今日の1時間目は、日頃の行いが行を奏してマラソンだった。
あとの2時間目、3時間目は昏倒するようにして過ぎていった。
そして、4時間目の日本史もあと半分に差し掛かったころ・・・・
北川「おい、相沢・・・・・・」
後ろの席の北川が、小声で話し掛けてくる。
北川「あの子・・・またいるぞ」
祐一「あの子って?」
同じ位の小声で話す。
そして、返してからその意味に気がついた。
窓の下。
雪に覆われた冷たい場所の中心。
祐一「・・・・・・・」
いつからその場所にいたかは分からない。
北川「女の子だろ?何やってんだろうな」
たったひとつの足跡が辿り着くその先に、雪のように白い肌の少女が立っていた。
小柄な体に、ストールを羽織っている。
ついでに今日は看護婦さんの服装だった。
間違い無く美坂栞だった。ていうか、思いっきり目立つだろ!
祐一(・・・はぁ)
思わずため息が出る。
もしかしたらとは思っていたが・・・・・
祐一(・・・・・・・)
祐一(まぁいいか・・・・・)
勿論よくはないのだが、今は授業中なのでどうすることも出来ない。
それに、無下に追い返すことが忍びないのも事実だった。
しばらくして、4時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
担任が出ていって、一気に教室内が昼休みムードに染まる。
名雪「祐一、今日も学食?」
祐一「いや、俺は外」
名雪「え?」
祐一「じゃあな、名雪」
名雪「え? え?」
この時期の校舎裏は、当然のように学内の喧騒からは隔離された場所だった。
祐一「・・・よぉ」
栞「こんにちは」
台詞だけ聞いてると何でもないやりとりだったが、場所が場所だけに不思議な情景だった。
祐一「寒くないか?」
栞「もちろん寒いですよ」
ストールを羽織ってはいるが、短いスカートが特に寒そうだった。
栞「でも、暑いよりは良いですよ」
祐一「そうか?俺はどっちでも嫌だけど」
栞「暑いと、溶けちゃいますから」
祐一「・・・・・・・・・」
っておいっ!溶けるってなんだっ!
っていうか、笑えないギャグ・・・・・。
★ ★ ★ ★ ★
祐一「しかし、いつまで風邪を引いてるつもりだ?」
栞「わたしに訊かれても困ります」
祐一「医者はなんて言ってるんだ?」
栞「目からビームを出す困った患者だって言ってます」
祐一「いや、そうじゃなくて・・・・って、おいっ!目からビームって、まさか例の・・・・」
栞「祐一さん、それ以上言っちゃダメですっ!」
ビーーーーーーーッ!
チュドオオオオオンッ!
祐一「・・・・・・・・」
俺の顔を、怪光線が横切った。
後ろで爆発音・・・・・。
・・・・・・・・・。
これ以上は追求するのをあきらめよう・・・・・。
★ ★ ★ ★ ★
祐一「分かった、俺が何か買ってきてやる」
栞「学食ですか?」
祐一「そうだな」
学食の購買部にでも行けば、サンドイッチでもカレーパンでもマムシドリンクでもなんでも売っているだろう。
・・・・俺、なんか違うこと言わなかったか?
祐一「なんでも好きなもの買って来てやるぞ」
栞「ホントになんでもいいんですか?」
祐一「ただし、ここまで持ってこられるものだぞ?」
栞「分かりました・・・・・・」
一呼吸置いて、栞が呟く。
栞「マムシドリンクがいいです」
祐一「・・・・・は?」
栞「私は、マムシドリンクがいいです」
祐一「マムシドリンクって・・・・・もしかしてあの冷たいマムシドリンクか?」
マムシドリンクに「あの冷たい」なんて修飾語が付くとは到底思えなかった。
栞「温かいマムシドリンクってあるんですか?」
祐一「いや、あるにはあるが・・・・・」
もはや、飲み物ではあるまい。
栞編 1月12日 完
評:今回はイケてます。多分ですが。いや、何気に強調して見たんですが・・・・もうすぐ模試だし(関係ない)。