裏CLANNADことみ編 4月18日
図書室に行ってみようと思った。
床にぺたんと座って、本を読んでいる少女の姿が思い浮かんだ。
朋也(あいつ、ことみ…って言ってたっけ)
昨日、彼女は午後いっぱい本を読むつもりだと言っていた。
今もいるかもしれない。
角を曲がろうとした時、誰かが廊下を歩いてくるのに気づいた。
スリッパではなく、上履きの音。
教師じゃなくて生徒だ。
この階にあるのは図書室と、普段は使われない特殊教室だけだ。
そして、授業中に図書室に来る奴なんて、一人しかいない。
脅かしてやることにした。
朋也「…こほん」
朋也「あー、あー…」
喉を整え、大声を張り上げる準備をする。
何も知らない呑気な足音が、とことこと近づいてくる。
…せーのっ。
朋也「くぉらっ、裏CLANNAD更新ほっといて何やっとるっ!!」
深海ねこ「うあっ! すっすみませんっ専門学校とはいえ教師って暇が無くて家にいても仕事しなきゃいけなくて時間ないんですああごめんなさいごめんなさい」
おいそこ、さらっと言い訳すんな。
朋也「………」
バカがいた。
春原「…岡崎!?
っておまえなんてことするんだよっ!」
朋也「すまん、人違いだ」
春原「誰と間違ったんだよ!」
春原「この学校で授業サボる奴なんか、僕と岡崎以外いないじゃんよ」
朋也「いないこともないけどな」
春原「はぁ?」
朋也「授業中に図書室、行ってみた事あるか?」
春原「図書室?」
春原「そんなのあったっけ?」
朋也「…学校一アホな生徒だな、おまえ」
春原「あんたにだけは言われたくないけどねっ」
ののしり合うアホ二人。
とても不毛だった。
朋也「…とにかくだ。この廊下の突き当たりに、おまえの知らない図書室がある」
朋也「そこには謎の美少女がひとりいて、難しい本を読んでいる」
朋也「話しかけると、六法全書で撲殺しにかかってくる」
朋也「火炎放射器で「汚物は消毒だー!!」をしてくれることもある…」
朋也「………」
実際言葉にしてみると、ものすごく図書室に行きたくなくなった。
春原「本当に美少女なんだよね?」
朋也「ある意味な」
春原「一人で本読んでるんだよね?」
朋也「たぶんな」
春原「よーしっ」
気合いを入れる。
春原「僕が今、外の世界に連れ出してあげるからね…」
…がらがら。
引き戸を開け、図書室にひとり入っていった。
俺もどうせ暇なので、待っていることにした。
1分。
2分。
3分…
何も起こる気配はない。
5分ほど経った時。
ごすっ!!
………頭骨が六法全書で陥没させられたような音が、というかそのものだろう………が聞こえた。
ボワアアアァァー!!………パチ………パチパチ………
続いて、火炎放射器で何かを燃やす音が。何を燃やしているかはもうお察しください。
………もう手遅れだけど、様子を見に入った方がいいか。
そんなことを考えていたら、春原が燃えながら出てきた。
怖ェよ!!バイオ4のアイツかよ!!細かすぎて誰も分からねぇよ!!
春原「はぁ…」
後ろ手に引き戸を閉め、深々とため息をつく。燃えながら。
春原「3機ほど死んだよ………」
それぐらいで済んで良かったじゃないか。
朋也「そろそろ戻らなきゃヤバいってのに…」
足は図書室に向いていた。
『閉室中』の札が提がった引き戸を、静かに開ける。
埃と紙の、かすかな臭い。
誰もいるはずのない部屋。
カーテンのなびく窓際、日溜まりの中に彼女がいた。
素足で床にぺたんと座って、昨日と同じように本を読んでいた。
それだけで、なぜかほっとした。
いつも通り、ぐるっと周りを本に囲まれている。
そのもっと周りにも、本がバラバラに散乱していた。
多分、春原の仕業だろう。
これで気づかなかったとしたら、確かにものすごい集中力だ。
…じゃなくて、知っててわざと無視したとしか思えないぞ。
朋也「春原、不憫な奴…」
だが俺だって、今日は無視されないとも限らない。
朋也「おい…」
近づいて、呼びかけてみた。
反応はない。
朋也「来てやったぞ。気づけ」
もちろん、反応はない。
朋也「こらっ。何とか言えよ」
ぱらっ。
細い指が、ページをめくる。
完全無視だった。
朋也「………」
とりあえず、様子を見ることにした。
至近距離から、横顔を伺う。
彼女は本を読み続ける。
縦書きの本なんだろう、眼球が上下に動いている。
それにしても、やっぱり読むのが異様に速い。
あれで本当に内容が頭に入ってるのか?
あっ、またページをめくった。
朋也「…って、俺はやっぱり見てるだけかよっ」
ツッコんでも、もちろん無視。
朋也「………」
どうしよう?
名前を呼ぶことにした。
耳元に口を近づける。
すこし青色がかった長髪から、シャンプーの甘い匂いがした。
俺は囁くように言った。
朋也「こら、ことみ」
反応はない。
朋也「ことみ、ことみ、ことみ…」
連呼してみる。
やっぱり反応はない。
朋也「ことみ?」
疑問形にしてみる。
結果は同じだった。
朋也「こうなったら…」
最後の手段だ。
朋也「………鮮血の伝道師ことみ」
その瞬間、ページをめくる手がぴたりと止まった。
彼女は本から顔を上げた。
夢から醒めたような顔で、俺のことを見る。
そして、胸ぐらを掴まれた。
ことみ「「様」をつけろこの負け犬」
はい、すいません。
一緒に和んでいたい気もするが、もうマジで時間がない。
朋也「じゃあな…」
踵を返し、早足で戸口に向かう。
木の引き戸を開けた時。
ことみ「朋也くん」
呼び止められた。
今まで聞いたことのない、真剣な声色だった。
朋也「なん…だよ?」
戸惑って、振り向く。
返事はない。
彼女はゆっくりと、俺に向き直った。
きゃしゃな裸足を、ぴたりと揃える。
迷いを吹っきるように、俺を正面から見据える。
そして、彼女は言った。
ことみ「おとといは兎を見たの」
ことみ「きのうは鹿、今日はあなた」
朋也「………」
朋也「…はぁ?」
何のことか、さっぱりわからなかった。
芝居のセリフか何かだろうか?
少なくとも、俺は聞いたこともない。
朋也「なんだよ、そりゃ?」
ことみ「ふっかつのじゅもんに決まってるだろうが」
ドラクエかよ………。
ことみ「ちなみに竜王の城の前でレベル99でギガデイン覚えてるの」
せめて少しぐらい本当っぽいこと言えと。
裏CLANNAD ことみ編 4月18日 終
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ひとこと:
叱咤激励されたので急遽作った。
やれば出来る子だ俺。
ただこれからは計画的に書いていかないとダメだなあと思ったよ。
とりあえず困った時は春原を亡き者にすればよいということが実感できたね!!
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