裏CLANNAD 5月03日
ずっと引っかかっていた。
渚から劇の話を聞いてから。
──世界にたったひとり残された女の子の話です。
同じような情景を見た気がする。
それはいつのことだろう。
そして、それは、なんだったのだろう。
夢なのか、あるいは、そこに俺自身がいたのか。
なにひとつ思い出せない。
けど、渚の話に同じ手触りを感じた。
かつて見た風景と同じ感触だった。
部屋を出る。
 早苗「わたしは古河パンのリーサルウェポンなんですねーっ!」

泣きながら早苗さんが、目の前を走りすぎていった。

・・・リーサルウェポン?

 秋生「俺は大好きだーーーーっ!」
その後をパンを口にくわえたオッサンが追いかけていった。
早苗さんが物騒な一言を口走った気がするが、気のせいだと思っておく。
訊きたいことがあったので、俺もその後を追う。
 秋生「はぁ、はぁ…」
オッサンが、裏口で立ちつくしていた。

 秋生「しくったぜ…早苗のパンを日本刀代わりに竹を切っていたところを見つかっちまった」

 秋生「日本刀としてはちょうどいいんだ、これが」

確かにリーサルウェポンだ。

ってか、ここって竹が群生してるの!?



早苗さんを探す。
とりあえず、庭掃除をしていた隣近所の女性に訊いてみることにする。
 朋也「早苗さん、裏口から出てきませんでしたか」

 女性「ええ、いつものようにガスマスクをつけて出てきましたよ」

ガスマスクっ!?

思わず想像してしまったが………………怖い、怖すぎる。
 女性「放っておけば、帰ってきますよ」
笑いながら、それが微笑ましい日常風景であるかのように女性は続けた。
………微笑ましいのか?
 朋也「まあ、そうなんでしょうけど、用があるんです。どっちに行きましたか」
 女性「今朝は、モスクワ方向でしたよ」
 朋也「どうも」

って、モスクワっ!?

 女性「風のように走り去りますからねぇ、あっという間ですよ

ガスマスク付けて!?


早苗さんがひとりでとぼとぼと歩いていた。
 朋也「早苗さん」
俺は声をかける。
 早苗「え、はい」

振り向いて、シュゴーッ、シュゴーッ、と呼吸をする

怖えぇ!!早苗さん、頼むからマスク外して!!

こうして見ると、本当に渚にそっくりだ。

って、テキストどおり思うなよ俺ッ!!


 朋也「なぁ、思い出せないか」
 渚「とてもとても昔の話なんです」
 渚「それが絵本なのか、人から聞かされたのかも、思い出せないです」
 朋也「そっかよ…」
 朋也「話の内容はどのくらい憶えてる」
 渚「それもほんの少しです」
 朋也「いいよ、聞かせてくれ」
 渚「はい」
 渚「その女の子は世界にひとりっきりだったんです」
 渚「とても寂しく、とても辛かったんです」
 渚「そこで、友達を作ることにしたんです」
 渚「それはガラクタを集めて、組み上げた、一体の人形です」
 渚「人形は、女の子の思いに応えて、動き始めました」
 渚「こうして、女の子は寂しくなくなりました」
 渚「以上です」
 朋也「それ、ハッピーエンドじゃねぇか」
 朋也「しかも、中途半端だし、面白くねぇ…」
 渚「違います。まだ途中なんです」
 渚「まだまだ続きがあるんです」
 渚「とても感動できるお話だったんです」
 朋也「本当かよ…」
口では馬鹿にしたが、俺は動揺していた。
ガラクタの人形、という言葉が強いイメージで、心に突き刺さっていた。
なんなんだろう、この感覚は。
どうしても、その話の出所を知りたい。
 渚「でも思い出せるのはそこまでですから、劇でやるとしたら、今のところまでです」
 朋也「だから、面白くねぇってば。聞かない子だな、おまえは」
 渚「でも、今の話なら、ひとりでできるんです」
 朋也「そうだな、世界にはひとりきりなんだもんな」
 朋也「でも人形作って、ハイ、おしまい、だろ?」
 朋也「話に起承転結がないぞ。クライマックスがなければ、盛り上がらない」
 朋也「盛り上がらなければ、客は喜ばない」
 朋也「見せることを目的とした演劇なんだから、最低だぞ、それって」
 渚「そうでしょうか…」
その落ち込んだ声で気づく。いつの間にか、演劇の話にすり替わっていた。
 朋也「とにかく、話の先を探そう。そうすれば、きっとおまえの言うとおり、感動的な話になる」
 渚「でも、どうやって探すんですか」
 朋也「物置とか、なんなりとあるだろう。そういう古い物が残ってるところを探すんだよ」

午後からを使って、ふたりで物置を調べる。
 渚「あ、すごいもの、見つけました!」
渚が珍しく声を張り上げる。
 朋也「どうした」
 渚「見てください」
にっこり笑って差し出すそれは…

吹き矢だった。

 渚「小学生のとき、これを鞄に付けて、学校に行ってました

どんな小学校時代を送ったんだ………

 渚「懐かしいです」
 渚「また、付けて学校に行きたいです

それだけはやめろっ!!


裏CLANNAD 5月03日 終
5月02日へ 5月04日へ
ひとこと:
早苗さんのパンがどんどんどんどん「食べられるモノ」とはかけ離れています(笑)
俺の所為じゃありません。全部小人さんが悪いんです!!(ぉ
………つーか、ホントにパン屋?
走ってモスクワ行くわ、ガスマスクはあるわ、吹き矢は出てくるわ………
まぁ、裏っぽくなっている、良い傾向なんですけどネ!!(マテ)
裏CLANNAD-TOPへ SS一覧へ トップへ