裏CLANNAD 5月08日
 春原「ライトは、実際に体育館に吊してみるまで、試すこともできない」
 春原「で、それができるのは明後日のリハーサルのみ」
 春原「やることが全然ないんだけど…」
 朋也「おまえなんかマシじゃないか」
 朋也「俺のほうは、仁科・杉坂コンビが勝手にやってくれてるから、自分の存在意義すら見失いがちだ」
 春原「はぁ…張り合いがないねぇ」
俺はじっと、渚の練習風景を見つめていた。
顧問の幸村も、同じように椅子に腰を下ろして、その様子を眺めている。
台本のコピーを手に持ち、たまに間違いを指摘する。
でもそれは、台本を持っていない俺たちでも気づくレベルのものだけだ。
渚の演技は、演技を指導できるところまでも達していないということだった。
けど、それでも…
言われることに何度も頷いて…

額から緑色の液体が流れ出しても、拭おうともせずに懸命に練習に打ち込む姿を見ていると…

これが渚が求めていた学生生活だったんだと…今更ながらに思えた。

………緑色の液体?

 渚「あっ、髪に仕込んでおいた痺れ薬がっ

そんなもの仕込むなっ!!


 声「失礼します」
声がして、入室してきたのは、仁科・杉坂コンビ。
 渚「あ、仁科さん、杉坂さん、こんにちは」
 渚「音楽のほう、迷惑かけてしまってますが、どうなりましたでしょうか」
渚自身、気にかかっていたのだろう、俺よりも早く寄っていった。
 仁科「こちらです」
仁科が手に持ったテープを見せた。
 渚「あ、見つかったんですかっ」
 仁科「はい」
 杉坂「おかけしますね」
隣で、杉坂がラジカセを胸の前まで持ち上げていた。

ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ……

妙な男どもの声が、部室に鳴り渡る。

ウーンウーンンンンンンー ウーンウーンンーンーンー

目を閉じると…一瞬だけど、違う風景に立っているような気がした。

ウーンウーンンンンンンー ウーンウーンン・ン・ン

 渚「ラヴィ!!

うっとりした顔で渚が言った。

って、「きみしね」じゃねぇかぁっ!!

 朋也「素敵はわかってる。イメージには合うのか、どうなんだ」
 渚「びっくりするぐらいに、ぴったりです」

どう考えても合わないだろ。
 仁科「よかったです」
仁科がにっこりと微笑む。
 仁科「この曲は、ラヴェルの『マ・メール・ロワ』という作品の曲なんです」

仁科も!!真顔で嘘言わない!!



 仁科「喜んでもらえてよかったです」
 杉坂「これ、りえちゃんがピアノソロ用に編曲し直したんです」
 渚「えっ?」
 杉坂「譜面だけ書いて、それを知り合いのピアノが上手な方に渡して、弾いてもらったんです」
 幸村「ほぅ…」
 幸村「より、親しみやすくなっとる…」
 仁科「だとしたら、成功です」
 幸村「ふむ…なかなか…できることではない」
 渚「すごいです、仁科さんっ」
 仁科「ありがとうございます」
 渚「それはこちらのセリフです」
 渚「素敵な音楽、ありがとうございます」
 春原「やったな、岡崎。これで再生ボタンを押す練習ができるなっ」
一回やれば十分な練習だった。
 渚「曲に合わせて、練習してみます」
 朋也「ああ、そうだな」
 渚「それでは、お願いします」
また、練習が再開された。
誰も居なかったはずの部室には、渚、俺、春原、幸村、仁科、杉坂。
いつのまにか、俺たちは、こんなにもたくさんの人間と同じ時間を共有するようになっていた。
ひたむきに頑張り続ける渚と同じ時間を、そばにいて、共有して…
そして、みんなで一緒に喜びを分かち合おうと…
そのために。

 渚「ラヴィ!!

うるせー!!

裏CLANNAD 5月08日 終
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ひとこと:
本編の5月8日も短いですねぃ。
っていうか、ここよりも前で智代と絡んでいると、智代が出てくるイベントがあったのをすっかり忘れておりました。
まぁ、その辺の鬱憤は智代編の時にどうにかします(やるの?)
てか、今回は「きみしね」を使ったあたり、かなり反則かな・・・なんて思っちゃったり(笑)
こんなのでも宜しければ、ぜひとも感想をくださいませ。
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