栞編 1月29日

百花屋にて。

栞「綺麗なお店ですね」

祐一「綺麗なだけじゃないぞ。うまくてリーズナブルだ」

栞「至れり尽せりですね」

カランッ・・・とドアベルを鳴らしながら、店内に入る。

栞「いっぱいですね・・・・」

感心したように店内を見渡す。

放課後の百花屋は、学生服姿の客で埋め尽くされていた。

中には、俺達と同じ制服もあった。

幸い、開いてる席があったので、そこに案内される。

栞「座れましたね」

おしぼりを持って、栞がほっと一息つく。

祐一「この時間帯が一番混むみたいだな」

栞「・・・祐一さん」

真剣な表情でメニューを見ていた栞が顔を上げる。

栞「確か、今日は祐一さんのおごりなんですよね?」

祐一「まぁな」

栞「何を頼んでもいいんですか?」

祐一「もちろん」

栞「分かりました・・・・・・」

ぱたん、とメニューを閉じる。

店員「ご注文はお決まりでしょうか?」

祐一「俺はコーヒー」

栞「私は、この『ジャンボ闇鍋ミックスピザたい焼きデラックス』でお願いします」

店員「かしこまりました」

祐一「・・・・栞」

栞「はい?」

祐一「今のはなんだ・・・・・?」

栞「パフェです

祐一「んなわけあるかぁっ!

闇鍋って単語が出てきてたぞっ!

 

カランッ

ドアベルが鳴って、新しい客が入ってきたようだった。

香里「あたし、やっぱり帰るわ・・・」

名雪「わ。いきなり出ていかないでよ」

香里「あんまり、こういう店に入りたい気分じゃないのよ・・・」

名雪「ここの闇鍋がすっごくおいしいんだよ

香里「知ってるわよ。何度も来てるんだから」

名雪「だったら、ね」

香里「食欲ないって言ってるでしょ・・・・」

名雪「なくても食べないとダメだよ」

名雪と、そして香里だった。

栞「・・・・・」

栞は、複雑な表情で、新しく入ってきたふたりの客をじっと見つめている。

名雪「香里、少しは食べたほうが良いよ・・・・」

香里「ダイエットしてるのよ」

名雪「嘘だよ」

香里「そうね・・・名雪に嘘ついても仕方ないわね」

名雪「今日は私がおごるから、だから、ね」

名雪は、泣きそうな表情だった。

香里「・・・分かったわよ。付き合うわ」

名雪「うんっ」

名雪と香里は、俺達には気づいていない様子だった。

栞「・・・姉御

栞が、ぽつりと言葉を漏らす。

・・・って、なんで姉御やねん!

 

祐一「おーいっ、名雪」

席を立って、名雪に向かって手を振って見せた。

名雪「あれ?」

それに気づいた名雪が、驚いたような表情を覗かせる。

香里「・・・・・・」

同時に、香里も俺の姿を見つける。

そして、その向かいに座っている少女の姿も・・・

祐一「良かったら、一緒にどうだ?」

名雪「うん。わたしはいいよ」

祐一「香里は?」

香里「・・・・・・・」

栞「・・・・・・・」

香里「・・・分かったわ」

抑揚の無い声で呟く。

やがて、店員の案内で、ひとつのテーブルに4人が座った。

栞「・・・・・・」

名雪「えっと・・・初めまして」

祐一「いや、こちらこそ」

名雪「黙れテメェ

祐一「・・・・・はい」

何故だ?何故名雪がこんな恐ろしく!

栞「・・・初めまして」

遠慮がちに、栞がお辞儀をする。

名雪「わたしは、水瀬名雪。こっちは、美坂香里」

栞と香里の関係を知らない名雪が、香里も一緒に紹介する。

栞「私は・・・栞です」

名雪「栞ちゃん、一年生だよね?」

栞「はい・・・・」

名雪「私達は2年生だよ・・・って、そんなの言わなくてもリボンで分かるよね」

栞「はい・・・・」

祐一「挨拶は良いから、何か注文したらどうだ?」

名雪「あ、そうだね」

香里「・・・・」

名雪がいつものごとく闇鍋を注文して、香里はオレンジジュースを頼む。

・・・・・いつもなのか?

名雪「栞ちゃんは何を注文したの?」

栞「えっと、ジャンボ闇鍋ミックスピザたい焼きデラックスです

名雪「わたし、一度食べてみたかったんだ

ホントかよ・・・・

栞「それでしたら、みなさんで食べませんか?」

名雪「わ。いいの?」

栞「はい、祐一さんのおごりですから」

名雪「祐一、お金持ち」

祐一「いや、別にお金持ちなわけじゃないけど・・・・」

栞「でも、祐一さん。何を頼んでも良いって」

名雪「え?何を頼んでも良いの?」

祐一「ちょっと待て!」

名雪「わたし、イチゴの闇鍋も頼もうかな」

おいなんだそれ!?イチゴ闇鍋って!?

栞「おいしそうですね

美味しい訳ねぇだろ!

 

栞「あ、来ましたよ」

やがて、注文の品が次々とテーブルの上に並べられる。

栞「おっきいですね・・・・」

テーブルの中央には、巨大な土鍋が置かれていた

バケツくらいはありそうな土鍋に、たっぷりと何かが入っている

闇鍋だからだろう。

そして、一つだけ判明する物質有り。

・・・・ピザたい焼き。

・・・・・・普通に食っても不味いのに・・・

 

夕暮れの商店街を、4人で歩いていた。

名雪はずっと栞と話をしているし、香里はひとことも口をきかなかった。

名雪「大丈夫、栞ちゃん?」

栞「ちょっと苦しいです・・・・」

祐一「食い過ぎだ」

栞「でも、楽しかったです」

栞「皆で一緒に食事が出来て、本当に嬉しかったです」

名雪「そうだ、今度一緒にお昼食べようよ」

栞「私でもいいんですか?」

名雪「もちろんだよ。だって祐一の大切な人だもん」

栞「・・・え」

思わぬ言葉に、栞が恥ずかしそうに俯く。

祐一「なんなんだ、その大切な人ってのは・・・」

名雪「え?だって祐一の彼女でしょ?」

栞「え、えっと・・・」

名雪の言葉に、栞が真っ赤になって俯いている。

俺としても、こうもはっきり言われると、何も言葉が無かった。

名雪「可愛い子だよね。祐一にはもったいないよ」

栞「あ、あの・・・・」

祐一「ほっとけ」

香里「ほんと、見る目が無いわね」

今まで一言も喋らなかった香里が、不機嫌そうに呟く。

祐一「余計なお世話だ」

栞「・・・・・・」

一度も目を合わせようとしなかった香里が、妹の顔をじっと見つめている。

香里「余計なお世話じゃないわよ・・・・」

香里「だって、栞は・・・」

香里「あたしの妹なんだから・・・・・」

栞「・・・・え」

香りの口から出た言葉・・・・

祐一「香里・・・何もオチが無いぞ

香里「無きゃ悪いの?」

祐一「裏Kanonは少しでも感動しちゃダメなんだぞ。笑いは無いのか笑いは」

香里「知らないわよ。作者のスキルが足りないのね

作者「お前らこそ余計なお世話だっ!」

 

栞編 1月29日 完

あとがき:うぐぅ、どうしても変える事は出来ませんでした・・・すいません。もっとスキル上げます。