裏CLANNAD 智代編 5月1日
カシャア!
 智代「朋也、朝だぞ」
 朋也「あん…?」
 朋也「つーか、こんな早く起きても、意味ねぇじゃん…」
 智代「毎日23時まで残業して帰ってきたら日付が変わっていて、それでも9時間後には会社に居なきゃいけなくて、リアルに家には寝に帰るだけの身だろうが、容赦はしないぞ」

それ今の作者の近況じゃねえか。

 智代「起きろ、朋也」
 朋也「ちっ…」
仕方なしに、体を起こす。
 朋也「何時だよ…」
俺は目覚まし時計を掴んで、寝惚けまなこに突きつける。
 朋也「んと…7時…5分…」
 朋也「7時5分?」
 朋也「いつもより来るの1時間近くも早いじゃないかよ…」
 朋也「おまえの家の時計、狂ってるぞ」

 智代「狂っていない。地球の地軸をずらしたんだ

そんなずらしたらヤバイものを簡単にずらすなぁっ!!

 朋也「どうして…おまえ、日直か何か?」
 朋也「ああ…選挙関連の打ち合わせか…」
 智代「どっちも違う」
 智代「私は、おまえと一緒に過ごすために、早く来たんだ」
 智代「いいか。支度したら、下に降りてこい」
 智代「すぐにだぞ?」
言いつけて、先に部屋を出ていった。
 朋也「なんだよ、一体…」
階下に行くと、すぐに異変に気づく。
この家では嗅いだことのないような、香ばしい匂いが漂っていた。
燃えさかる親父の脇を抜けて、俺は台所へ向かう。

って、香ばしい臭いってこれかよっ!!親父香ばしいのかよっ!!

…智代が料理をしていた。
 智代「ん? ようやく来たか」
 智代「すぐできる。座って待っていてくれ」
 朋也「おまえさ…何やってんの」
 智代「見てわからないのか。わからないのなら、おまえはよっぽど家庭に縁がない人間だということになるぞ」
 朋也「ああ、正解だ。家庭には縁がない」
 智代「そうか。なら、教えてやろう」
 智代「これは料理だ。それも、単なる料理じゃない」
 智代「好きな人のために作る、愛情………と毒 のこもった料理だ」

毒って言った!!今毒って言ったよこの人!!

 智代「自分で言って、照れるじゃないか」

照れながらトリカブトをばっさばっさ入れるな!!

 朋也「………」
俺は唖然としている。
 智代「どうした、うれしくないのか?」
 朋也「いや…うれしい」
 智代「そうだろ。きっと喜んでくれると思ったんだ」
 朋也「けど…どうして、こんな朝に作るんだ?」
 智代「それは…」
言っていいものかどうか少し考えた後、思いきって口を開いていた。
 智代「おまえが父子家庭だからだ…」
 智代「こういう朝を知らないのかと思って…」
俺は一言だって、母の不在を話題にしたことはない。
でも、毎朝のように起こしにきていた智代だ。

いつだって、寝転がる親父に逆エビ固めを極めた後、俺の部屋まで来ていたはずだ。

………どうりで、智代が来てから毎朝「ギヴ!!ギヴ!!」という断末魔が聞こえるようになったわけだ。


 智代「うん、できた」
 智代「そろそろおまえの父親も起こしてやってくれないか」
 朋也「え…? 親父?」
 智代「何を意外そうな顔をしてる? もちろん、親父さんの分もある」
 智代「ふたりだけで食べるなんて、そんなことできないだろう?」
 朋也「………」
 智代「どうしたんだ、朋也」
そうか…。
まだ、智代は知らないのだ。
俺の父親のこと。
今はただ、仕事に疲れて、酒を煽るままに寝込んでしまったと…そう思っているんだ。
教えてやらないとな…。
俺の親父のこと、こいつに教えてやらないと。
こんな毎日が続くのなら…。
 朋也「あのな、智代…」
 智代「どうした。早く起こしてやらないと、冷めてしまうぞ?」

 声「イヨッシャーァァァ!!今起きたぜエエェエィィィイ!!

アルコールで乾ききっ……ってねえ!!なんだ今の声!!

 親父「イヨッホオォォウ!!どうしたんだいこのゴゥジャスなASAMESHI☆は!!

いやホント誰だお前!!親父の性格が全然違うぞ!!

 智代「ああ、この間脳天に打ち込んだ千枚通しの当たり所が、ちょっとな……」

んなもん打ち込むなーッ!!

(色んな意味で)俺は、外へ向けて駆けだしていた。

がちゃり。
春原の背中でドアが開いていた。
 智代「やはり、ここか、朋也…」
智代の声だった。
 朋也「おまえ、遅刻するぞ」
 智代「少しだ。少しだけ、話をさせてくれ」
俺のそばまで寄ってきて、春原を見る。
どすっ!!
春原のこめかみに千枚通しをぶっ刺す智代。

ゆっくりと倒れる春原。

 智代「悪い、春原。邪魔だ

あきらかに順番が逆だろッ!!


チャイムが鳴った。
もういくつ聞いただろうか。
腕時計を見る。
まだ後、一時間ある。
私服姿のままで、待ち続けていた。
 智代「驚いたぞ」
俺を見つけて、智代はそう言った。
私服姿の俺を、下校する生徒たちが、奇異の目で見て…そして、よけていった。
その中で、智代だけは、近づいてきて、話しかけてくれた。
俺は自分の家庭環境を話した。
母がいないこと。
親父との今日までの確執。

そして、今は…ヤン坊としてしか見られていないことを。

って、またこのネタかあああああああ!!

 智代「そうか…」
 朋也「………」
 智代「一緒に朝ご飯を食べたけど…」
 智代「悪い人ではなかった」
 智代「おまえがそこまで言う印象は受けなかった」
 朋也「そうかよ…」
 智代「おまえの苦しみは、きっとおまえにしかわからない」
 智代「数えるほどしか会ったことのない私なんかにそれが計り知れたら、きっと占い師かカウンセラーになれる」
 朋也「そうだな…」
わかる気がすると答えない智代の正直さに救われた気がする。
もし、そんな口先でものを言われたなら、俺は正直に何も話せなくなっていただろうから。
 智代「でも、わからないのは悔しい…」
 朋也「ああ、その気持ちだけで俺はありがたいよ」
 智代「うん、力になれることがあれば言ってくれ。なんでもする」
 朋也「おまえがそう言うと、心強いよ」
 智代「とりあえず、朝食はどうすればいい?」
 智代「作りにいってはダメか?」
 朋也「おまえ…毎朝作るつもりだったのかよ」
 智代「当然だ。一日作ったぐらいで満足できるものか」
 智代「そもそも、おまえはまだ食べていないじゃないか」
でも毒入りだよなぁ……
って思ったら智代がニヤリと笑いながら千枚通しを取り出したので、俺は考えるのをやめた。
 朋也「ああ…悪かったよ」
 智代「別に責めているわけじゃない。これからのことを訊いているだけだ」
 朋也「そうだな、朝食はいいよ。食べる習慣もなかったし」
 智代「なら、いつ食べてくれるんだ」
 朋也「ほら、明後日から連休じゃないか。その時に作ってくれ」
 智代「昼ご飯がいいか? それとも夕飯がいいか?」
 朋也「両方でもいいのか?」
 智代「朋也が望むならな」
 朋也「まぁ、そこまでは言わないよ」
 智代「うん。実は、私もそう言われていたら、困っていたところだ」
 智代「そんなにもレパートリーがない」
 朋也「じゃ、昼ご飯だけ」

 朋也「昼を一緒に食べて、午後からふたりでニコニコ動画を見て過ごそう」

 智代「帰れニコ厨

裏CLANNAD 智代編 5月1日 終
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ひとこと:
1年ぶりの更新。
もうリトルバスターズとかいう新作が出てるのに、のんびりまったり。
とりあえずなんとか智代だけはどうにか終わらせたいな。
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