栞編 1月19日

今日は4時間で終わり。

おそらく、この教室の中で授業に集中している生徒は数えるほどだろう。

大半の生徒が午後からのことに想いを馳せている中、先生の声だけが淡々と響いた。

祐一(・・・・・・・1時に駅前)

ちなみに、俺もその大半の一人だった。

 

栞「あっ」

駅前のベンチにストールを羽織った女の子が、俺の姿を見つけて元気良く手を振る。

栞「こんにちは、祐一さん」

祐一「こんいちは」

ベンチのほうに歩いていると、栞も駆け寄ってくる。

栞「いいお天気になって良かったですね」

眩しそうに青い天井を仰ぐ。

栞「きっと、私の日頃の暗黒儀式のおかげですよね

祐一「待て!儀式って何だ!」

栞「儀式ですよー」

祐一「そんなもんやめろ!せめて普通の趣味を持て!」

栞「わー、祐一さんがひどいこと言ってますー」

白い肌の少女が、頬を膨らませて非難の声を上げる。

栞「・・・・・ちゃんと、生け贄(英名Sacrifice)も毎日捧げたのに

待てぇっ!生け贄って何だっ!

 

栞と並んで歩いていると、どこか覚えのある場所に出た。

栞「・・・祐一さん、この場所を覚えていますか?」

祐一「裏Kanonには出てこなかったから知らないぞ

栞「・・・・私のシナリオに関わるところを無視しないで下さい

祐一「自分で言うな。あゆが食い逃げして逃げ込んだ場所だな」

栞「そうなんですか?」

祐一「一応、本編ではそういうことになっている」

祐一「それで、栞と会ったんだよな?」

栞「はい」

穏やかに頷く。

栞「祐一さん、そのときのこと覚えていますか?」

祐一「ある程度は覚えてるぞ」

あゆと一緒に逃げてきたこの場所・・・。

小さな悲鳴が聞こえて、そして雪の上に座り込む少女と出会った・・・。

そして、あゆのたい焼き爆弾・・・

イギリス秘密諜報部とのパン食い競争・・・。

紙袋の中身を広げて、雪と同じくらい白い肌のその少女は、戸惑ったように俺達を見ていた・・・。

・・・・ちょっと待て!なんか今、違う思い出が入ってたぞ!イギリス秘密諜諜報部って何だ!

 

栞「ここです」

くるっと振り返って、満面の笑顔で大きく手を広げる。

その後ろで、さらさらと水の流れる音が規則的に聞こえていた。

祐一「・・・こんな場所があったのか」

そこは、絶えず爆音と兵士達の轟きが聞こえる戦場だった。

っておい待て!なんで戦場なんだ!っつーか、なんで後ろで水がさらさらと流れてるの!?

栞「私のお気に入りの場所です」

祐一「こんな場所をお気に入りにするなっ!」

栞「祐一さん、雪合戦しましょう」

祐一「その前に、ここから生きて帰れるかどうかを考えろ・・・」

爽快なデートだった。

 

1月19日 完

あとがき:裏Kanonにおける栞のハイセンスさがご理解頂けたでしょうか(爆)イギリス秘密諜報部は趣味です。