夏と海とあゆとたい焼きと〜後編

「ふぃ〜、やっと着いたか」

そう言うと祐一は持ってきた道具を降ろした。

祐一達の住んでいるところは北国だが、海に沿っているので海岸はある。

「まずは・・・・・っと」

持ってきた道具はパラソルとシートと秋子さんが作ってくれたお弁当。特にパラソルは海の定番だ。

パラソルを強く砂場に刺し、その下にシートと弁当箱を置く。

「祐一君っ、早く早くっ」

あゆが盛んに祐一を急かす。

「分かった分かった。とりあえず、水着に着替えて来い」

「うんっ♪」

そう言うとあゆは更衣室の方へ走っていった。

「しっかし、見事なまでに誰もいないな・・・・・・・・」

見渡す限り誰もいない。半ば貸し切りのようなものである。

「さて、俺も着替えるか・・・・・・」

誰も見ていないのを良いことにその場で服を脱ぎ始める。

およそ20秒で着替えが終了した。

こういう時、男は楽である。

脱いだ服をたたんでしばらく待つと、着替え終えたあゆがやってきた。

普通の水着である。(いや、あえて細かいことは言わない。だって作者が女の子の水着の知識ないもん)

それでも、祐一はしばしみとれてしまった。

(か、かかか、可愛い・・・・・・)

「どうしたの、祐一君?早く行こっ」

「え?あ、ああ、そ、そうだな」

「・・・・なんでどもってるの?」

「よし泳ぐぞ」

「うぐぅ、無視しないでよ〜」

走っていってそのまま海に入る二人。

のはずだった。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・?」

あゆが、波打ち際で突然止まった。

祐一は止まれずにそのまま海に入ってしまった。

あゆは、恐る恐る海に入ろうとしている。

ザァーーッ

少し大きい波がちょっと来ただけで、あゆはびくっとして後ずさってしまう。

「・・・・・・・・」また少しすつ海の中に入ろうとするあゆ。

「・・・・・あゆ、お前まさか」

「わっ!」

また波が来て、逃げ惑うあゆ。

「・・・・うぐぅ・・」

「・・・・はぁ」

 

ぷーーーっ!

祐一は、こんなこともあろうかと持ってきておいた浮き輪を膨らまし始めた。

何故持ってきていたかというと、祐一曰く「なんとなく」というだけだ。

「ごめんね、祐一君・・・・・・」

「いや、気にするな。・・・・・しかし、かなづちのくせに海行きたいなんて言うか普通?」

もともと、言い出したのはあゆだった。

「うぐぅ・・・・だって、海って行った事無かったんだもん・・・・・・」

「ま、いいけどさ・・・・・・」

祐一としては、あゆの水着姿を見ることが出来ただけでも満足だった。

やがて、浮き輪が完全に膨らんだ。

「よし、出来た。これで泳げるな」

「わあっ♪」

「せっかく来たんだから、かなづちを直すまで泳ぐか」

「うん・・・・・頑張る」

 

「・・・・・・・・・」ざぶざぶ。

「まっ、待ってよ祐一君〜」ばしゃばしゃ・・・・・

「・・・・・・・・・」ざぶざぶ。

「うぐぅ〜・・・・・・・・」ざぁー・・・・・・

「・・・・・・・・・」ざぶざぶ

「待ってってば〜」ばしゃばしゃ・・・・・・

「・・・・・・・・・」

「うぐぅ〜・・・・・・・・!」ざぁー・・・・・・

「・・・・・・はぁ〜」

思わず祐一は、ため息をついた。

浮き輪をしたあゆだが、バタ足すらままならない状況だ。

おまけに、今日は少し波が強いのか、波が押し寄せてくると、たちまち浜辺まで押し戻されてしまう。

その繰り返しだった。

「いいかげんこっちに来いよ」

「ボクだってそっちに行きたいよ〜」半分泣きながらあゆが答える。

「しょうがない・・・・・・」ざぶざぶ

祐一はあゆを浮き輪ごと沖の方へ持ってきた。

「うぐぅ〜・・・・足がつかないよ・・・」

「お前はどっちがいいんだ」

「だって〜〜〜」

ふと、祐一は良いことを思いついた。

このままこっそり浜まで戻ってはどうだろうか。

あゆが必死になってかなづちが治ってくれるかもしれない。

自分に都合の良いことばかりを思いついた祐一は、さっそく実行に移す。

まず、海中に潜る。

「・・・・あれっ?祐一君?」

あゆは必死になって探すが、海中には顔がつけられない。

祐一はそのまま潜水をして、少し離れたところで顔を出した。

それをあゆが見つけて

「ゆ、祐一君〜!怖いよ〜」かなり涙声になっている。

多少心が痛んだが、これもあゆのかなづちを治すためだ。

しかし、この時祐一は重大なことに気づいた。

沖から、かなりの大きさの波が迫っていることに。

「待ってよ、祐一君〜」あゆが手足をばたつかせながらゆっくりと泳ぐ。

あれでは波にさらわれる可能性が高い。

「くそっ!」祐一は迷うことなくあゆの元へ泳いでいった。

「あっ、祐一君。戻ってきてくれた・・・」

「あゆ、説明は後だっ!浜まで戻るぞっ!」

「え?でも、ボクもう少しで泳げそうな予感がするんだよ」

「いいから来いっ!遭難するぞっ!」

「え・・・・・・・?」

あゆが振り向くと、後ろで波があゆを見下ろしていた。

[わぁーーーーーーーーーーっ!」

「おい、こらっ、暴れるなっ!」

祐一はあゆを抱えたまま必死で泳いだ。

「ぐお・・・・・・・・・・」

浜まであと100メートルはある。間に合うかどうかは微妙だった。

「あっ、祐一君、ボク、泳げるよっ」

もちろんそれは、祐一があゆを抱えてるからなのだが。

「だぁーーーーーーーーっ!」

ザッパァァァァァァンッ!

 

「・・・・・・・祐一君」

「・・・・・・・・・・・・・」

「祐一君てばぁ・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「うぐぅ・・・・祐一君が、死んじゃったよぉ・・・」

「・・・人を勝手に殺すな」

「わっ!・・・祐一君が生き返った・・・・」

「だから、死んでないって」

あの後、すんでのところで波を回避した祐一は、浜まで来るとそのまま力尽きてしまったのだ。

気づくと、波打ち際で寝ていた。

「でも、面白かったね♪」

「・・・・・俺は、二度と経験したくないぞ」

「でも、嬉しかったよ」あゆが微笑む。

「祐一君が、助けに来てくれて」

「・・・・・・・・・・・・・・」

ぼっ。

祐一は、朝に続いて顔が熱くなった。

「・・・・・あゆがいないと、人生がつまらないからな」

今度は、あゆが赤くなる番だった。

「・・・・祐一君、恥ずかしいよ・・・・・」

「朝のお返しだ・・・・・・・」

「うん・・・・祐一君、いじわるだもんね・・・・」

その言葉を最後に、あゆは俯いてしまった。

祐一は、恥ずかしいことだらけで頭がパニックだった。

 

そのころ、水瀬家では。

「おかあさん、祐一達、いまごろうまくやってるかな」

なぜか家にいる名雪が訊く。

「そうねえ」秋子さんが笑って、頬に手をやる。

実は、名雪は今日は部活が休みだったのだ。

それを祐一が知ったのは、翌日のことだった・・・・・・・・

あとがき:ぐふっ(吐血)。さ、最後が・・・・・最後の締めがダメダメでした。一応ほのぼのしてるんですかね・・・・・。それにしても女の子の水着の資料集めるべきだったかな・・・・・・・、でも、普通にそんなことしたら電波系って思われちゃいますね(笑)