この町は嫌いだ。
忘れたい思い出が染みついた場所だから。
毎日学校に通い、授業を受け、友達とだべり、そして帰りたくもない家に帰る。
何も新しいことなど始まらない。
 朋也(こうしていて、何かが変わるんだろうか…)
 朋也(俺の生活は、いつか変わるんだろうか…)
やたらと自然が多い町。
山を迂回しての登校。
すべての山を切り開けば、どれだけ楽に登校できるだろうか。
直線距離を取れば、20分ぐらいは短縮できそうだった。
 朋也(一日、20分…)
 朋也(すると、一年でどれぐらい、俺は時間を得することになるんだ…)
計算しながら、歩く。
 朋也(ああ、よくわかんねぇ…)
辺りに同校の生徒の姿はない。
学校に続く大通りだから、本来、生徒で賑わっているはずだった。
今日が、休日というわけでもない。
つまりは…生徒が登校すべき時間ではない、ということ。
けど、そんな閑散とした光景を目の当たりにしても俺は焦ることなく、悠長に歩き続けた。
………。
校門まで残り200メートル。
一度立ち尽くす。
 朋也「はぁ」
ため息と共に空を仰ぐ。
その先に校門はあった。
誰が好んで、あんな場所に校門を据えたのか。
長い坂道が、悪夢のように延び続けていた。
・・・・・・進行形?
あッ!!よく見ると校長が自慢の怪力で・・・こ、校舎ごと後ろに動かしているッ!?

学校七不思議のひとつ『延びる坂道』の正体はこれだったのか・・・。
校長もヒマなんだなぁ・・・と思っていると、
 声「はぁ」
別のため息。俺のよりかは小さく、短かかった。
 声「はぁ・・・はぁ、はぁはぁ、はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ・・・

既にため息じゃないっ!?

ヤバイ気配を感じたので隣を見てみる。
そこに同じように立ち尽くす女生徒がいた。
校章の色から、同じ三年生だとわかる。
けど、見慣れない顔だった。
短い髪アホ毛が、肩のすぐ上で風にそよいでいる。
 女の子「………」
今にも泣きだしそうな顔だった。
俺なんかは常習犯だったからなんとも思わないが、真面目な奴なのだろう…
この時間にひとり教室に入っていくことに抵抗があるのだ。
 女の子「うんうん…」
何かを自分に言い聞かせるように、目を瞑って、こくこくと頷いている。
 女の子「………」
そして少女は目を見開く。
じっと、高みにある校門を見つめた。
 女の子「この学校は、好きですか」
 朋也「え…?」
いや、俺に訊いているのではなかった。
妄想の中の誰かに問いかけているのだ。
その彼(あるいは彼女)は、どう答えたのだろうか。
 女の子「わたしはとってもとっても好きです」
 ???「うぐぅ」
 女の子「でも、なにもかも…変わらずにはいられないです」
 ???「うぐぅ」
 女の子「楽しいこととか、うれしいこととか、ぜんぶ」
 ???「うぐぅ」
 女の子「ぜんぶ、変わらずにはいられないです」
 ???「うぐぅ」
たどたどしく話し続ける。

…………『うぐぅ』!?
っていうかネタ引っ張りすぎ!!

 女の子「それでも、この場所が好きでいられますか」
………。
 女の子「わたしは…」
 朋也「見つければいいだけだろ」
 女の子「えっ…?」
少女が驚いて、俺の顔を見る。
まるで、今まで誰もいないと信じていたかのようにだ。
 朋也「次の楽しいこととか、うれしいことを見つければいいだけだろ」
 朋也「あんたの楽しいことや、うれしいことはひとつだけなのか? 違うだろ」
 女の子「………」
そう。
何も知らなかった無垢な頃。
誰にでもある。
 朋也「ほら、いこうぜ」

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ひとこと:
いいから堀内はもう死ねよ!!
あ、ごめんなさい、やっぱり野球見ながらだとはかどらないッスね。
っていうか堀内死ねよもう!!
・・・えーと、まだまだ手探りしながらの執筆になっております。何かあれば容赦なく言いつけてくださいませ。
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