裏CLANNAD智代編 プロローグ
朋也「…ん?」
先ほどまではなかった光景が、そこにはあった。
今、坂を登ってきたのか、ランボルギーニが2台、校門の近くに止まっていた。
・・・バイクじゃないの?
そのうちのひとりが、手を振って合図する。
2台のバイク改めランボルギーニは、爆音をあげながら校内の敷地内を暴走し始めた。
すげぇ光景だなオイ。
確か、去年の暮れにも似たようなことがあった。
って、あったのかよ!?
その時の犯人は、近くの工業学校の生徒だった。
町一番の進学校というのが、そんなに気に入らないものなのだろうか。
春原「お、なになにっ」
春原の体がいきなり目の前に現れる。
朋也「てめぇ、人の机の上に乗るな」
春原「いいじゃん。お、すげぇ、爆走」
その騒音を聞いて、他の男子も、何事かと窓際に集まり始めていた。
…鬱陶しいこと、この上ない。
教員は、どういう対処を取るだろうか。
俺は成り行きを見守ることにする。
突然、わっと、別の教室の野次馬たちが湧いた。
春原「次はなんだよっ?」
ひとりの生徒が、窓から身を乗り出し、真下の地面を指さしていた。
見下ろす。
そこには、バイク改めランボルギーニを駆る連中に向かって、悠然と歩み寄っていくひとりの生徒の姿があった。
長い髪に、細身の体…
女生徒だった。
黄色い声まであがり始めている。
春原「ひゅーっ」
つーか、おまえか。
春原「説教する気かなっ」
朋也「まさか…しゃれにならないぞ…」
教師たちは何をしているのか、一向に出てこない。
春原「うおっ、始まるぞっ」
女生徒を前に、ランボルギーニは停止していた。
双方向かい合い、何事か話し合っている様子だ。内容はわからない。
声「智代さん、やっちまえ!」
階下から、声援。
春原「やるって、あの子が?」
春原「はは、やられるっての」
一瞬、女が笑った気がした。
おもしろい、と。
その後は、瞬きをしている暇すらなかった。
気がつけば、歓声の中、全てのタイヤに穴を開けて戻ってくる女生徒の姿があった。
両手に千枚通しと不良たちを引きずって。
って、なんで千枚通し持ってんだっ!!
朋也「………」
春原「………」
しばし、言葉を失う。
春原「はは…なにあれ?」
暇つぶしには最適。
席を立ち、教室を後にする。
春原「僕も行くよ、待てっての!」
春原も追いかけてくる。
春原「あんなの絶対、おかしいってっ」
春原「ありえないよ」
朋也「ま、この目で確かめてみようぜ」
職員室前の廊下。
そこにも野次馬が集まっていた。
知らない顔ばかり。下級生の連中だろう。
三年で、ここに来ているのは俺たちふたりだけだった。
教師「で…」
女生徒「正当防衛だ」
女生徒「そうだろ、おまえたち」
ぶすりっ。
野郎ども「ふぐおおおおおっ!!」
言いながら、千枚通しを野郎どもの尻に思い切り刺す。
野郎ども「は、はいっ……オレたちから………仕掛けまし……たっ………!」
野郎ども「智代………さんは……悪く………ありませんっ………!」
うんわ、凄く苦しそう。
でも裏CLANNADだから、それぐらいで済んでいるのはある意味ラッキー。
教師「智代さん? 名前知ってるってことは、知り合いなの、君達?」
女生徒「違う。さっき、名前を聞かれたから答えただけだ」
女生徒「そうだろ、おまえたち」
目が光る。
ついでに、スペアの千枚通しも取り出す女生徒改め姉御。
野郎ども「ひ、ひいぃっ!」
野郎ども「はい、そうです!」
教師「そうか…」
教師「まぁ、今回のことは、こいつらも反省していることだし、お咎めなしということにしておくが…」
教師「二度とこんな危険な真似はしないよう。対処は我々に任せておけばいい」
女生徒「ああ、次からはそうしよう」
女生徒「では、これで失礼するぞ」
教師「ああ」
女生徒「後…おまえたちも、な」
目が光る。
野郎ども「ひいぃぃ!」
女生徒「………」
朋也「おい、おまえ」
野次馬のひとりを捕まえる。
朋也「あいつ、誰」
男子生徒「えっ? 智代さんじゃないですか」
あんな有名人を知らないのか、と言わんばかりに答えた。
男子生徒「坂上智代。この春から二年生に編入してきたんすよ」
朋也「いつも、あんなことしてんの?」
ってか、いつも千枚通しを持ち歩いてたら怖いんですけど
男子生徒「たまにですよ、たまに。いつもは毒針ですけど」
なお悪いわっ!!
男子生徒「怯えて職員室に引っ込んでる先生たちに毒針を打ち込んで、ひとり立ち向かっていくんですよ」
何故教師に毒針を打ち込む!?
………つか、裏CLANNADのヒロインはこんなヤツばっかりなのか。
男子生徒「カッコイイっす!」
って、カッコイイの!?
朋也「一歩間違えたら、単なる馬鹿だろ」
男子生徒「馬鹿だったら、この学校に編入なんてしてこれませんよ!」
朋也「そういう意味で言ってるんじゃないんだけどな…」
智代「なんだ、おまえたちは…通れないじゃないか」
野次馬たちを掻き分け、女生徒は立ち去る。
俺はじっと、その背中を見つめていた。
…あんな変わった奴が、この学校にいたのか。
いや、変わりすぎ変わりすぎ。
裏CLANNAD智代編 プロローグ 完
智代編4月16日へ
ひとこと:
渚編が終わって、調子付いて智代編まで始めてしまいました。
なんで智代編かって?そりゃもう、愛というかラヴというか(ぇ)
ぶっちゃけ智代編さえ完結できれば後はどうでもい(ry
イエイエ、ナンデモナイデスヨ?
ともかく、智代編もエンジン全開で参りたいと思います。
例によって、感想・批判・指摘・意見など何でもお待ちしておりますっ。
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