるぞっ」
名雪「いいよ」
祐一「・・・は?」
名雪「だから、目の前で着替えてもいいよ、じっくり見るから」
祐一「あ、あの・・・名雪さん?」
名雪「ついでに写真も撮るから」
祐一「・・・すいません、やめてください」
名雪にそんな趣味があったとは・・・・
祐一「何かさ、買ってやるよ」
思わずそんな事を口走っていた。
それで少し元気になってくれたら、という思いからだった。
真琴「え?」
祐一「欲しいものがあったら言えよ。今日は何でも買ってやるから」
真琴「いきなり、なによぅ・・・」
あからさまに気持ち悪がって、真琴は少し距離を置いた。
祐一「俺はお前ほど金遣いが荒くないからな。有り余ってるんだよ」
真琴「ホント・・・・・?」
祐一「ああ。今月はもう、使う予定も無いからな。なんでもプレゼントしてやるよ」
真琴「わぁ、じゃ、欲しいものなんでも言っていいのね?」
祐一「あ、ああ・・・・・」
俺はズボンのポケットに入った財布の中身を後ろ手に探る。
祐一(うーん・・・安請け合いしすぎたかな・・・・)
祐一(こいつのこおだから、遠慮なく高価なものを言いつけてくるに違いないぞ・・・・・)
少し(というか、かなり)心配になってきた。
真琴「ね、祐一ーーっ」
早速何かを見つけたらしく、真琴がすぐ近くの店先で俺を呼んでいた。
祐一「なにか、あったか」
真琴「うん、これ」
真琴が指さすのは、土鍋を陳列した棚だった。
狭い枠組みの中で使いこまれて無なさげな土鍋がひしめき合っている。
祐一「・・・・ってちょっと待てっ!なんで土鍋がこんなにあるんだっ!」
店先の看板に目を移すと、『オール100円』の文字が見て取れた。
いわゆる100円ショップというやつだ。
真琴「これがいい」
真琴がその中から拾い上げたのは、埃を被った土鍋だった。
にしても、あまりに素っ気無い。子供だって喜びそうに無い。←誰でも喜ばない
祐一「こい、デパートで、もっといい土鍋買ってやるから」
なんでここだけ通常のテキスト?
夜の丘に来るのは2度目だった。
街灯も届かないその場所は、あらゆるところに真の闇を作り、全体としては不完全な形をとっていた。
しかしこの場所で何を捜せば良いのだろう。
なにを見つければ、真琴を救うことが出来るのだろうか。
まったく見当もつかない。
ただ真琴と唯一の接点である場所だったから、闇雲に訪れてしまっただけだ。
いつもながら無策だったが、じっとしていろというほうが無理な話だ。
ここにはなにもない。
それが結論だった。
祐一「・・・・・・・」
俺はぼうっと立ち尽くしていた。
これ以上ここにいて、何をすれば良いのだろう。
わからなかった。
ごぃんっ!
背後で音がした。
っていうか、俺の頭から音がした・・・
そこに真琴が立っていた。
祐一「真琴・・・・」
と、急激に意識が薄れる。
真琴の手には、土鍋。
祐一「そ・・・そんなことせずに普通に登場しろっ・・・・・」
結局、真琴編佳境に来てまでこういうオチなのか・・・
真琴編 1月24日 完
あとがき:・・・・・眠い。毎回思うんですが、何故30分足らずで出来てしまうんでしょうか 答え:手抜き