裏CLANNAD 5月05日
翌朝。俺は過ごし慣れた部屋にいた。
 春原「ふぅ…」
 朋也「おかえり」
 春原「ただいま」
 春原「って、おわっ! 誰かいるっ!」
 朋也「俺だ。今更驚くな」
 春原「岡崎…」
 春原「僕は…朝だけは、穏やかな時間が約束されていると信じていたんだ…」

 春原「朝食を食ってきて、こうして筋肉増強剤入りコーヒーを入れて、部屋に戻ってくる」

おまえ何飲んでんだ。

 朋也「俺のも入れてくれ」

 春原「そして小鳥のさえずりを聞きながら、筋肉増強剤入りコーヒーを飲む…」

ぜんぜん爽やかじゃねぇ。

 朋也「俺のも入れろって」
 春原「朝だけは、そんな僕のささやかな幸せが続くと思ってたんだ…」
 朋也「つーか、おまえのをくれ」
ぶつぶつと何事か呟き続ける春原の手からコーヒーカップを奪い取る。
ずずー
 朋也「ん、案外うまいな」

って、俺飲んでるうぅうぅぅぅぅう!?

しかも美味いのっ!?



公園に、ひとりの女の子の姿があった。
胸に手を当てたまま、不安げな表情できょろきょろと首を動かしていた。
俺は寄っていった。
 渚「あ…」
驚いた後、安堵の表情に変わった。
 渚「朋也くん、探してました」

 渚「バッファローハントです。今日」

ホントにやるのっ!?

 渚「忘れてましたか
忘れてました。ってか、裏CLANNADのイベントって続かないのが普通だし・・・。



 朋也「あのさ…渚…」
徐々に顔を上げていく。
 朋也「おまえさ…」
 渚「はい」
 朋也「今も不安なのか…」
 渚「なにがですか?」
 朋也「俺がおまえのこと、いつか嫌いになるんじゃないかって…」
 渚「え…」
 渚「いえ…そんなことないです」
言いよどんだ。
 渚「わたし…嫌われないようにがんばります」
 朋也「頑張る…?」
 朋也「頑張らなくていいんだよ、そんなこと…」
 渚「どうしてですか」
 朋也「だって嫌いになんてならねぇよ」
 朋也「頑張らなくても、今のおまえのままで…」
 渚「でも、心配です」
 朋也「おまえさ…」
 朋也「俺が、おまえのこと、どれぐらい好きか知らないだろ」
 渚「………」
 朋也「おまえもさ…俺のこと好きなんだろ?」
 渚「はい、もちろん好きです」
 朋也「でも、きっとさ…」
 朋也「それ以上に、俺はおまえのこと好きだ」
 渚「それは…本当ですか」
 朋也「ああ」
 渚「もし、それが本当なら…朋也くんは、ものすごいことになってます」
 渚「どきどきして、うれしくて、恥ずかしくて…」
 渚「でも、不安で、心配で…」
 渚「苦しくて…」
 渚「朋也くん、大変です…」
全部、自分のことだった。
渚の思いだ。
自分はこんなにも思われている。
それは…なんて、幸せなことなんだろう。
世の中にひとりでも、俺のことが好きで、思い悩んでくれる人がいる。
離れていても。ひとりの夜も。遠くで思ってくれている。
自分という存在が、他人の中にある。
それはなんて、頼もしい支えだろう。
それだけで、強くいられる。
そして、俺も、そいつのことが好きだった。
 渚「でも、そんなわけないです」
 朋也「信じろ」
 渚「信じられないです」
だったら、証明するしかなかった。
 朋也「…じゃあ、勝負しようか」
 渚「どうやってですか」
 朋也「手を繋ぐ」
 渚「はい」
 朋也「強く握り合う」
 渚「はい」
 朋也「離そうとしたほうが負け」
 朋也「いいか?」
 渚「はいっ」
大きく返事して、手を差し出す。
俺はそれを握った。

ぐ し ゃ ぁ っ

すっごく、いい音が、した。


って、俺の指の骨完全に折れてるっ!!

 渚「うふふふふふ、絶対離しませんよー

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

休みの日の、公園。
子供連れの家族、散歩する年寄り…。
徐々に人が増えてくる。
その中、俺たちは、手を握り合ったまま(というか、握りつぶされている)でベンチに座っていた。
相当、恥ずかしい…。
でも、こうして、ずっと握ってあげていれば…
渚は自信がつくはずだった。
悩むことも少なくなるはずだった。
でも…勝負なんて、本当はもうどうでもよかった。
わざわざ気を使って、渚の家を出た休日。
最初からこうして一緒にいればよかったんだ。
やりたいようにする。
そうしていれば良かったんだ。
 渚「あ」
突然、渚が声をあげた。
 渚「お父さんです」
 朋也「げ…マジ?」
前方から、オッサンがほうれん草を食べながら肩をいからせて大股でやってくる。

………………ポ○イですか?

 渚「強敵です」
渚が、さらに強く俺の手を握る。
 秋生「なんだよ、てめぇらっ」
 秋生「いたんなら、呼びにこいっ。ちっ…もうこんな時間じゃねぇか…」
 渚「ごめんなさいです。でも、いろいろとわけがあるんです」
 秋生「遠出はもう無理か…」
 秋生「………」
思いっきり睨まれる。
 朋也「い、いや…悪いとは思ってる…」
オッサンは俺と渚の腕をそれぞれ掴むと…
 秋生「ふんっ!」
力ずくで引き離した。
 渚「あ…」
 朋也「なにすんだよっ」
すぽっ。代わりに俺の手に堅いものが握らされる。

重さ10Kgの砲丸だった。

って、砲丸っ!?

 秋生「てめぇのせいで、バッファローハント行けなかったからな」
 秋生「野球の相手しろ」

 朋也「砲丸で!?

その後、骨折や頭蓋骨陥没などにより、大勢の子供たちが救急車で運ばれていったという・・・。

裏CLANNAD 5月05日 終
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ひとこと:
久々の更新ですよ。
バッファローハントはならなかったものの、砲丸を使った殺人野球が古河パンで行われる結果に(笑)
ちなみに、次回は筋肉増強剤を飲んだ朋也がパワーアップするとかしないとか(ぇ)
副作用かなんかで面白いことになるかもしれません。
ではでは。
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