栞編 1月20日

栞「祐一さんっ」

俺の姿を雪の中で見つけて、元気良く手を振る。

栞「ちょっとだけ遅刻ですよー」

祐一「悪い。ちょっと教室にいたんだ」

栞「ところで、今日は体育館でなにかあるんですか?」

ここからは見えないのだが、栞が何気なく体育館のある方向を見る。

祐一「なんでも、放課後に舞踏会があるらしい」

栞「あ・・・昨日準備していた行事って、これのことなんですね」

祐一「飾りつけとかしてたか?」

栞「すごかったですよー」

栞「大きなシャンデリアもありましたし、白い布もたくさん運びこまれてました」

両手を広げて、大きなシャンデリアを表しながらそのときの様子を話す。

祐一「ふーん、やっぱ本格的なんだな」

栞「最初、KKK団の秘密集会かと思っちゃいました

祐一「そんなわけ無いだろっ!」

今時KKK団なんて古いぞ・・・。

 

栞「今日は、スケッチブックを持ってきました」

祐一「スケッチブック?」

栞「それと、道具一式持ってきました」

祐一「ああ、確か俺の似顔絵を描いてくれるんだよな?」

栞「ホントに、あんまり上手くないですけど・・・・・」

 

栞「あ、祐一さん、動かないでくださいっ」

栞は、どこからともなく空色のスケッチブックを取り出していた。

祐一「似顔絵だろ?だったら多少動いたって・・・」

栞「ダメですっ」

祐一「どうして?」

栞「止まっていないと、このコンテに呪われるんです

祐一「絶対動きません」

っつーか、そんなコンテを使うな!

祐一「普段は誰を描いてるんだ?」

栞「・・・そうですね」

栞「家族、です・・・」

栞「でも、私がスケッチブック持っていくと、みんな逃げるんですよ」

そりゃ、逃げるだろう。呪われたくないものな。

 

栞「・・・・出来ました」

ぱたん、とスケッチブックを閉じる。

祐一「お。できたのか?」

栞「・・・見ます?」

祐一「もちろん見るぞ」

栞「・・・でも、見ると呪われますよ?

祐一「・・・・・・」

栞の描いた絵は、永久に謎のままになりそうだった。

 

放課後、公園にて〜

栞「今、ちょっと思ったんですけど・・・・・」

栞「今の私達って、ドラマでよくありそうなシチュエーションですよね?」

祐一「栞、ドラマとか見るのか?」

栞「私、こう見えても放送されてるドラマは全部見てますから」

祐一「ちょっと意外だな」

栞「そうですか?」

祐一「何となく、な」

栞「家にいると、テレビを見るか闇鍋を作ることしか、やることがないです」

祐一「ちょっと待てっ!闇鍋ってなんだ!」

栞「薬とか入れると、美味しいんですよ・・・・・

っていうか、混ぜるなっ!

祐一「・・・それで、ドラマだとこれはどんなシーンなんだ?」

栞「・・・そうですね」

栞「ありがちですけど、金だらいが落ちてきます

祐一「そんなわけあるかっ!」

栞「それで、音楽が鳴って、リーダー格の人が「逃げろ!」って言うんですよ

祐一「ダメだこりゃ」

ガンッ!

本当に金だらいが落ちてきた。

栞編 1月20日 完

あとがき:えー、栞のハイセンスさを再確認です。っつーか、栞の見てるのって、絶対ドラマぢゃないよね。