栞「祐一さんっ」
俺の姿を雪の中で見つけて、元気良く手を振る。
栞「ちょっとだけ遅刻ですよー」
祐一「悪い。ちょっと教室にいたんだ」
栞「ところで、今日は体育館でなにかあるんですか?」
ここからは見えないのだが、栞が何気なく体育館のある方向を見る。
祐一「なんでも、放課後に舞踏会があるらしい」
栞「あ・・・昨日準備していた行事って、これのことなんですね」
祐一「飾りつけとかしてたか?」
栞「すごかったですよー」
栞「大きなシャンデリアもありましたし、白い布もたくさん運びこまれてました」
両手を広げて、大きなシャンデリアを表しながらそのときの様子を話す。
祐一「ふーん、やっぱ本格的なんだな」
栞「最初、KKK団の秘密集会かと思っちゃいました」
祐一「そんなわけ無いだろっ!」
今時KKK団なんて古いぞ・・・。
栞「今日は、スケッチブックを持ってきました」
祐一「スケッチブック?」
栞「それと、道具一式持ってきました」
祐一「ああ、確か俺の似顔絵を描いてくれるんだよな?」
栞「ホントに、あんまり上手くないですけど・・・・・」
栞「あ、祐一さん、動かないでくださいっ」
栞は、どこからともなく空色のスケッチブックを取り出していた。
祐一「似顔絵だろ?だったら多少動いたって・・・」
栞「ダメですっ」
祐一「どうして?」
栞「止まっていないと、このコンテに呪われるんです」
祐一「絶対動きません」
っつーか、そんなコンテを使うな!
祐一「普段は誰を描いてるんだ?」
栞「・・・そうですね」
栞「家族、です・・・」
栞「でも、私がスケッチブック持っていくと、みんな逃げるんですよ」
そりゃ、逃げるだろう。呪われたくないものな。
栞「・・・・出来ました」
ぱたん、とスケッチブックを閉じる。
祐一「お。できたのか?」
栞「・・・見ます?」
祐一「もちろん見るぞ」
栞「・・・でも、見ると呪われますよ?」
祐一「・・・・・・」
栞の描いた絵は、永久に謎のままになりそうだった。
放課後、公園にて〜
栞「今、ちょっと思ったんですけど・・・・・」
栞「今の私達って、ドラマでよくありそうなシチュエーションですよね?」
祐一「栞、ドラマとか見るのか?」
栞「私、こう見えても放送されてるドラマは全部見てますから」
祐一「ちょっと意外だな」
栞「そうですか?」
祐一「何となく、な」
栞「家にいると、テレビを見るか闇鍋を作ることしか、やることがないです」
祐一「ちょっと待てっ!闇鍋ってなんだ!」
栞「薬とか入れると、美味しいんですよ・・・・・」
っていうか、混ぜるなっ!
祐一「・・・それで、ドラマだとこれはどんなシーンなんだ?」
栞「・・・そうですね」
栞「ありがちですけど、金だらいが落ちてきます」
祐一「そんなわけあるかっ!」
栞「それで、音楽が鳴って、リーダー格の人が「逃げろ!」って言うんですよ」
祐一「ダメだこりゃ」
ガンッ!
本当に金だらいが落ちてきた。
栞編 1月20日 完
あとがき:えー、栞のハイセンスさを再確認です。っつーか、栞の見てるのって、絶対ドラマぢゃないよね。