4時間目の担任が教室を出て、後を追うように廊下側の生徒が教室の外に走り出す。
祐一「俺も移動するか・・・・・・」
学食組が一通り席を立った後、俺もゆっくりと教室を出る。
場所は決まっていた。
誰もいない、あの場所へ。
中庭へ通じるドアを開けると、外は薄暗かった。
どんよりとした分厚い雲に覆われて、青空はかけらも見ることができなかった。
風も強い・・・・・・
それこそ、いつ雪がふるどころか吹雪になってもおかしくないような空模様だった。
音を立てて吹き荒ぶ風が雪の積もった木々を揺らし、一足先に吹雪の様相を呈していた。
栞「・・・・・・・・・」
そんな中で、ひとりの少女が立っていた。
ストールとスカートの裾を押さえて、困ったような表情で雪の中に佇んでいた。
栞「あ、祐一さ・・・きゃっ!」
風に運ばれて、そのまま流される。
栞「わっ、わっ・・・スカートが・・・〜〜〜〜」
祐一「・・・・・・」
栞は、飛ばされた。
祐一「・・・・・・いや、まずいだろ・・・・」
★ ★ ★ ★ ★
栞「・・・はぁ、少し落ち着きました」
風の通りの少ない壁際に移動して、ほっと息をつく。
吐いた息もすぐに流されていく。
中庭のど真ん中に比べて少ないとはいえ、決して穏やかな場所ではなかった。
祐一「大丈夫か?」
栞「ちょっとふらふらします」
祐一「そうだろうな・・・・・」
栞「で、でも、元気です」
祐一「目、回ってるんじゃないのか?」
栞「ふぇ・・・大丈夫ですぅ」
祐一「それならいいけど・・・・・」
栞「は、はい・・・・」
本当に大丈夫かは怪しいところだが一応は落ち着いたらしいので話を進めてみる。
祐一「とりあえず、何か食べるか?」
栞「えっと・・・そうですね・・・」
栞「やっぱりお腹すきましたから・・・よろしくお願いします」
祐一「じゃあ、また学食行ってくるから何か欲しいものを言ってくれ」
栞「すっぽんドリンク」
祐一「・・・・・・・・」
栞「すっぽんドリンクのバニラ」
祐一「あるかっ!」
★ ★ ★ ★ ★
バニラのアイスクリームを食べてから、なんとなく腹が痛くなった気がする。
ついでに作者もこれ書いてる最中に腹が痛くなった気がする。
いや、そんなことはおいといて・・・・・・
風に運ばれた結晶が、空っぽのカップの中に積もっていた。
栞「お腹のお薬ならありますけど・・・・」
まだ食べ終わってない栞が、心配そうに木のスプーンをくわえていた。
祐一「いま、持ってるのか?」
栞「はい。常備薬のひとつですから」
祐一「・・・そ、そうか」
栞「他にも、正露丸と赤玉ス○ップと・・・・・」
祐一「おい待てっ!それ全部腹の薬ぢゃんっ!」
っていうか、赤玉スト○プはマイナーだろ、かなり・・・・・
★ ★ ★ ★ ★
祐一「・・・・栞」
栞「はい?」
俺は、思いきって香里の話をしてみることにした。
祐一「今日、香里に妹のことを尋ねたんだ」
栞「・・・・はい」
祐一「そうしたら、自分は一人っ子だって言ってた」
栞「・・・・・」
不意に俯いて、そして何かに耐えるようにぎゅっと口を閉ざす。
栞「・・・そう、ですか・・・」
やがて、重苦しい沈黙を破るように栞は言葉を紡ぐ。
栞「・・・・チッ」
何ぃぃっ!?
「チッ」って何だっ!?っていうか栞ってこういうキャラだったか!?
栞「・・・・あの野郎ォ・・・・」
ええーーーーっ!?
なんか、栞が早くも人格壊れちゃってるよおぉぉぉぉっ!
栞編 1月13日 完
評:無理やり壊しちゃいましたね・・・・。
栞「私は、スッポンドリンクなんて飲みませんよっ」
いや、前回のマムシドリンクと呼応させてみようと思って・・・・
栞「そんなこと言う人、嫌いですっ」
あわわ・・・・てなわけで、次は普通に壊します。でわ。