教室を出る時時間を確認すると、1時ちょっと前。
栞との約束の時間まではあと少しだったが、これなら待ち合わせ場所までの距離を考えると、ちょうどいいぐらいだった。
祐一(一応、あそこも学校の中だからな・・・・・・)
放課後の予定を熱心に話し合う下校途中の生徒をかき分けながら1階へ降りる。
いつものように、直接中庭に出ようとも考えたが、今日は校舎の中に戻ることも無いだろうから、昇降口へ移動する。
靴を履き替えてから、一度外に出る。
少し遠回りになるが、校舎沿いに歩けば中庭に行けるはずだ。
香里「・・・・・・・・・相沢君」
昇降口を出たところで、丁度香里と顔を合わせた。
祐一「今から帰るところか?」
香里「相沢君もそうでしょ・・・・・・」
祐一「いや、俺はまだ帰らない」
香里「・・・・・そう」
どこか疲れたような表情だった。
祐一「どうしたんだ?」
香里「・・・・持病の妄想癖がね」
祐一「・・・・は?」
香里「新型爆弾で人類の大半が死滅する妄想が」
祐一「それ以上言うなっ!それ違うゲームだっ!」
まさか香里の口から「し○く」のネタが飛び出すとは思わなかった。
香里「ふう・・・じゃあね、相沢君」
そっけなく言い放って、正門のほうに歩いていく。
何か声をかけようかと思ったが、すぐに他の生徒の影に隠れて見えなくなってしまった。
祐一「・・・まぁいいか」
香里の妄想癖が気になったが、すぐに本来の目的を思い出した。
下校する生徒の波に逆らって、中庭のほうに移動する。
栞「あ、祐一さんっ」
俺の姿を認めて、栞が手を振る。
栞「祐一さん、祐一さんっ」
祐一「そんなに呼ばなくても気づいてるって」
栞「今日は土曜日で学校が半日なので、ちょっと嬉しいんです」
祐一「休んでるんだから、関係無いだろ」
栞「そんなことないですよっ。私の背後霊が学校に出てますからっ」
祐一「ふーん、そうか・・・って、お前背後霊なんか学校に通わすなっ!」
栞「でもほら、今祐一さんの後ろに」
祐一「ぐををををっ!!!!」
栞「あっ、今、肩に乗りました」
祐一「やめろぉぉぉぉ!乗るなぁぁ!」
そうやって背後霊(?)としばらく格闘した。
祐一「その格好、寒いんじゃないのか?」
栞「大丈夫です。もう慣れました」
慣れても寒いのは寒いと思うけど・・・・・・
祐一「しかし・・・俺たち何でこんな場所で待ち合わせしてるんだろうな」
栞「そうですよね・・・・・こんな地雷だらけの場所に」
しまった!!!忘れてた!!!
ふたりで顔を見合わせてから改めて辺りを見る。
ちゅどおおおぉぉぉぉぉん!!!
案の定、俺達は地雷を踏んで空高く飛ばされた。
栞「KEYの新作「AIR」もこんな感じなんですかね?」
祐一「そんなわけあるかっ!」
こんなゲームだったら誰も買わないと思う・・・・・・・・・
そして何故か、気づくと商店街に着地していた。
栞「爽快なデートでしたね」
祐一「爽快すぎ」
っていうか2度と飛びたくない。
栞「あっ、あれって、ゲームセンターですよね」
祐一「そうだけど、そんなに珍しがるようなものか?」
栞「私、一度で良いからゲームセンターでゲームがしてみたかったんです」
祐一「・・・・ということは、一度もやったことないのか?」
栞「中に入ったことも無いです」
祐一「・・・変な奴」
栞「変じゃないですよー」
栞「今までたまたま機会が無かっただけです」
祐一「だったら、ちょっと寄ってくか?」
栞「はい。お願いします・・・・」
緊張した面持ちで、ゲーセンの入り口をじっと観察している。
栞「緊張しますね・・・」
祐一「そうか・・・?」
栞「でも、私がんばります」
ぐっと両手を握り締める。
祐一「・・・それで、何かやってみたいゲームとかあるか?」
栞「私、ゲームセンターにあるゲームは、野球拳しか知らないです」
祐一「そんなものやるなっ!!」
このSSが18禁になるだろっ!(ならないって)
祐一「ほら、こんなのどうだ」
栞「なんですか、これ?」
一見、もぐらたたきのように見える。
祐一「これは、今巷で流行の、「あゆたたき」だ。名前ぐらい知ってるだろ?」
栞「はい・・・名前だけなら」
祐一「この穴からあゆがたくさん出てくるから、それをハンマーで思いっきり叩くんだ」
栞「・・・はい」
祐一「時間内に、どれだけたくさんのあゆを叩くことができるか競うゲームだ」
栞「はい・・・」
祐一「どうだ、簡単そうだろう?」
栞「・・・はい、それなら私にも出来そうです」
祐一「じゃあ、やってみるか」
財布の中からコインを数枚取り出して、投入口にガシャガシャと放り込む。
栞「あ・・・始まりましたよ」
液晶がきらびやかに点滅しながらゲームがスタートする。
栞「・・・緊張しますね」
ハンマーを両手でぐっと握り締めて、言葉通りに緊張した面持ちで筐体を見つめる。
栞「・・・え、えっと」
祐一「始まってるぞ、栞」
栞「わ、分かってます」
穴から、たくさんのあゆが出てくる。
栞「えーいっ!」
どがっ!
うぐぅ!
ばきっ!
うぐぅ!
どごっ!
うぐぅ!
ぐしゃああっ!(止め)
うぐっ・・・・・・・・・(断末魔)
祐一(・・・・ホントにこんなのが大流行してるんだろうか?)
すごく疑問に思ってしまった。
栞編 1月16日 完
あとがき:やべえ。あゆファンに殺されるよ、俺。っていうか、AIRのオープニング曲っていいっすね。