栞編 1月16日

教室を出る時時間を確認すると、1時ちょっと前。

栞との約束の時間まではあと少しだったが、これなら待ち合わせ場所までの距離を考えると、ちょうどいいぐらいだった。

祐一(一応、あそこも学校の中だからな・・・・・・)

放課後の予定を熱心に話し合う下校途中の生徒をかき分けながら1階へ降りる。

いつものように、直接中庭に出ようとも考えたが、今日は校舎の中に戻ることも無いだろうから、昇降口へ移動する。

靴を履き替えてから、一度外に出る。

少し遠回りになるが、校舎沿いに歩けば中庭に行けるはずだ。

香里「・・・・・・・・・相沢君」

昇降口を出たところで、丁度香里と顔を合わせた。

祐一「今から帰るところか?」

香里「相沢君もそうでしょ・・・・・・」

祐一「いや、俺はまだ帰らない」

香里「・・・・・そう」

どこか疲れたような表情だった。

祐一「どうしたんだ?」

香里「・・・・持病の妄想癖がね」

祐一「・・・・は?」

香里「新型爆弾で人類の大半が死滅する妄想が

祐一「それ以上言うなっ!それ違うゲームだっ!」

まさか香里の口から「し○く」のネタが飛び出すとは思わなかった。

香里「ふう・・・じゃあね、相沢君」

そっけなく言い放って、正門のほうに歩いていく。

何か声をかけようかと思ったが、すぐに他の生徒の影に隠れて見えなくなってしまった。

祐一「・・・まぁいいか」

香里の妄想癖が気になったが、すぐに本来の目的を思い出した。

下校する生徒の波に逆らって、中庭のほうに移動する。

栞「あ、祐一さんっ」

俺の姿を認めて、栞が手を振る。

栞「祐一さん、祐一さんっ」

祐一「そんなに呼ばなくても気づいてるって」

栞「今日は土曜日で学校が半日なので、ちょっと嬉しいんです」

祐一「休んでるんだから、関係無いだろ」

栞「そんなことないですよっ。私の背後霊が学校に出てますからっ

祐一「ふーん、そうか・・・って、お前背後霊なんか学校に通わすなっ!」

栞「でもほら、今祐一さんの後ろに

祐一「ぐををををっ!!!!」

栞「あっ、今、肩に乗りました

祐一「やめろぉぉぉぉ!乗るなぁぁ!」

そうやって背後霊(?)としばらく格闘した。

祐一「その格好、寒いんじゃないのか?」

栞「大丈夫です。もう慣れました」

慣れても寒いのは寒いと思うけど・・・・・・

祐一「しかし・・・俺たち何でこんな場所で待ち合わせしてるんだろうな」

栞「そうですよね・・・・・こんな地雷だらけの場所に

しまった!!!忘れてた!!!

ふたりで顔を見合わせてから改めて辺りを見る。

ちゅどおおおぉぉぉぉぉん!!!

案の定、俺達は地雷を踏んで空高く飛ばされた。

栞「KEYの新作「AIR」もこんな感じなんですかね?

祐一「そんなわけあるかっ!」

こんなゲームだったら誰も買わないと思う・・・・・・・・・

 

そして何故か、気づくと商店街に着地していた。

栞「爽快なデートでしたね」

祐一「爽快すぎ」

っていうか2度と飛びたくない。

栞「あっ、あれって、ゲームセンターですよね」

祐一「そうだけど、そんなに珍しがるようなものか?」

栞「私、一度で良いからゲームセンターでゲームがしてみたかったんです」

祐一「・・・・ということは、一度もやったことないのか?」

栞「中に入ったことも無いです」

祐一「・・・変な奴」

栞「変じゃないですよー」

栞「今までたまたま機会が無かっただけです」

祐一「だったら、ちょっと寄ってくか?」

栞「はい。お願いします・・・・」

緊張した面持ちで、ゲーセンの入り口をじっと観察している。

栞「緊張しますね・・・」

祐一「そうか・・・?」

栞「でも、私がんばります」

ぐっと両手を握り締める。

祐一「・・・それで、何かやってみたいゲームとかあるか?」

栞「私、ゲームセンターにあるゲームは、野球拳しか知らないです

祐一「そんなものやるなっ!!」

このSSが18禁になるだろっ!(ならないって)

祐一「ほら、こんなのどうだ」

栞「なんですか、これ?」

一見、もぐらたたきのように見える。

祐一「これは、今巷で流行の、「あゆたたき」だ。名前ぐらい知ってるだろ?」

栞「はい・・・名前だけなら」

祐一「この穴からあゆがたくさん出てくるから、それをハンマーで思いっきり叩くんだ

栞「・・・はい」

祐一「時間内に、どれだけたくさんのあゆを叩くことができるか競うゲームだ」

栞「はい・・・」

祐一「どうだ、簡単そうだろう?」

栞「・・・はい、それなら私にも出来そうです」

祐一「じゃあ、やってみるか」

財布の中からコインを数枚取り出して、投入口にガシャガシャと放り込む。

栞「あ・・・始まりましたよ」

液晶がきらびやかに点滅しながらゲームがスタートする。

栞「・・・緊張しますね」

ハンマーを両手でぐっと握り締めて、言葉通りに緊張した面持ちで筐体を見つめる。

栞「・・・え、えっと」

祐一「始まってるぞ、栞」

栞「わ、分かってます」

穴から、たくさんのあゆが出てくる。

栞「えーいっ!」

どがっ!

うぐぅ!

ばきっ!

うぐぅ!

どごっ!

うぐぅ!

ぐしゃああっ!(止め)

うぐっ・・・・・・・・・(断末魔)

祐一(・・・・ホントにこんなのが大流行してるんだろうか?)

すごく疑問に思ってしまった。

栞編 1月16日 完

あとがき:やべえ。あゆファンに殺されるよ、俺。っていうか、AIRのオープニング曲っていいっすね。