裏CLANNAD 智代編 5月6日
カシャア!
 智代「朝だぞ、朋也」
 朋也「………」
 朋也「ああ…」
俺は刺すような光から目をかばいつつ、上体を起こした。
 智代「おはよう」
 朋也「ああ…おはよう」
 智代「おまえの寝覚めは、相変わらずだな」
 智代「久々の学校だというのにな」
 智代「少しはわくわくしないか?」
 朋也「しないね…」

 智代「どうして。また、一緒に『俺がお前でお前が俺で』ごっこができるじゃないか」

そんなごっこ遊び、いつやったよ!?

ていうか、それってどう考えても石段から転げ落ちるじゃねえか!!元ネタが古いよ!!
 智代「まあ、作者も元ネタは見たことないしな
そこ、ぶっちゃけない。

 智代「朋也、昼休みは、パンを買うな」
別れ際、智代はそう言った。
 朋也「どうして」
 智代「どうしても、だ」
その昼休み。
 智代「復帰祝いだ」
俺の机の上には弁当箱がふたつ並んでいた。
ひとつは豪勢なおかずを詰め合わせたもの。
もうひとつは、ご飯の上にカラフルなソボロが敷き詰めてあるもの。

 智代「さあ、どちらの弁当がいいか選べ。ちなみにハズレはニトログリセリン入りだぞ

なにその強烈すぎる復帰祝い。

とりあえず、豪勢な方を一つつまんで、隣にいた春原に強引にねじ込んでみた

ぼんっ。

隣から強烈な破裂音と、何やら香ばしい匂いが漂ってきたが、敢えて見ないことにする。

ああ、春原が生贄に捧げられたのも久しぶりだな。これでこそ裏CLANNADだ。

 声「あんたらねぇ…」
そこへ、身の毛もよだつ震えた声。
 杏「また、騒いだわね…」
 杏「これで、心おきなく、手ぇ出せるってものよ…」
 朋也「いや、おまえ、隣のクラスの委員長だろ」
 杏「椋の代わりよ…」
 杏「そう、椋の…」
 杏「あんた」
智代を見下ろす。
 杏「喧嘩が強いらしいわね」
 杏「正々堂々と勝負しなさいよ…」
いくら杏が凶悪だからといっても、素手で智代に敵うはずがない。
さらに言うと、裏CLANNADの智代は千枚通しの使い手だし。
廊下で向かい合う、杏と智代。
 春原「き、危険だ…僕がタイミングよく、間に割って入るよ…」
 朋也「絶対、おまえがふたりに蹴られるのがオチだからな」
 春原「でも、このままじゃ、力がぶつかりあった反動で、ふたりとも記憶喪失になっちまうよっ!」
 朋也「おまえ、漫画の読みすぎだからな」
 春原「でもさ、軽く世界が崩壊しそうだと思わない?裏CLANNADだと

あり得そうなのが嫌だな、すごく。

 春原「せかいの ほうそくが みだれる!!
FF自重しろ。

杏が先に仕掛ける。
踏み込んで、手刀を振るった。
いとも簡単に受け流される。
バキバキバキッ!!

その手刀が、廊下の柱にめり込んだ。

………杏、どんだけパワーアップしてんだお前。

上が駄目なら下。足を払いにかかる。
それもひらりとかわされる。
 「ぎゃあああぁっ!!」

足払いの衝撃波で、周りの一般生徒が巻き添えを食っていた。

いや、もう、何の格ゲーだよッ!?

智代は防御に徹している。
相手が先輩だから気を使っているのだろうか。
 朋也(違うか…春原以外に、この学校の相手に手をあげた試しはなかったな…)
そして、杏…。
どれだけ容易く受け流されようが、攻撃の手を休めない。
歯を噛みしめて…必死な形相で…。
何か、怒りじゃなく、どうしようもないやるせなさのようなものを智代にぶつけている気がした。
そもそも、どうして杏は、そんなに智代を目の敵にするのか…。
 智代「もう、よそう…」
智代がガードしていた腕を下げた。
いや、その行動は本編どおりだけど、裏CLANNADの杏相手に無防備で大丈夫なのかッ!?
その顔へ…
杏の平手打ちが入る寸前で止まった。
 朋也「………?」
見ると、杏の首筋に千枚通しがピタリと当てられていた。
 杏「ぐ………」
 智代「もう、よそう…

いや、怖ェよ智代さん。

つか、どんだけハイレベルな戦いなんだよ………


<中略〜野球部と勝負することになりました〜>

 主将「フォアボール!」
ついに、塁上が走者で埋まってしまった。
 主将「満塁だな」
 主将「最後ぐらいは、俺が立つか…」
 主将「谷口、審判変われっ」
 谷口「はいっ」
主将が自ら、バッターボックスに立つ。
 春原「おまえ、ここでフォアボール出したら、一生、石毛と呼んでやるぞ!」
 智代「誰かわからないぞ…」
 春原「ノミの心臓だぞ!」
 智代「それはなんか嫌だ…」
 智代「朋也っ」
智代が俺を呼んだ。
 朋也「タイムだ」
俺は智代の元まで駆けつける。
 朋也「なんだ、どうした」
 智代「あいつがムカつくんだ…」
 朋也「わかってる。落ち着け」
 智代「落ち着けと言われても、無理だ」
 智代「もうやめにしたい…」
 朋也「智代…」
 智代「別に投げるのが嫌だとかじゃない」
 智代「あいつが嫌なんだ…」
 智代「いちいち癇に障ることを言う…」
 智代「そうだ。朋也。おまえが、受けてくれ」
俺は返答に詰まる。
俺の利き腕は肩が上がらなかった。親父との喧嘩が原因で。
だから球を投げ返すことができない。
受けるだけならできるだろうけど…。
でも、もしそうしたとして…
智代が俺に遠慮して、キャッチしやすい球を投げてしまわないだろうか。
それはバッターにとっては絶好球となる。
それでもいいのか…?
 朋也「悪い、智代…俺、肩が使えないんだ」
 智代「え? 怪我をしてるのか?」
 朋也「昔にな。それっきり、上がらない」
 智代「そうだったのか…悪い」
 朋也「いや…」
 朋也「じゃ、こうすればどうだ」
 智代「なんだ」
 朋也「春原の顔面めがけて投げろ」
 朋也「春原を吹っ飛ばす気持ちでな」
 智代「回りくどいな…」
 智代「あいつの運動神経の良さはわかる。いくらなんでも、無理だと思う」
 智代「ミットで防がれるのがオチだ…」
 朋也「本当に吹っ飛ばせ、なんて言ってない。そういう気持ちで投げろ、と言ってるんだ」
 朋也「ミットなんて見るな。憎たらしい春原の顔だけ見てろ」
 智代「できるだろうか…」
 朋也「やってみろ」
 智代「朋也がそう言うなら、仕方がない…やってみよう」
俺は智代の肩を叩いて、離れた。
智代がマウンド上に戻る。
 春原「ゲーム中にちちくりあってんじゃねぇぞ!」
 智代「………」
今の言葉で、智代がキレた気がする…。
 智代「おもしろい…相手してやろう、春原」
 春原「いや、相手はこっちなんすけど」
 智代「いや、おまえだ」
 智代「いくぞ」
智代が投球モーションに入る。
と、フォームが変わった。
 主将「これは………広島カープの故津田恒美氏の投げ方!!
またわかりづらいな、おい
 春原「よし、こい!」
振りかぶって…投げた。

ギュオオオオオオオオンッッッ!!

グワアアアアアッ!!

………。
………。
………。

春原が消し炭になっていた。

ボールも消し炭になっていた。

予想はしていたけどやりすぎ。

これでこの野球部の連中も智代に投票するだろう。

たぶん、恐怖政治的な意味で。


裏CLANNAD 智代編 5月6日 終
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ひとこと:
一番気を遣ったのが智代VS杏のくだり。
でも、もともとフリーダムなのが裏CLANNADのいいところなので、考えたら負けだ、感じるのだ。
あと、案の定春原は次の日にはリザレクションしてるよ!!ゆっくり死んでいってね!!

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