裏CLANNAD 智代編 4月23日


カシャァッ、とカーテンが開け放たれる音。
 声「朋也、朝だ。遅刻するぞ、起きろ」

瞼を突く光と…けろぴーの声。

けろぴーの声?

かつてなかったその状況に俺は驚いて、飛び起きる。
 けろぴー「起きたか。案外、寝起きはいいんだな」

いや誰ですかアンタ。

 けろぴー「だが、寝相は悪いようだ。寝癖がついているぞ」

両生類独特のぬめぬめした手で、頭を撫でられる。

って、やめろっ!!気持ち悪いしっ!!てか、なんでけろぴーなんだっ!!


 朋也「おまえさ、悪い奴には思えないよ」
 朋也「本当に噂は本当だったのか?」
 智代「言っただろ。概ね、本当だと」
 智代「だが、多少の脚色はされているかもしれない」
 朋也「一晩で、ひとつの学校を廃校に追い込んだとか」
 智代「………」
 智代「脚色されすぎだ」
 朋也「だろうな。じゃあ、そんなにすごかったわけじゃないのか」

 智代「うん、せいぜい、町を対象にした同時多発テロだ」

いや、さっきよりひでぇよ!!

 智代「だから、脚色されすぎだと言っただろう

あ、そっちの意味ですか。


 朋也「でも、どうして、そんなに荒れていたんだ」
 智代「荒れることに理由なんてない」
 智代「だが、荒れないことには理由はある」
 智代「思春期の人間は、理由がなければ、誰でも荒れるんだ」
 智代「そんなものだと思う。違うか」
 朋也「初めて聞いた話だが、合ってるような気もするな」
 智代「だろ」
 智代「そして、私は少しばかり強くて、目立ってしまっただけだ…」
 朋也「目立ちすぎだ。町の伝説として語り継がれていくような女がどこにいる」
 智代「それは非常に気が滅入る事態だな…」
 智代「でも、さっきも言ったように、挽回する」
澄んだ目を前に向けた。
こうして見れば、普通の女の子だ。
けど、俺は目の当たりにした。智代を前にした、智代を知る者の怯えようを。
そんな自分から、智代は遠く歩き出そうとしている。
…前向きに。
ずっと同じ場所にいる俺とは、まったく違う生き方だった。
約束通り、一緒に居るのは今だけになるだろう。
いつか笑い話になるほど、一緒に過ごした時間は違和感のあるものに変わっていく。
それほどまでに俺たちの今の関係は、奇跡的で、滑稽だった。
目指す場所がまったく違うのだから、当然だった。
 朋也「じゃ、おまえの荒れなくなった理由はなんだ」
 智代「………」
 智代「聞きたいか」
 朋也「ああ、聞きたいね」
 智代「それは内緒だ」
 朋也「もったいぶるなよ」

返事代わりに、千枚通しが俺の脳天に突き刺さる。

 智代「いいじゃないか。秘密ぐらい持っていたほうが、女の子らしいだろ」

この行為そのものは女の子らしさからは180度違うけどな。


歩を止め、智代が見上げていた。
 朋也「どうした」
 智代「いや、なにもだ」
言って、視線を俺に向ける。
智代の見ていた先は、桜の木だ。

というか、そこに打ち付けられている藁人形。

 朋也「前にも、おまえ、じっと見上げていたよな」
 朋也「そんなに桜、好きなのか?」
 智代「そうだな。好きになったのかもしれないな」

にやり。

・・・藁人形を見つめてにやにやすんな。


 男子生徒「おい、見ろよ」
誰かが、窓の外を指さしていた。
俺は何気なくその方向に視線を移す。
校門前に、他校の生徒が集まっていた。
見るからに柄が悪い。
 朋也「智代…」
 智代「ああ」
わかっている、というように頷いた。
 朋也「なんか、人数、多いんだけど」
 智代「昨日の、工業高校の奴らかも…」
 朋也「なんか、勘違いされたのか?」
 智代「恐らく…」
 朋也「やられる前にやれってか…」
春原の後先考えない無鉄砲っぷりが発揮された事態だった。
 朋也「校舎に向かってきてるんだが…」
 朋也「なんかさ…やばくねぇ?」
 智代「うん…大事(おおごと)になりそうだ…」
 朋也「生徒会に入るどころかさ…」
 朋也「…停学…果ては退学?」
 智代「………」
 智代「手伝え、朋也っ」
智代が珍しく慌てた様子で駆けだした。
鞄を投げ出して、俺も後を追う。
 朋也「下校時間だから、野次馬が増えるぞ」
 智代「やっかいだな…」
 朋也「校舎の中はまずいだろ…」
 智代「中庭がいい」
 朋也「ああ、俺もそう思ったところだ。おまえ、先に行って待ってろ。俺が誘導する」
 智代「わかった」
智代と俺は廊下で二手に分かれた。
 朋也「飽きないよな…あいつと居るとっ」
教師の行動よりも早くすべてを終わらせなければならない。
俺は急ぐ。
階段を駆け下り、昇降口にその一団を見つけると、大声で叫んだ。
 朋也「てめぇらの仇は、こっちだ、ばーかっ!」
その中の何人かが、鬼のような形相で俺を捕まえようと迫ってくる。
 朋也(こえぇっ…)
中庭までの最短距離を、俺は駆けた。
 朋也「ぜぇ…ぜぇ…」
 朋也「ほら、お出ましだっ」
 智代「礼を言うぞ」
 智代「が…この人数か…」
 智代「時間がかかりそうだな…」
テキスト通りなら、この後春原なり風子なりが来るんだが………
 智代「…仕方ない。魔法を使うか

は?

 智代「………かー…めー…はー…めー…

いやちょっと智代さん、それ魔法じゃないし!!

 智代「波―――――!!


結果、町が一つ消し飛びました。

裏CLANNAD 智代編 4月23日 終
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ひとこと:
遅ッ!!(自分に対するツッコミ)
うん、色々と言い訳はあるけれど、とりあえずごめんなさい。
完全に不定期連載になっちまってる件については謝ります。
そろそろ真面目に更新したいです・・・ハイ。
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