裏CLANNADことみ編 4月21日
三時間目の授業が終わった。
馬鹿話が好きな教師のせいで、休み時間がほとんど過ぎていた。
廊下で適当に生徒を捕まえ、最近復学した女生徒の名前とクラスを知らないかを訊く。
男子生徒「ああ、ウチのクラス。古河だろ?」
ふたりめでビンゴ。
男子生徒「B組だよ」
それだけを聞き出して、目的の教室に向かう。
急いで3−Bの教室に向かった。
開きっぱなしの戸口から、さりげなく中を覗く。
すぐに古河は見つかった。
そこかしこで喋っている生徒たちの輪から外れ、黙々とアーマライトを磨いていた。
ああ、久しぶりの登場だったけどいつも通りのクオリティですね、渚さん。
朋也「古河…古河っ」
小声で呼ぶ。
すぐに気がついて、きょろきょろと辺りを見渡し始めた。
朋也「こっちだ、こっち」
古河「あっ…」
ズキュゥーーーーン!!
手招きすると、振り向きざま狙撃してきた。
間一髪、他の生徒を盾にして事なきを得る。
古河「びっくりしました…どうしてわたしの名前ご存じなんですか」
撃つ前に言え。
獲物でふくらんだ紙袋を手に、俺は図書室へ向かった。
ことみ「朋也くん、こんにちは」
図書室に入るなり、待ちかねたように挨拶が飛んできた。
朋也「おう。今日は元気いいなって、おまえ…」
テーブルの上を一目見たとたん、思わず唸ってしまった。
いつもの小さなタッパーではなく、ピクニックに使うような大きさの弁当箱が置かれていた。
朋也「…何人分なんだよ?」
ことみ「ことみちゃんと朋也くんで、二人分」
朋也「あのなあ…」
朋也「おまえの弁当と俺のパンを、半分こして食べるんだろ?」
ことみ「うん。半分こして、食べるの」
嬉しそうに復唱する。
朋也「おまえが二人分作ってきたら、合わせて三人分になっちまうだろうが」
ことみ「?」
本当に気づいてなかったらしい。
ことみ「あ、そっか…」
ことみ「朋也くん、頭いいの」
朋也「おまえにそう言われると、返事に困るぞ」
ことみ「??」
朋也「まあいい。腹減ってるから、早く食べよう」
手近な椅子を引っぱり出して座る。
ことみ「うん。食べよ」
ことみも隣に座った。
弁当箱を開ける。
鮭の切り身、唐揚げ、エビフライ、チキンソテー、ハンバーグ、卵焼き、プチトマト、フライドポテト…
賑やかなおかずが、何もここまでというぐらい詰め込んであった。全部炭化してるけど。
朋也「…これ、四人分ぐらいないか?」
突っ込みどころはそこじゃないぞ俺。
ことみ「たくさん食べれば、だいじょうぶ」
事もなげに言う。
朋也「まあ、頑張ってはみるけどな…」
朋也「全部食べられなくても、怒るなよ」
その瞬間、急に胸ぐらを掴まれる。
ことみ「東京湾に沈められるのと、この全殺丸・改の餌食になるのとどっちがいいか選べよ、愚民」
ハイ、ゼンブ、タベマス。
ことみ「うん。これ、朋也くんのお箸」
ことみ「それでね、私のお箸はこれ」
ことみ「手を合わせてください」
小学校の給食当番のように言って、きちんと両手を合わせる。
成り行きで、俺もその通りにする。
ことみ「いただきましょう」
朋也「いただきます」
また胸ぐらを掴まれる。
ことみ「私に対する感謝の気持ちを10分間言ってから食え」
なにその俺ルール。
ことみ「さあ、めしあがれ。どこまでもな」
ねえその不吉な言い方どうにかならない?
それはそれとして、箸を取り、どれから食べようか迷う。
まずは唐揚げ(だったもの)をつまみあげ、口に入れた。
よく味わって食べる。
ことみ「おいしい?(と言わないとどうなるか分かってるだろうな?)」
朋也「ああ、うまい」
たとえ炭の味だったとしても、この答えしか言えない。
朋也「おまえって、好き嫌いあるか? 言っとくけど食べ物のだぞ」
ことみ「ううん。好き嫌いせずに、なんでも食べるの」
朋也「なら、どれでも好きなの食えよ」
買ってきたパンを、ことみの前に出してやる。
ことみ「…?」
朋也「なに初めて見たような顔してんだよ?」
ことみ「??」
ぺりぺりっ。
手近な袋の封を切って、そっとパンを取り出す。
なぜかじっと見つめる。
朋也「それはクリームコロネだな。こっちが板チョコパンだ。あと、カツサンドと照り焼きチキン玉子サンドだ」
ことみ「………」
逆さにしたり、中を覗きこんだりしている。
朋也「クリームしか見えないだろ」
俺の話を聞きもせず、今度はサンドイッチを手に取る。
好きにさせることにした。
ちゃきっ。
ごおおおおおおおおおお。
隣を見ると、クリームコロネが消し炭になっていた。
ことみ「この私にナマモノを食わせるとは………良い度胸しているな、貴様」
どう見ても全部調理済みだよ!!
朋也「おまえさあ、今日の放課後、暇か?」
ことみ「??」
朋也「外せない用事とか、あるのか?」
ことみ「ないけど…」
朋也「ならさ、放課後、ちょっと付き合ってくれないか?」
ことみ「???」
朋也「なんて言うかさ、おまえに会わせたい奴がいるんだよ」
手を止めて、きょとんと俺を見ている。
ことみ「ええと…」
ことみ「その人って…」
不安そうに視線を泳がす。
ことみ「いじめない?」
朋也「………」
前途多難な気がした。
待ち合わせは、階段の脇と決めてあった。
もうことみは待っていた。
ことみ「朋也くん、こんにちは」
いつものように言うが、あからさまに表情が固い。
朋也「よしよし、よく逃げなかったな」
ことみ「…いじめない?」
朋也「いじめないから、行くぞ」
朋也「ちょっとそこで待ってろよ」
朋也「…あと、逃げるなよ」
ことみに釘を刺してから、演劇部室の引き戸を開けた。
ズキュゥーーーーン!!
椅子に座っていた古河が、立ち上がって振り向きざま狙撃してきた。
またこのパターンか………
とりあえずことみを盾にして事なきを得る。
って、得てねえええええ!!
ぼすっ。
間抜けな音がしたので恐る恐る目を開けてみると、ことみが六法全書で弾丸を防いでいた。
なんだその反射神経。
ことみ「このラストジャッジメント様に対して鉛玉の歓迎とは………万死に値するぞ、小娘」
うわあ、台詞回しが中二病くさい。
古河「この距離での弾丸を防ぐとは………さては貴方も「あの組織」の関係者ですね」
お前も変な伏線貼るなよ!!
古河「しかし、「教典」は私が頂きます。このデューク古河が!!」
お前も中二病に感染してんじゃねえか!!あとせめてもう少しひねった名前にしろ!!
ズキュゥーーーーン!!
聞いちゃいない古河改めデューク古河が、再びことみ改めラストジャッジメントへと銃弾をお見舞いする。
ことみラストジャッジメント「せいやあああっ!!」
カキィィンッ!!
火炎放射器で弾丸を打ち返していた。
本当に何でもありだな、お前ら。
古河デューク古河「それは………幻の奥義・「邪素斗身射斗!!」」
おいそこの民明書房やめろ。
春原「知っているのか雷電!!」
どっから出てきた春原!!
結局、なんだかんだで友情が芽生えていた。
裏CLANNAD ことみ編 4月21日 終
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ひとこと:
動き出した中二病という流れは、誰にも止めることは出来ない………ッ!!
………いや、これどっかで止めないとインフレしすぎて手に負えなくなるぞ。
というかネタが思いつかなくなってきているので、何か中二病っぽいネーミングとかネタとかあればよろしくー。
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