裏CLANNADことみ編 4月17日

 朋也(…よし、サボろう)
俺は立ち上がり、そそくさと教室を後にした。
始業の五分間を、トイレでやり過ごした。
それから旧校舎に向かう。
足音をひそめて、廊下を歩く。
みんな教室の中で、教師のつまらない講義を聞いている。
空間のこちら側だけが、自分のものになったような感覚。
俺の他には、誰も歩いているはずがない。
なかなか気分がいい。
 朋也「よぉ」
歩いているはずのない女生徒にも、気さくに挨拶してしまうぐらい気分がいい。
 朋也「…って、ちょっと待てっ!」
叫んでしまってから、あわてて声を落とした。
 朋也「なんで今、ここにいる?」

 少女「ことみ編だからに決まっているだろうが、なの

メタ発言にも程がある。あと語尾の付け方が強引すぎ。

 少女「ちょっとだけ、待っててね」
ぱたぱたと窓際に走っていく。
窓をいくつか開けて、新しい空気を入れた。
それから司書席のカウンターに入り、清掃用具のロッカーを開ける。
モップを持って戻ってきた。
俺の見ている前で、なぜか彼女は掃除を始めた。
 少女「うんしょ、うんしょ…」
細い腕で一生懸命に、板張りの床をモップがけする。
待っててと言われた俺だけが、手持ち無沙汰に突っ立っている。
開店前に迷い込んだ、迷惑な客のようだった。
このまま待っていれば、そのうち何か出てくるのだろうか?
 朋也「ホットコーヒー」
試しに注文してみた。
 少女「?」
モップがけの手をとめて、不思議そうに俺を見る。
どうやらコーヒーは置いてないらしい。
 朋也「じゃあオムライス」
 少女「す…」
 少女「酢飯食いながら六法全書で殴られて死ね
 朋也「………練り飴」
 少女「目を突かれた上に六法全書で殴られて死ね
 朋也「………………ねこまんま」
 少女「マサカリ担いだ金太郎に六法全書で殴られて死ね

もうやだこのことみ。

ていうかマサカリ担いでるのに六法全書が武器の金太郎って………

 朋也「…おまえ、英語の本なんて読めるのか?」
問いかけると、掃除の手を止めないままこくりと頷く。
 少女「書くのはちょっとむずかしいけど、読むだけなら簡単」
 朋也「書けたらマジで驚くぞ」
 少女「??」
嘘やハッタリではないらしい。
そもそも読めないなら、こんな重いものを持ち運ぶはずがない。
…帰国子女とか、そういうやつなのだろうか?
 少女「お掃除、できたの」
 少女「とってもきれいで、ぴかぴか」
 朋也「そうか。そりゃよかった」
 少女「ぴかぴかだと、とっても気持ちがいいの」
 朋也「ああ、そうだな」

 少女「これだけきれいだと、返り血がいつもより映えるの………ククク

俺の方を見ながら言うな。

ここは…どこだろう?
どこからか、音が聞こえる。
聞いたことのない音。
それなのに、懐かしい音。
ゆっくりと、目を開く。
キーンコーンカーンコーン…。
 朋也「………」
チャイムの音だった。
頭をあげて、視線を巡らす。
教室ではなく図書室にいると気づくのに、しばらくかかった。
どのぐらい眠っていたのだろう?
と、彼女が本から顔を上げて、俺の顔を覗きこんでいた。
 少女「起きた?」
 朋也「…今、何時だ?」
 少女「もう、お昼」
 朋也「そうか…」
もっと長い時間、寝ていたような気がする。
 少女「たくさん、眠れた?」
 朋也「ああ」
 少女「そうなんだ」
 少女「よかった」
 朋也「たくさん本読めたか?」
こくりと頷く。
 少女「うん。たくさん、読めたの」
 朋也「そうか。そりゃよかったな」
 少女「ええと…」

 少女「お弁当、食べ

 朋也「そうだな、腹も減ったし………ってまた強制なのかよ!!
そこは本編だと疑問系だろうが!!

 少女「ぶつぶつ言わんとさっさと食べんかいコラァ

………裏CLANNADのことみは口調が安定しないなあ。

 少女「ええと…」
 少女「ほんとは、お腹いっぱい?」
小声で訊きながら、控えめに瞳を動かす。
 朋也「いや、そうじゃなくてだな…」
答えかけて、彼女の視線の先に気づいた。
弁当箱は、もう巾着袋から出してあった。
蓋の上に、箸が二膳あった。
子供っぽい朱塗りの箸と、もっと長い黒塗りの箸。
 朋也「もしかして…俺のためにか?」
また、こくりと頷く。
 朋也「はぁ…」
嬉しいことは嬉しいけれど、そこまでしてもらう理由がわからない。
誰にでも親切な性格なのだろうか?
とてもそうは見えないが。
 朋也「そういえば、名前は?」
 少女「???」
真顔でびっくりするなよ。
 朋也「そっちの名前だって。教えたくないなら、いいけどな」
 少女「ええと…」
しばらくの間があって。
 少女「ことみ」
 少女「ひらがなみっつで、ことみ」

 少女「呼ぶ時は、鮮血の伝道師ことみ、と呼ぶがいいの」

何その中二病すぎるネーミングセンス。

 少女「でも作者頑張って考えたらしいの

恥ずかしいにも程がある。

 朋也「…せめて呼び捨てにさせてくれ」
俺が言うと、いつも通りにこくりと頷いた。
 朋也「俺は岡崎朋也」
 朋也「好きなように呼んでいいからな」
椅子から腰を上げて、軽く伸びをする。
彼女も立ち上がった。
そうして、俺を正面から見つめる。
 ことみ「負け犬

せめて本名で呼べと。

裏CLANNAD ことみ編 4月17日 終
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ひとこと:
中二病も立派な個性の一つだよね!!
でも実際こういう二つ名を考えるのって恥ずかしいぜ。
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