裏CLANNAD 智代編 4月26日
翌朝。
智代は、寮のほうには向かおうともせず、足を止めた俺の隣に立っていた。
智代】「(春原を)刺しに…いくのか？」
俺の顔色を窺うようにそう訊いた。
右手には千枚通し。
いつもよりよく研いである。
………刺す気満々か。
朋也「いや…もう、いいだろ」
智代「うん…私もそう思う………………………チッ！！」
舌打ちしたよね？今。
土曜だったから、四時間目の授業が終わると、ＨＲの後、放課となる。
春原「よっし、終わったぁっ」
春原が元気よく立ち上がる。
春原「明日は休みだしなぁ、楽しいこといっぱいできるぞぅ」
春原「あんなことや、こんなことっ」
春原「…はは」
春原「全部、ひとりぼっちでするかぁ！」
同情を引こうとする見え透いた作戦だった。
春原「じゃあな、マイフレンド…」
朋也「さっさと帰れ」
春原「けっ、てめぇなんか、智代とくっついちまえ！」
捨て台詞を吐いて、飛び出していった。
朋也（………）
朋也（…もう、そうなってるが）
教室に人気がなくなる頃、智代は現れた。
智代「土曜だな…」
朋也「ああ」
俺も鞄を持って、立ち上がる。
朋也「どうする？」
智代「朋也が決めてくれ」
朋也「用事は？」
智代「今日はない」
朋也「明日はあるのか？」
智代「うん…明日と火曜の休みは、先約があるからダメだ」
智代「家族でちょっと遠出をする。八甲田山まで」
日帰りできなくね？
と思ったが、相手は智代だ。たぶん吹雪に遭っても無傷で戻ってくるだろう。
智代「朋也と付き合う前から決まっていたことだから…許してほしい」
朋也「ああ、そんなことに文句言わないよ」
智代「初めてふたりで過ごせる休みだったのにな…」
朋也「いいって。そのぶん、今日、一緒に居てくれたらな」
智代「ああ、そのつもりだ」
智代「とは言っても、暗くなるまでだぞ」
朋也「ああ」
朋也「じゃあ…とりあえず昼飯だな」
智代「うん」
朋也「どこか、食いにでるか？」
智代「任せる」
朋也「じゃ…そうだな…」
朋也「何かいい物でも食おう」
智代「うん」
学校前の定食屋。金に余裕がある時は、よく利用する店だ。
ドアを引こうとしたところで、俺は動きを止めてしまう。
…ガラスの向こうに見えた人物の顔を見て。
智代「どうした？ 入らないのか？」
朋也「え？ あ、ああ…」
もう一度、店内を覗く。
朋也（春原…おまえ…）
…ひとりで寂しそうに、プルトニウム定食を食べていた。
どんなだよ。食うと、っつーか近くにいるだけで死ぬぞ！！
周りは、友達と連れ合う客ばかり。
朋也（しかも、春原…なぜおまえは四人席にひとりで…）
涙を誘う光景だった。
朋也「智代…」
智代「どうした？」
朋也「俺たち、幸せになろうな…」
智代「当然だ。付き合って、不幸になどなってたまるものか」
朋也「よし、じゃあ、ここはよそう」
智代「やめるのか？」
朋也「ああ、混んでるんだ。並んで座れそうもない」
智代「なら、仕方がないな…」
智代「で、どうするんだ？」
朋也「ここが駄目となるとな…近くに手頃の店、ないんだよな…」
智代「朋也…」
朋也「うん？」
智代「私は別になんだって構わないんだぞ」
智代「それこそ、プルトニウムでもな」
少しは構えよ！！
土曜の午後の学食は、人気がなく、静かだった。
智代「どうだ、学生生活の醍醐味をゆっくり味わえるってものじゃないのか？」
朋也「そうだな…こういうのもいいな」
学食に向かう途中…
廊下で幸村と鉢合わせになる。
幸村「ふむ…」
幸村「………」
幸村「いいのぉ…」
…何がだ。
幸村「若い頃を思い出す…」
しみじみ言って、通り過ぎていった。
朋也「普段はさ…人が多くて恥ずかしいけど、土曜の午後は空いてるからな」
朋也「ゆっくり学生生活の醍醐味を味わえるってもんだ」
智代「ははは…」
智代は笑い出した。
智代「うん、私も素敵な場所だと思うぞ」
朋也「そっか。普通の女なら、怒って帰るだろうけどな」
智代「相性もぴったりだな、私たちは」
朋也「かもしれないな」
朋也「食券買ってくるよ。智代は何がいい」
智代「私もいくぞ」
朋也「いや、おごりだから、俺ひとりでいく」
智代「気を使うな。おごってもらわなくても、いいぞ」
朋也「別に気を使ってるわけじゃない。義務だと思っただけだ」
朋也「最初のデートで、男のほうが女のほうにおごるってのはな」
智代「じゃあ…私はおごられるのが義務なのか…？」
朋也「女だったらな」
智代「なら、仕方がないな。おごられてやろう」
俺たちは、窓際の席で、ふたり並んで昼食をとった。
智代「美味いな、プルトニウム定食は」
って、食ってんのかよっ！！
あぁ、「裏」じゃなかったらかなりいい確率で死んでいるんだろうな、俺………。
裏CLANNAD 智代編 4月26日 終
智代編 4月25日へ 智代編 4月28日へ
ひとこと：
夢？
夢じゃないですよ、一週間たたずに更新ですよ？
なんか最近、社会人が非常につまんないので、その反動でこうなったのかもしれませんが。
ひとまず気力の続く限り、書き続けていきますよー。
裏CLANNAD-TOPへ SS一覧へ トップへ