裏CLANNAD 智代編 4月21日


登校していく生徒の中で、ひとり立ち止まっている姿が目を引く。
智代だった。
じっと、桜の木を見上げていた。
俺もその場で、同じようにしてみる。
雨ですべての花びらが散ってしまったのだろう。今はもう、葉桜となっていた。
智代に目を戻す。
智代は、時間を忘れているかのように、桜に見入っていた。
 朋也(遅刻するぞ…)

と思っていると、智代はやおら、釘と藁人形を取り出した。

え?

俺が呆気に取られているうちに、智代は藁人形を………

コーンッ!!カコーンッ!!カコーンッ!!

物凄い勢いで打ち付けだした。

 朋也(な………なにやってんだあいつ)
とりあえず、止めなければ。
 朋也「何のんきにしてるんだ。遅刻するぞ」

って、ここだけテキスト通りかよ俺!!

 智代「気にするな。儀式の最中だ」
 朋也「いや、そりゃ見れば分かるけど。っていうかそれ、丑三つ時にやるもんだろ?」
俺の知識が間違っていなければ、だが。

 智代「大丈夫だ。我が家の流派はこれが主流なんだ

そんな流派、聞いたことありません。


ひとり学食に向かう。
正面から歩いてくる女生徒のグループ。
その中に智代の姿があった。
胸をぴんと張って、笑顔で何かを話している。
よく馴染んでいたし、それどころか輪の中心になっているようにさえ見えた。
乱暴なところがあっても、それ以上に人としての魅力があるのだろう。
今なら、なんとなくそれがわかる。
だから、女の子らしくないことを指摘して傷つけてしまったことを申し訳なく思った。
と、話し声が聞こえてくる。

 智代「・・・そうだ。できれば三・三・七拍子のリズムで人形に釘を打つのが望ましい

 智代「そうすれば、呪いの成功率はだいぶアップするぞ

まだその話かよ!!


 智代「あの馬鹿は今日はいないのか」
智代は春原のことを訊いた。
 朋也「遅刻だろ」
 智代「もう昼だぞ」
 朋也「そういう奴なんだよ」
 朋也(早く会話を終わらせてくれ…)
 朋也(おまえの連れの視線にさらされているのは辛いんだぞ…)
 智代「家は遠いのか?」
まだ話は続いた。
 朋也「誰の」
 智代「あの馬鹿だ」
 朋也「遠いも何も寮だから、すぐそこだ」
 智代「よしっ」
言って、俺の手を掴んでいた。

 智代「今から家を燃やしに行くぞ

 朋也「燃やすなっ!!

寮ごと燃やす気か、コイツは。

 智代「仕方が無い、じゃあ呪いに行くぞ

 朋也「それも止めろ

 智代「それもダメか。・・・じゃあ、お前を呪うか

 朋也「それも止め・・・ぐああああっ!?痛いっ!!頭が痛いっ!!」

カコーンッ!!カコーンッ!!カコーンッ!!

や、止めろって!!その辺の痛いッ!!壁にぐあっ!!人形を打ち付けるのはいてぇっ!!やめくださいぐおっ!!


 朋也「それよりも、これさ」
俺は掴まれたままの腕を持ち上げる。
 智代「どうした」
 朋也「いつまで掴んでるんだよ」
 智代「放したら、おまえ、逃げるつもりじゃないのか?」
 朋也「ここまで来たら、付き合うって」
 智代「信じていいのか?」
 朋也「俺って、信用ないのな」
 智代「…わかった。信じよう」
ようやく腕を解放される。
ずっと掴まれていた部分だけ、汗をかいていた。
 男子生徒「おっ、岡崎じゃん」
通り過ぎる男子グループの中に見知った顔があった。
 男子生徒「昼メシ食ったか? 俺たち、これからだけど」
 朋也「あ、食ってねぇや」
 男子生徒「じゃ、いくか?」

カコーンッ!コーンッ!!カコーンッ!!!

 朋也「痛ッ!!……悪いけど、パスあ痛ッ!!ごめんってば!!いてぇ!!

 男子生徒「あ、そ」
そのまま一団は通り過ぎていく。
 智代「言っているそばから、油断ならない奴だな…」

だからって毎回毎回人形に釘を刺すなあっ!!


 智代「ほら、お茶だ。熱いから気をつけろ」
 智代「ちゃんと座って食べるんだぞ」
俺に大きな湯飲みを渡すと、いびきをかき続ける春原の枕元に跪く。

そしておもむろに千枚通しを春原の脳天にブスリと刺す

春原「ぐはっ・・・・・・!!」

そのまま、白目を剥いて春原は一言も喋らなくなった。

脳天には、千枚通しが刺さったまま。

 智代「………起きないな」

たぶん、もう一生起きないと思うぞ………。


裏CLANNAD 智代編 4月21日 終
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ひとこと:
またひとつ、智代のキャラが増えて嬉しい限りですねー(ぇ)
っていうか、最近非常に更新が遅くて申し訳ありませぬ。
忙しいのもありますが、結構だらけていることもありますので、お怒りのメールやら叱咤激励やらを送っていただけると、たぶんそれなりに頑張ります。
それ以外にも、感想などのメール、お待ちしておりますよ〜。
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