裏CLANNAD 智代編 5月14日〜エピローグ
 智代「しばらくは忙しいんだ」
 智代「朝も、放課後も」
 智代「いろいろとやらなければいけないことがある」
 智代「知っているか、朋也。学校にはたくさんの委員会があるんだぞ?」
 智代「そこではたくさんの生徒が委員をやっている」
 智代「みんな、殺る気を持った人間だ
智代、字が違うぞ、字が。
 智代「そんな人間が集まった時の力はちょっとしたものだぞ」
 智代「話しているだけでも、圧倒される」
 智代「みんな、学校のために頑張ってるんだ」
 智代「そんな委員会と、議題を持ち合って、今後の予定を決めていく」
 智代「それは大変なことだけど、やりがいもある」
 智代「そのぶん、緊張もする。判断を誤れば、責任を問われるだろうからな」
 朋也「おまえは、失敗しないよ」
 智代「どうして」

全部力技でなんとかしちゃうから、なんて口が裂けても言えない。

 朋也「根拠なんてない。そんな気がするだけだ」
 朋也「おまえは、もう道を踏み外さない」
 朋也「真っ直ぐに歩いていける」
 朋也「そもそも、おまえは荒れたりしていなければ…」
 朋也「もっと早くに、こうなっていたはずだ」
 朋也「いろんな人から期待されて、それに応えて…」
 朋也「今頃はとんでもない高みにいたはずだ」
 朋也「おまえは、そうなるべき人間だ」
 朋也「生まれもっての魅力があって…それは選ばれた人間だ」
 朋也「だから、もう、迷うことなく真っ直ぐに歩いていける」
 朋也「その高みに向かってな…」
 智代「違う…私はそんなんじゃない」
 智代「それに…」
 智代「朋也の言い方は…なんだか寂しい」
 智代「まるで、歩いていくのは…私ひとりのようだ」
 朋也「………」
 智代「どうした…どうして、否定しない」
…おまえは俺とは違う。
ずっと同じ場所にいる俺と…
高みへと歩き出そうとしている智代。
そんなふたりが一緒にいる。
なんて…悲しいんだろう。
これからは、辛い日々が待っているに違いない。
 智代「朋也は…一緒に居てくれる。そうだろ?」
 朋也「ああ…居たい…」
 朋也「それだけは言えるよ…」
俺が…こんな自分を許し続けられるなら。

そして、もう二度と智代の千枚通しに刺されなければ。

 智代「うん…居てくれ。ずっと一緒に」
足を引っ張るだけの無能な男でも…
智代を好きな自分を…信じ続けられるなら。


ふたりで居ても、智代は別の生徒に呼び出されることが多くなった。
 男子生徒「こんなところに居たのかっ」
 智代「なんだ、どうした」

 男子生徒「朝の「戦車を洗車する」っていうダジャレのためだけに持ち込んだ戦車の件だよ…案の定、クレームが出た

そりゃあクレームも出るだろう。

 智代「そうか…」
 男子生徒「とりあえず、来てくれ」
 智代「いや…」
 男子生徒「うん?」
 智代「おまえに任せる」
 男子生徒「えぇっ?」
 智代「二度も言わせるな。おまえに任せる、と言ってるんだ」
 男子生徒「こんな時にそんな冗談を言うなっ」
 朋也「行けよ」
割って入った俺をふたりが同時に見た。
 朋也「行けよ、生徒会長さん」
 智代「なんだ、朋也。それは…嫌みか?」
 朋也「違う、事実だろう」
 朋也「おまえは、生徒会長だ。違ったのか?」
 智代「いや…そうだが…」
 智代「でも、おまえには…」
 男子生徒「呑気に男と話してる場合じゃないぞ、坂上」
 智代「あ、ああ…」
 智代「朋也っ…」
最後に智代の顔が俺に向く。
眉間に皺を寄せた…辛そうな表情で。
 智代「…悪い」
 朋也「気にするな」
 男子生徒「………」
男子生徒のほうは、最後まで無粋な目を寄越したままだった。
智代は、どれだけ忙しくても、時間を割いて、ふたりだけの時間を作ってくれた。
智代は、いつだって、俺が自分を好きでいてくれているのか確かめたくて…
俺はそれに応えるのに、時間を要するようになって…
そして、少しずつ…
ふたりは、不安な気持ちを抱いたまま、過ごすようになった。
 朋也「忙しいんじゃないのか」
 智代「大丈夫だ」
 朋也「無理しなくていいんだぞ」
 智代「なんだ、それは…」
 智代「まるで、会いに来るなと言いたげだな…」
 朋也「そんなこと誰も言ってないだろ」
 智代「………」
 智代「悪かった…」
 朋也「いや…」
 智代「………」
 春原「よっ、おふたりさん!」
 朋也「………」
 智代「なんだ、春原か…」
 春原「なんか、すんげ辛気くさいんですけど」

 智代「お前の最後に相応しい殺し方を考えてるんだ

 朋也「あと、最後のオチに合衆国の最終兵器も使わないといけないしな。それで悩んでるんだ

 春原「それってすごくどうでもいいことですよねぇ!?
 智代「やっぱり最終兵器で春原巻き添えにした爆破オチでいいんじゃないか?
 春原「良くねェーーーーー!!
翌日は、土曜で、午後からは放課だった。
坂の下。
ここで智代と落ち合う約束をしていた。
じっと、智代が降りてくるのを待ち続けた。
下校する生徒はもうまばらだった。
 男子生徒「なぁ、あんた」
そのうちのひとりが、突然声をかけてきた。
見覚えのある顔…。
智代の知り合い…おそらく生徒会の一員だったと思う。
 男子生徒「坂上はどこにいる」
そして、今、こうしてその口調と共に思い出す。
もっと、前に会っていた。
そう、停学中に、坂の下で声をかけてきた男だった。
 朋也「お前流れ弾に当たって死んでなかったっけ
 男子生徒「とっさに1UPキノコを食べていなければ即死だったよ
お前もかよ。
男と別れ、俺は歩き出す。
ちなみに、男子生徒はまた渚の流れ弾に倒れていた。
もう智代編も最後だし、普通に本編でもムカつく野郎だったから、二度と生き返るまい。
少し先の木の枝が、風もないのに揺れていた。
俺は近づいていって、見上げた。
枝の上に、智代がいた。
 智代「気づいてくれたか、良かった」
 朋也「なにやってんの、おまえ、そんなところで」
 智代「いや…来たら、会いたくない奴がいたんだ…それだけだ」
 朋也「なんだ、俺へのサービスかと思ったよ」
 智代「どういう意味だ?」
 朋也「パンツ丸見えだから」
 智代「おまえはっ…」
枝から飛び降りる。
 智代「本当に、スケベな奴だなっ」
 朋也「男ってのはみんなそんなもんだっての」
 智代「そうだな…前にも言っていたな」
何が嬉しいのか、智代は笑っていた。

 智代「ちなみにぱんつははいていなかったのだが

わーおエローい!!

 智代「そうだ、ほら」
その両手には、アイスを持っていた。
 智代「そこまでアイス屋が来てたんだ」
 智代「一緒に買おうと思ったんだが、行ってしまいそうだったから、買ってしまった」
 朋也「おまえ、そんなもの持って、木によじ登ったり…器用だな」
 智代「まぁ、そういうのはお手の物だ」
 朋也「ああ、そうだろうな」
 智代「アイスは…ほら、創立者祭の時、食べられなかっただろ?」
 智代「いや…おまえがふたりぶんを食べて、私が食べそびれたんだったな」

ってことは俺、あのメッ○ールアイス食ったのか………

 智代「まぁ、そのことは忘れてやる」
 智代「だから、今は一緒に食べろ」
 智代「けど、時間が経ちすぎたな。手がベトベトだ」
 智代「許せ」
溶けかけたアイスを俺に差し出す。
俺はそれを受け取り、智代の手を自分の手で拭う。
 智代「そんなことしなくてもいいぞ?」
俺は気づいていた。
 朋也「汚いのは慣れてるよ」
俺はもう…
自分が許せなかった。
 智代「汚いというか、甘い。ベタベタして気持ち悪いぞ」
 朋也「指ぐらい舐めればいいんだ」
 智代「それもいいが、ちゃんとアイスも食べてくれ」
手に持っていたアイスは溶けて、地面に雫を落としていた。
 朋也「ああ、悪い」
俺はそれに口をつけた。
気づいた時は…こんなにも穏やかな気持ちでいられるなんて。
もしかしたら、俺は…
智代といることが…そんなにも苦しかったのだろうか。
 智代「子供みたいな食べ方だな」
 智代「おいしいか」
 朋也「ああ、うまい。ちゃんとしてる」
 智代「当然だ。アイス屋のアイスだからな」
このアイスを食べ終わった時、言おう。
だから、俺はゆっくり食べることにした。
でも、智代はそんなことも知らずに…俺をせっつくようにして食べた。
この後も、楽しいことがたくさん待っていることを信じて。
 智代「うん…おいしかった」
智代が食べ終えた。
俺も、最後の一口を放り込んだ。
 智代「また…子供みたいにつけて…」
智代が俺の口の端を指で拭った。
 智代「うん、男前に戻ったぞ」
 智代「さて、行こう」
智代が俺の手を取る。
智代にそうして手を引いてもらって、春原を寮まで起こしにいった。
あの日から、俺たちは始まっていたんだと思う。
あの時から、智代は俺のことを好いてくれていたんだと思う。
 朋也「智代」
俺はそっと、その手を振りきった。
 朋也「別れよう」
ちゃきっ!!
言った瞬間に、俺の首筋に日本刀が突きつけられる。
 智代「よく…聞こえなかった
しっかり聞こえてるじゃねえかよ!!
 智代「ここからお涙頂戴路線に行くと思ったら大間違いだ………ククク
いや、誰だお前。
 智代「ここでお涙頂戴路線にしたら、爆破オチにもっていけないではないか!!

………本気で爆破オチ狙ってやがるコイツ。

 教師「そうか、よかったな」
老教師は、そう俺を労った。
俺よりも、嬉しそうだった。
内定が出て就職先が決まったのは、三学期の始業式を終えた午後だった。
それは、最初から提示されていた仕事のうちのひとつだった。
自分の力で探し当てた企業は、どれもこれも駄目だった。
どんなささやかな希望も叶わなかったのだ。
これからの人生を暗示しているようで、気が重くなる。
それでも、報告しないわけにはいかない。
俺は就職部まで足を運んでいた。
 教師「見ていた生徒の進路が決まると安心するんだ」
 教師「特にこんな学校だ。私が見る生徒は少ない」
 教師「我が子のように、うれしく思うよ」
 教師「………」
 朋也「先生」
俺がこの教師に対して自発的に口を開いたのは初めてだった。
 教師「うん?」
 朋也「お世話になりました」
そして、それは最後の言葉となった。
深く礼をして、ストーブの灯油の匂いが籠もった部屋を後にした。
校内は閑散としていた。
誰もが、家に真っ直ぐ帰って、勉強をしているはずだった。
外に出ると、雪が降っていた。
珍しいものだと思った。
これから本降りになるのだろうか。
明日の朝には積もっているだろうか。
明日からは、どうしようか。
春原はまだ戻ってきていない。
早く帰ってきてくれればいいのに…。
最後の時間はどう過ごそうか…。
就職が決まってしまったふたりでも…馬鹿できるだろうか…。
できるだろう…俺たちは、本当に馬鹿だったから。
いろんなことを考えながら、俺は門を抜け、坂を下りる。
その先に…
彼女はいた。
 朋也「………」
 智代「………」
 朋也「よぅ」
 智代「ああ…」
懐かしい声。
遠く聞こえる。
 智代「その…」
 智代「元気だったか」
 朋也「ああ、元気だ」
 智代「そうか…それはよかった…」
俺の言葉は合っているのだろうか。
こんな俺だっただろうか。
 朋也「今日はどうしたんだ」
 智代「………」
 智代「待ってたんだ、朋也を」
…朋也。
そう…呼ばれていたのか、俺は。
 朋也「どうした」
 智代「おまえには報告したかったんだ…」
 朋也「何を」

 智代「いい爆破オチが思いつかないんだ

お前数ヶ月も何を考えてたんだ。

 智代「ここにある桜は、もう切られない」
 智代「残るんだ」
 朋也「そっか…」
 朋也「そりゃ、よかったな…」
 智代「ああ、よかった」
 朋也「確か…おまえの、この学校での目標だったもんな」
 智代「そうだ…譲れない目標だった」
 智代「叶えたんだ」
 朋也「ああ…」
 智代「………」
 朋也「………」
話は…終わったのだろうか。
もう、俺は立ち去ってもいいのだろうか。
 智代「………」
 智代「でも…」
話は、まだ続いた。
彼女の口から真っ白な息が漏れた。
 智代「その代わりに…」
 智代「失ったものもある…」
 智代「…わかるか?」
 朋也「さぁ…」
 智代「…時間だ」
 智代「長い時間…」
 智代「八ヶ月という時間…」
 朋也「………」
 智代「それは幸せな時間だ…」
 智代「朋也と過ごせるはずだった、幸せな時間だ…」
 智代「楽しいことがたくさんあったはずの時間だ…」
 智代「ずっと、一緒にいて…」
 智代「昼休みも、いつものように一緒に食べて…」
 智代「学校行事も、一緒に出て…」
 智代「一緒に登校して…」
 智代「一緒に帰って…」
 智代「一緒に春原をボコって…
言っておくが、春原残機0だからな。
 智代「ずっと、離れずにいられたはずの時間だ…」
 朋也「………」
 智代「なのに、あの日、私とおまえは…」
 朋也「………」
 智代「別々の道を選んでしまった…」
 智代「………」
 智代「なぁ、朋也…」
 智代「私は朋也のことが好きだった」
 智代「付き合ってからも、付き合う前と同じぐらい好きだった」
 智代「いや…もっと好きだった」
 智代「そして…」
 智代「…今も、ずっと好きだ」
 朋也「………」
 朋也「俺は…」
 朋也「今の、おまえがよくわからないんだ」
 智代「………」
 朋也「なぁ…俺はおまえとどんな話をしていた」
 朋也「どんなふうに笑っていた」
 朋也「どんなふうに…幸せを与えられていたんだ…」
 智代「私は…」
 智代「朋也がそばに居てくれただけで幸せだった」
 智代「怒っていたっていい。無視してくれてもいい…」
 智代「どんなふうにでもいい」
 智代「居てくれるだけで、幸せだったんだ…」
 朋也「………」
雪が降り積もる。
彼女の綺麗な髪にも。
 朋也「なぁ、智代…」
 朋也「時間を戻したいな…」
 智代「………」
 智代「…それは無理だ」
 智代「わかっているだろ…」
 朋也「もう、俺はこの雪が解ければ…卒業だ」
 朋也「俺は、働き始める…」
 朋也「そうすれば、本当に、別々の道になる」
 朋也「おまえは進学する。この町を離れて…」
 朋也「そこでは、たくさんの出会いが待っているんだぞ…」
 朋也「どんどん、おまえは変わっていく」
 朋也「期待されて、それに応えて…」
 朋也「自分じゃ気づかないうちに、とんでもなく遠い場所に辿り着いてるんだ…」
 朋也「俺はこの町の片隅で、毎日油にまみれるような仕事で、汗をかいて…」
 朋也「いつまでも、同じ場所にいる」
 朋也「居続けるだろ…」
 朋也「………」
 朋也「そんなふたりが…一緒に居られるはずがない」
 智代「………」
 智代「なら、朋也…」
 智代「私がおまえの居る場所までいく」
 智代「もう、何もいらない」
 智代「生徒会なんて立場もいらない」
 智代「いい成績も、いい内申もいらない」
 智代「頭のいい友達もいらない」
 智代「別の町で迎える春なんていらない」
 智代「私はおまえと一緒の春がいい」
 智代「それだけでいい…」
 朋也「………」
俺は思い出していた。
智代が好きだったことを。
別れた日、気づいた感情を。
そして、それは…今も。
 朋也「智代…」
 朋也「おまえは、いつだって、先輩面な…」
 朋也「俺にも努力させてくれ…」
 智代「なにを言っているんだ…」
 智代「おまえは、これから努力するんだろ?」
 智代「春になれば、毎日油にまみれて、働くんだろ?」
 智代「私は、そばにいて応援するぐらいしかできないからな…」
 智代「ああ、弁当は任せておけ。愛情を込めて毎日作るぞ」
 朋也「すんげぇ、尻に敷かれてそうだ」
 智代「そんなことはしない。全部おまえが決めるんだからな」
 朋也「………」
 智代「さぁ、決めてくれ…朋也」
目の前には、俺のことを好きな女の子が立っている。
これから、一緒に居続けてくれるという。
 朋也「ああ…」
 朋也「…よろしく」
その手を取った。
そして、そのまま抱き寄せた。
 智代「朋也…」
 智代「朋也っ…」
智代の目から、堰を切ったように、涙が溢れ出す。
ずっと、不安だったんだろう。
智代は子供のように泣いた。
俺はずっと、情けない男だった。
でも、これからは違う。
この子を守ってゆけるよう、ずっと安心していてもらえるよう…
俺が頑張らないといけない。
それを誓うから…
だから、どうか…
いつまでも、一緒にいてくれ。
…智代。


坂を登ってくる、ふたつの影がある。
片方は知った顔。
もう一方は今日初めて見る顔。
新入生だという。
ふたりは、見上げながら歩く。
満開の桜を。
 男子生徒「ねぇちゃん…」
 男子生徒「すごく、桜、きれいだね…」
 智代「当然だ」
 智代「私が守ったんだからな」
 男子生徒「そんなことできるはずないよ」
 智代「馬鹿にしてるのか。なら、見るな。もったいない。桜が腐る」
 朋也「いちいち突っかかる姉だよな」
俺はふたりを見下ろしたまま、そう言ってやった。
 朋也「智代、おまえ、素直に返してやりたかったんじゃなかったのか」
 朋也「なんのために、守ったんだか」
 男子生徒「すごい…ねぇちゃんを呼び捨てにしてる…」
 朋也「ああ、んなことはちょろい」
 朋也「こんなこともできる」
寄っていって、智代の頬をつねってやる。
即座に、強烈なカウンターパンチを食らう。
 男子生徒「にいちゃん、すごいよ!(無謀的な意味で)
 朋也「まぁ、おまえの姉なんて、所詮俺にかかれば子供同然ってことよ」
 朋也「だから、いじめられたりしたら、呼べよ。にいちゃんが助けてやるからなっ」
 男子生徒「いじめられることなんてないよ」
 男子生徒「口は悪いけど、ねぇちゃん、すごく優しいから」
 朋也「そっか。そりゃ、良かったな、坊主」
 男子生徒「坊主じゃないって。鷹文っていうんだ」
 朋也「そっか。俺は岡崎朋也」
 鷹文「ふぅん。で、どうして僕たちに話しかけてきたの?」
 鷹文「作業着着てるから、この学校の生徒じゃないよね」
 朋也「そうだな…」
 朋也「おまえがいじめられてるように見えたからな、助けにきただけだ」
 鷹文「正義の味方みたいだね」
 朋也「そんなところだ」
 朋也「おまえがピンチの時は駆けつけてやるからな」
 鷹文「それは、どうも」
 朋也「だから、これからも、よろしく」
 鷹文「事情はよくわからないけど、こちらこそよろしく」
俺たちは握手をした。
そんな俺の肩を掴んで、智代が小声で話しかけてくる。
 智代(どんな第一印象だ、おまえはっ…)
 朋也(好印象だろ。頼れるお兄さんって感じでさ)
 智代(私には危険なお兄さんって感じだったぞ)
 朋也(え、それやべぇよっ!)
 智代(馬鹿…)
 智代(もういい。今日はこれで終わりだ)
 朋也(わかったよ…)
 朋也「じゃあ、俺、もう行くな」
 智代「またな、危険なお兄さん」
 朋也「おまえが言うなってのっ」
 鷹文「じゃあね、おにいさん」
 朋也「ああ、またな」
姉弟を残して、俺は坂を下りていく。
 鷹文「ねぇちゃん」
 智代「なんだ」
 鷹文「弁当、渡さなくてよかったの?」
 智代「………」
 智代「…しまった」
 智代「というか、気づいていたのか、おまえは」
 鷹文「おもしろいよね、ふたりとも。お似合いだよね」
 鷹文「僕は仲良くなれると思うよ」
 智代「そうか…それは良かったな」
 鷹文「ね、引き返さないの?」
 智代「ああ」
 智代「恥ずかしい思いをさせてくれたからな…」
 智代「あいつの昼は抜きだ」
 鷹文「ねぇちゃんの彼氏って、大変だね」
 智代「大変なものか。尽くすほうだぞ、私は」
 智代「ただ、気にくわないことをされると、こういう日もある」
 智代「それだけだ」
 智代「そんなことより、急がないと初日早々遅刻するぞ」
 鷹文「もうそんな時間?」
 鷹文「もう少し、ここに居たいな」
 智代「あの馬鹿を見送っていきたいのか?」
 鷹文「それもあるけどね」
 鷹文「ただ、もう少し、ねぇちゃんと見てたいと思って」
 智代「桜か」
 鷹文「うん」
 智代「そうか…なら、もう少しだけだぞ」
 鷹文「うん…」
 鷹文「ねぇちゃん」
 智代「うん?」
 鷹文「きれいだね」
 智代「………」
 智代「ああ…」
 智代「綺麗だな…」

裏CLANNAD 智代編 完

 智代「さて、じゃあメインイベントだ」
そうして智代は、手に持っていたボタンを押す。
と、一本の桜の樹から二つの物体が降りてきた。
ひとつは、合衆国の最終兵器
 鷹文「………ねぇちゃん、何が始まるの?」
 智代「まぁ見てろ。ククク………
 鷹文「ねぇちゃん、キャラ違ってるよ
そしてもうひとつは、春原。
 鷹文「………あれ、誰?」
 智代「気にしたら負けだぞ」
 春原「気にしろッ!!」

 智代「五月蝿いぞ下僕。さて、じゃあこれから壮大な爆破オチを始めるぞ」

 鷹文「………ねぇちゃん、僕は良く分からないけど、こういうのって出オチって言うんじゃないの?」

 智代「ぐ。………まぁ、今更引き返せないしな。読者のリクエストに答えるためには仕方ない」
 春原「ちょっと待てぇっ!!これ爆発したらこの町一帯が消えてなくなるだろ!!」
 智代「ああ、心配ない。超小型にしといたから、お前が消し炭になるだけで済む
 春原「うわあああああああ!!」
 智代「さて鷹文。ファイヤーダンスの準備はいいか
 鷹文「ばっちりだよ、ねぇちゃん」
 春原「今更伏線回収するなあああああっ!!」
 智代「そうか。じゃあそろそろお別れだな春原。SA☆RA☆BA☆

ぽちっ

………。
………。
………。
「………それでは続いてのニュースです。市内の○○高校にて、突如桜の樹が爆発、炎上するという事件が発生しました。
 なお、桜の燃えかすからは、身元不明の男性の焼死体が発見されており、警察では当時、
 桜の樹のそばで△△市伝統のファイヤーダンスを踊っていた男女2人に詳しい事情を聞いています。………」


春原「次の裏CLANNADでは残機10000ぐらい用意しよう………

裏CLANNAD 智代編 終
智代編 5月13日へ
ひとこと:
終わったあああああ!!
足掛け約4年!!
俺の遅筆ぶりもここまで来るとたいしたものだぜ。
まあ、本当に待ってた人々には申し訳ないことをしたけど、
こうやってなんとか終われて、今はただひたすらほっとしてるよ。
とりあえずは年内に終わることが出来てよかったなあ、と。
次に裏CLANNADをやるのかどうかはまだ決めてないけど、
何かリクエストがあればそれを優先的に書いていきたいので、よろしく。
最後に、ずっと楽しみにしてくれていた11月16日の人に深い感謝を。
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