今日は4時間で終わり。
おそらく、この教室の中で授業に集中している生徒は数えるほどだろう。
大半の生徒が午後からのことに想いを馳せている中、先生の声だけが淡々と響いた。
祐一(・・・・・・・1時に駅前)
ちなみに、俺もその大半の一人だった。
栞「あっ」
駅前のベンチにストールを羽織った女の子が、俺の姿を見つけて元気良く手を振る。
栞「こんにちは、祐一さん」
祐一「こんいちは」
ベンチのほうに歩いていると、栞も駆け寄ってくる。
栞「いいお天気になって良かったですね」
眩しそうに青い天井を仰ぐ。
栞「きっと、私の日頃の暗黒儀式のおかげですよね」
祐一「待て!儀式って何だ!」
栞「儀式ですよー」
祐一「そんなもんやめろ!せめて普通の趣味を持て!」
栞「わー、祐一さんがひどいこと言ってますー」
白い肌の少女が、頬を膨らませて非難の声を上げる。
栞「・・・・・ちゃんと、生け贄(英名Sacrifice)も毎日捧げたのに」
待てぇっ!生け贄って何だっ!
栞と並んで歩いていると、どこか覚えのある場所に出た。
栞「・・・祐一さん、この場所を覚えていますか?」
祐一「裏Kanonには出てこなかったから知らないぞ」
栞「・・・・私のシナリオに関わるところを無視しないで下さい」
祐一「自分で言うな。あゆが食い逃げして逃げ込んだ場所だな」
栞「そうなんですか?」
祐一「一応、本編ではそういうことになっている」
祐一「それで、栞と会ったんだよな?」
栞「はい」
穏やかに頷く。
栞「祐一さん、そのときのこと覚えていますか?」
祐一「ある程度は覚えてるぞ」
あゆと一緒に逃げてきたこの場所・・・。
小さな悲鳴が聞こえて、そして雪の上に座り込む少女と出会った・・・。
そして、あゆのたい焼き爆弾・・・。
イギリス秘密諜報部とのパン食い競争・・・。
紙袋の中身を広げて、雪と同じくらい白い肌のその少女は、戸惑ったように俺達を見ていた・・・。
・・・・ちょっと待て!なんか今、違う思い出が入ってたぞ!イギリス秘密諜諜報部って何だ!
栞「ここです」
くるっと振り返って、満面の笑顔で大きく手を広げる。
その後ろで、さらさらと水の流れる音が規則的に聞こえていた。
祐一「・・・こんな場所があったのか」
そこは、絶えず爆音と兵士達の轟きが聞こえる戦場だった。
っておい待て!なんで戦場なんだ!っつーか、なんで後ろで水がさらさらと流れてるの!?
栞「私のお気に入りの場所です」
祐一「こんな場所をお気に入りにするなっ!」
栞「祐一さん、雪合戦しましょう」
祐一「その前に、ここから生きて帰れるかどうかを考えろ・・・」
爽快なデートだった。
1月19日 完
あとがき:裏Kanonにおける栞のハイセンスさがご理解頂けたでしょうか(爆)イギリス秘密諜報部は趣味です。