裏CLANNAD 5月04日
古河家での生活も三日目。
今日も休みだったから、ずっと渚と一緒にいた。
けど、恋人同士が過ごすような時間ではなく、ひとつの目標…演劇の発表に向けて邁進する時間だ。
渚は、台本を書き始めた。
台本の書き方なんて、俺も渚も知らなかったから、ただ喋るセリフをレポート用紙に連ねていくだけだった。
俺はその隣で、渚が悩みながら紡ぎだしていくセリフをじっと見つめていた。
そこから、何か思い出せるのではないかと期待していたのだ。
でも、渚の稚拙なセリフを見ていると、なんだか最初に抱いた物語の印象からどんどんかけ離れていくような気がして、俺自身混乱し始める。
 渚「あの…何か、ヘンでしょうか…」
渚が手を止めて、不安そうな顔でこっちを見ていた。
 朋也「え、どうして?」
 渚「だって、今、顔を手で覆って、うなってました」
 朋也「ああ…いや、気にしなくていい」
 渚「いえ、ヘンなところあったら、言ってください。直したいです」
 朋也「いや、大丈夫。おまえ、字、うまいな」
 渚「ありがとうございます」
 渚「でも、お話の感想が欲しかったです」
 朋也「ああ、まだ序盤だからな。こんなもんだろう」
 渚「そうですか。良かったです」
そんな感想で納得したのか、再びレポート用紙に向かって、考え始める。
まぁ、こいつに文才があるわけもなく…。
俺の期待が過剰だったのだろう。
夕方になると、夕飯の買い物に付き合って、荷物持ちをした。
そして夕食の時間。
 秋生「明日は、連休最後の休みだ」
渚と早苗さんがふたりで用意してくれた晩御飯を前に、オッサンが話を始めていた。
 渚「はい、そうです」
 秋生「そこで早苗と考えたんだ」
 渚「何をですか?」
 秋生「けっ、簡単に教えてたまるか。というわけで、ここでクイズだ」
 秋生「俺と早苗が考えた連休最後の過ごし方とは、次のうちのどれだ?」

 秋生「1、日帰りバッファロー踊り食いの旅

 秋生「2、バッファローハンティング

 秋生「3、バッファロー下り

 秋生「さあ、どれだ

どれだ、じゃねぇ!!

バッファローは踊り食いもハンティングもしねぇ!!


 朋也(つか、最後の「バッファロー下り」が微妙に気になる…



トントン、とノックの音がした。
 秋生「開けろ、小僧」
 秋生「つっか、俺様の家だから、断りはいらねぇか」
返事もしていないのに、がらり、と戸を開け放つ。
 秋生「よぅ、小僧」
 朋也「なんだよ、オッサン」
 秋生「おめ、そのオッサンてのはやめろ」
 朋也「あんたが、小僧というのをやめれば、やめてやるよ」

 秋生「てめぇ、生意気だぞ。まだロクに触手も生えてねぇような若造のくせに」

少なくとも人間には生えませんが。

 秋生「まぁ、いい。聞け」
俺の正面にどかと腰を落ち着けた。
 秋生「いいか、今から話すことは、渚には内緒だぞ」
 朋也「ああ」
 秋生「早苗にも、ここで俺と内緒話をしたことは言うな。蒸し返したくない」
 朋也「ああ」
 秋生「む…茶が欲しいな」
 秋生「おい、早苗ーっ、茶をいれてくれーっ!」
 秋生「って、早苗にも内緒だって言っただろ、今!」
 秋生「おい、場所を変えるぞ、小僧」
 秋生「早くしろ、早苗が来るだろっ」
 秋生「バレたら、どうしてくれるんだよ、てめーっ」
 朋也(この人は頭オカシイぞ、絶対…)
オッサンの後について、部屋を出る。
 秋生「外に出るぞ、小僧」


 秋生「ふぅ…危なかった。これで一安心だな」
 朋也「そうっすね」
適当に相づちを打っておく。
 秋生「実はだな、小僧」
 声「はい、お茶です」
 秋生「おぅ、早苗、サンキュな」
 早苗「岡崎さんも、どうぞ。熱いから気をつけてくださいね」
早苗さんから、湯気の上がる湯飲みを受け取る。
ずずーっ。

 朋也「うぐっ!?

ぶばーーーーっ!!
刹那、およそお茶とは思えない刺激的な味が俺を襲った。
なんというか………ビールとウコン茶とシアン化合物を混ぜた味?(死ぬよ)

 秋生「ふぅ、落ち着くなぁ。やっぱ日本人は茶だぜ
そこっ!!テキスト通り喋るな!!ってか、お茶じゃねぇし!!

 早苗「岡崎さん、うちではこれがお茶なんですよ

絶対ウソだっ!!


 秋生「いいか、目ん玉かっぽじってよく聞け」
痛そうだ。
 秋生「あの物置の奥に仕舞ってあるもの、それはだな…」
 秋生「俺と早苗の過去だ」
 秋生「昔の写真とか、ビデオテープとか、日記だ」
思いのほか、平凡なものだった。
 朋也「それがどうマズいんだよ」
 秋生「そこに居るのはな…」
 秋生「…夢を追っていた頃の俺たちだからだ」
 秋生「どうだ、今のはカッコイイ言い回しだろう」
悦に入っている。馬鹿だ。
 秋生「知ってるだろう、渚は小さい時に命を落としかけた」
 朋也「いや、知らないが…」
 秋生「なんだ、聞いてなかったのか」
 朋也「体が弱いのは知ってるが」
 秋生「ああ、あの日以来な…」
オッサンは、遠い眼差しを床に向けた。
重苦しい話を始めようとしていた。

ゴウゥォッ!!

その瞬間、とんでもない轟音と共に、オッサンの背中が火を噴いていた。

 秋生「すまん、バーニアが誤作動しちまった

オッサン、何のためにそんなもの付けてんだ。

またひとつ、古河家の謎が追加されたのだった。


………ってか俺、明日バッファローハントするの?


裏CLANNAD 5月04日 終
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ひとこと:
秋生さんも早苗さんもなかなかどうして、流石は裏CLANNADの古河家、と言ったところですか(笑)
さて、次回はバッファローハントをホントにやろうかどうしようか(ぇ)
でも、世界のどこかにはバッファローハントを本当にやる地域があるかもしれないですね。
・・・見てぇ!!(マテ)
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