裏CLANNAD 4月14日

【教師】「春原(すのはら)」
教師があるひとりの生徒の名を口にした。
【教師】「相変わらずいないのか」
隣を見る。そこが春原の席だった。
こいつの遅刻率は俺より高い。
ふたり合わせてヤンマーだ〜き〜みとぼくとでヤンマーだ〜として名指しされることが多かった。

名指し!?っていうか、俺どっち!?マー坊!?

実に代わり映えしない毎日。
部活にも入っていない俺は、空っぽの鞄を掴むと、だべる生徒の合間を抜けて、教室を後にした。
家に帰っても、この時間は誰もいない。
もとより母親はいなかった。
俺が小さい頃に、交通事故で亡くなったそうだ。顔すら覚えていなかった。
母を亡くしたショックでだろうか…残された父は堕落していった。
アルコールを絶やすことなく飲み続け、賭け事で暇を潰す生活。
少年時代の俺の暮らしは、そんな父との言い争いにより埋め尽くされた。
けど、ある事件をきっかけにその関係も変わってしまった。
俺に暴力を振るい、怪我を負わせたのだ。
その日以来、父親は感情を表に出さないようになった。
そして、俺の名を昔のように呼び捨てではなく、『ヤン坊くん』とくん付けで呼び、言動に他人行儀を感じさせるようになった。

・・・俺はヤン坊だったのかぁっ!!


【声】「何度言えばわかるんだよっ」
【春原】「でも、すげぇ小さい音だったっての」
春原がいた。
別の部屋の前で、やたら図体のでかい男子生徒と話をしていた。
【男子】「すげぇ小さい音でも、壁が薄いから響くんだよっ!」
【男子】「ヘッドホンで聴けよっ」
【春原】「んな高級なもんねぇって、ははっ」
【男子】「じゃあ、聴くなっ」
【春原】「いや、でも、あれ聴かないと、調子出ないんだよね」
【春原】「それに、結構、イカす音楽だと思うんだよね」
【男子】「………」
【春原】「今度、歌詞とかちゃんと聴いてみてよ、イカしてるから」
【男子】「イカしてるも何もねぇ…」
【男子】「こっちは、むかついてんだよぉっっ!」
【男子】「次聞こえてきたら、中華キャノンが火を噴くぞっ!
バタンッ!
【春原】「ひぃっ!」
【春原】「………」
閉ざされたドアの前で、うなだれる春原。
………っていうか、今妙な単語が出てこなかっただろうか。
【春原】「くそぅ…先行者部め…」
そう小さく呟いた。
【朋也】「んな声じゃ、聞こえないだろ」
【朋也】「くそぅ! 先行者部めえぇぇぇーっ!
その背後に立ち、大きな声で言い直してやる。
って、先行者ッ!?
【春原】「ひぃぃっ!」
春原は俺の頭を抱えると、自分の部屋へと引きずり込む。
廊下では、『中華キャノン、発射ァッ!!』と怒声&発射音が響いていた。
………絶対にそっちの音のほうが五月蝿いって。


【春原】「ふわ…」
【春原】「そろそろ、寝ない?」
すでに日付は変わり、深夜となっていた。
【朋也】「ああ…そうだな」
俺は春原の部屋に泊まることだけはしなかった。
こんな奴と共に朝を迎えるなんて、想像しただけでも憂鬱になる。
【春原】「じゃ、僕、シャワー浴びてくっから」
【朋也】「ああ」
部屋の隅で山となっている衣類の中から、下着とタオルを引っ張り出すと、春原は部屋を出ていく。
【朋也】「………」
シャワーから戻ってきた春原を迎える、という状況もできたら避けたい。
今のうちに帰ることにしよう。
雑誌を閉じて、体を起こす。
すると、すぐ正面、一台のラジカセと向き合わせになる。
中にはテープが入ったままになっていた。
再生してみる。
流れてきたのは…………

『みなさ〜ん、げんきですかぁ〜〜〜?』

『それでは早速、いってみよ〜〜〜っ!!ハイ!!1、2、3、ナース!!』


ぶちっ!!
俺は反射的にコンセントを引っこ抜いていた。
やべぇ……色んな意味でやべぇよ、春原。お前もう社会復帰できねぇよ…………
よし、代わりに俺のオリジナルラップを吹き込んでやろう。
テーマは『俺から、親友春原に捧ぐラップ』だ。
あいつの感動にむせぶ姿が目に浮かぶ。
【朋也】(いくぞ…)
息を大きく吸い込み、録音ボタンを押す。
【朋也】「…YO! YO! オレ岡崎! オマエはっ」
テンポよく、言葉を紡ぎ出す。
【朋也】「オマエは…」
が…その先が何も浮かんでこない。

「ウホッ!イイ男……」

「って、キモッ!!やらねぇよっ!!」

って、何吹き込んでんだ俺はァァァァァッ!!


裏CLANNAD 4月14日 終
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ひとこと:
約束どおりちゃんと更新です。
ごめん、なんかもう二番煎じもいいところのネタばかりでした。
やっぱ才能ないんかなぁ・・・ふぅ。
ま、やってしまったものは仕方ないんで頑張りますよん。
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